もっと自分を大切にしてほしい
植物療法士 森田 敦子
Waphyto・株式会社サンルイ・インターナッショナル
もっと自分を大切にしてほしい
植物療法士 森田 敦子
Waphyto・株式会社サンルイ・インターナッショナル

日本初の植物バイオメソドロジーというアプローチによって誕生したトータルライフケアブランド「Waphyto(ワフィト)」。植物療法士の森田敦子さんが開発した独自のアプローチで、フィトテラピー(植物療法)にバイオテクノロジーを掛け合わせ、日本の風土や気候で育まれた「本草学」を融合させたもの。フィトテラピースクール「le bois(ルボア)」も運営し、植物の力でさまざまなライフステージをサポートしています。

働き盛りだった20代

「植物バイオメソドロジー」の第一人者として、フランスの女性誌「ELLE(エル)」が選出する「世界を変える女性100人」に選ばれた森田 敦子(もりた あつこ)さん。20代の頃は航空会社のキャビンアテンダント(CA)として働いていました。

「大学を卒業後は得意な語学を活かし、CAとして飛び回っていました。体力もあり、仕事が楽しくて時間も気にせず仕事に没頭していたのです。ところが、24歳になった1990年初頭、重度の気管支疾患を患い、長い闘病生活が始まりました。仕事に夢中だった私は、不規則な生活による身体の悲鳴に気づかなかったのです。長期間にわたるステロイドの治療によって肌はボロボロに荒れ、髪の毛も抜けてしまいカツラをかぶる生活になりました。仕事に復帰したくても、体力に自信が持てないとネガティブになってしまい、26歳で退職。治療法に希望を見いだせなかった私にフランス人の友人が教えてくれたのがフィトテラピー(植物療法)でした。いま一度、自分の健康と人生に向き合う機会だと考え、本場であるフランスへの留学を決意したのです」

フィトテラピーと出合い、気づく

日本ではあまり馴染みのないフィトテラピーですが、フランスではどのようなことを学んだのでしょうか?

「フランスの国立パリ第13大学で植物薬理学を学びました。生化学と薬草学を体系的に取り込む自然療法として確立されており、基礎的な植物の構造と人にどのような作用が起きるのかという解剖学的なアプローチはとても興味深いものでした。病院の実習においても、西洋医学と並行して薬草を処方し、植物の機能性成分を取り込むことで治療に役立てていることに驚きました。勉強と並行しながら、実践も兼ねて自分の治療にも取り入れていくことでゆっくりと健康状態も良くなり、最終的にはステロイドを止めることができたのです。髪や肌も元に戻り、42歳の時には長男を自然妊娠し、無事出産することができました。また、フランスでは女性の健康課題をサポートするフェムテックにもフィトテラピーが活用されていて、大きな気づきを得たのです」

タブーの放置が不幸に繋がる

デリケートゾーンのケアやPMS(月経前症候群)などは、最近でこそようやく社会的に認知が進んできましたが、当時の日本ではあまりオープンにできる雰囲気はありませんでした。どのようなアプローチを試みたのか森田さんにうかがいました。

「私自身が不調のサインを見逃して大病を患ったこと、そして自然療法のおかげで健康を取り戻す過程で気づいたことのひとつに、生物学的に女性としての身体のサイクルをきちんと理解していないということがありました。女性特有の子宮と卵巣の機能によるホルモンバランスへの影響や性科学(セクソロジー)に関する話題は、女性同士でさえきちんと情報共有をしにくいムードがあったのです。異性や他人からの理解だけでなく、まず自分で自分の身体を正しく知ること。そして適切なケアを取り入れることで周囲の人間やパートナーと良好な関係を保つことは、人生の充実度においてとても大切だとフランスで学びました。帰国後、しばらくは大学で植物療法の研究を続けながら、株式会社サンルイ・インターナッショナルを立ちあげました。さまざまな製品開発に携わりながらも、女性のヘルスリテラシーの向上を目指して模索した結果、根本的な女性の心と体のケアをサポートする必要を感じ、ブランドと教育機関を立ちあげることにしたのです」

和のフィトテラピー「Waphyto」

“和のフィトテラピー”という意味で名付けられた「Waphyto(ワフィト)」は、フランスで体系化されたフィトテラピーに日本の素材でアプローチしています。

「現在のワフィトは年齢やジェンダーに関係なく使えるアイテムを揃えていますが、開発当初は女性の一生に寄り添うプロダクトとして誕生しました。開発にあたり『フランス植物療法普及医学協会(AMPP)』の立ちあげメンバーでもあるべランジェール・アルナール先生に相談していたとき、日本にもすばらしい植物があることに気づかされました。私は愛知県の東三河の出身なのですが、日本最長の断層帯である中央構造線の上に位置し、四季折々の豊かな自然に恵まれた地として知られます。自身の故郷でもあるこの地に着目して、東三河の農家の方々の手で無農薬栽培されたクワやキク、ゴツコラ、スギナ、ヨモギなどの植物を取り入れさせていただいています。さらに、日本の風土や気候によって育まれた植物を紐解く『本草学』の考え方を取り入れることで、独自の『植物バイオメソドロジー』というアプローチを実践しています。スキンケアからヘアケア、デリケートゾーンのケアまで、どんなことでもご相談いただき、お客様の健やかな暮らしの一助になればうれしいです」

体系的に学び、繋がる「le bois」

さらに、中目黒にあるワフィトのフラッグシップショップの2階では、日本で唯一の「フランス植物療法普及医学協会(AMPP)」の認定校である「le bois Phytotherapy School(ルボア フィトテラピースクール)」も運営しています。

「フィトテラピーとは、植物が持つ薬理効果を活用することで人間が本来もっている自然治癒力を高める療法のこと。ヨーロッパでは古くから日常生活に根付いている文化でもあり、西洋医学的なアプローチと併用されることも多いのです。日本でいう葛根湯と鎮痛剤の関係に近いかもしれません。ルボアでは、本場フランスの医療現場で実践されている知識と日本の薬草学を体系的に学ぶことで、日々の体調の変化に気づき、サポートできるようになります。私がフランスでフィトテラピーを学んだとき、“自分に嘘をついてはいけない”ということを教えられました。女性の活躍が叫ばれる現代社会において、生理、妊娠、出産、育児、閉経など、年齢や生活環境によってホルモンバランスが変化していく女性は、つい自分を追い込んでしまいがち。さらに、誰に相談して良いかわからない状況で孤独に戦ってボロボロになっていきます。ですから、私の授業では自分の抱えている課題や悩みをオープンにすることから始めています。お互いに共感を得ることで周囲に目が行き届き、優しくなれるのです。ちなみに、性や心、体に関する悩みに男女の差はありません。受講生には男性も増えてきていますが、男性の方が繊細な一面も見受けられます」

介護などの領域で社会実装を

AMPPが認定する「メディカル フィトセラピスト」の資格も取得でき、そこからワフィトやルボアで働くようになった仲間もいるそうですが、暮らしだけでなく仕事やキャリアに活かすこともできるのでしょうか。

「日本でフィトテラピーは少しずつ広まりつつあるものの、まだまだ認知が足りません。現在、私たちの会社ではさまざまな研究機関と連携して香りのメカニズムや抗菌性、経皮吸収性の検証を科学的に検証することでフィトテラピーの有効性を可視化しています。これは企業との商品開発や医療・介護現場での共同事業を展開していくうえで、有効なエビデンスです。また、超高齢社会の日本における解決策のひとつとして、地元の愛知県東三河地方でフィトセラピーを取り入れた訪問看護ステーションを開業する準備を進めています。飲む、塗る、香る(嗅ぐ)ことで心身を労るフィトテラピーは、加齢による慢性的なむくみや寝たきりによる褥瘡(じょくそう)、口腔ケアなど多面的な予防に役立つと考えられているのです。QOLの観点からも予防医学が注目されていますが、日々の暮らしに自然療法が取り入れられることで健やかな老後を送れる人が増えることを願っています。そしていつか自分の親や自分が“ここなら入りたい、ここでゆっくり余生を過ごしたい”と思えるような施設を作っていきたいですね。そのためには、フィトテラピーの知識を体系的に身につけた人材の育成も急務です」

もっと自分を大切に

PMS(月経前症候群)や産後鬱など、性別差だけでなく個人差も大きい症状はなかなか理解されにくい時代が続きました。さらに、デリケートゾーンのトラブルやケアの仕方は、女性同士でも情報がオープンにシェアされていませんでした。さらに、近年では夫婦間のセックスレスや男性のED(勃起障害)などで悩んでいる人も多く、誰にも相談できないまま深刻化しているケースも増えているようです。フィトテラピーのアプローチは、自分の体調に耳を傾け、不調と真摯に向き合うことから始まります。それは痛みなどの明確な症状だけでなく、不安などの気持ちに依る不調や、なんとなく身体が発しているネガティブなサインにも有効です。日々時間に追われ、緊張が強いられることの多い現代社会において、つい見過ごしてしまうサインに目を向けてあげること。人生のキャリアにおいて、時には無理をしてでもなにかを成し遂げることは大切です。でも、ケアの仕方を知っていればもっと良い結果にアプローチできるはず。「もっと自分で自分を大切にして良いんです!」という、森田さんの優しくも力強いメッセージが胸に響きます。

Waphyto Tokyo

〒153-0051 東京都目黒区上目黒1-11-7 ソルーチェ中目黒 1F
Tel. 03-6416-9548
営業時間:11:00〜18:30
定休日:火曜日(祝日の場合営業、翌水曜日に休)

セゾン・アメリカン・エキスプレス®・カードが
ご利用いただけます。
https://waphyto.com

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