癒しの時間は人それぞれですが、ひとり気ままに映画に没頭するのは至福のひととき。今回ご紹介する「シアターギルド代官山」は、ヘッドフォンで映画を鑑賞する新しい上映システムを採用。専用のヘッドホンによる独特の没入感とラグジュアリーな内装設計で、今までの映画館ともホームシアターとも全く違うスペシャルな体験を味わうことができます。新しいスタイルの映画体験に、この秋、出かけてみませんか?
「父親の仕事の関係で、小学生時代はパリのバスティーユで暮らしていました。その時住んでいたアパルトマンの1階にミニシアターがあって、毎週のように映画を観に行っていました」と語るのは、シアターギルド代表の五十嵐壮太郎さん。素敵な幼少期に思えますが、現地の学校のクラスでアジア人は五十嵐さんひとりだったということもあり、友達作りに悩んだこともあったそうです。
そんな五十嵐さんを救ったのが、ある映画の存在でした。「『AKIRA』がフランスで大ブームになったんです。そうすると、クラスメイトが『あの映画を作った国の子だ、すごい』と僕のことをリスペクトするようになって(笑)」映画少年であり、映画に救われた五十嵐さんは、いつか映画館を自分の手で作りたいと夢見るようになります。そして、2021年6月に東京・代官山にオープンさせたのが、画期的なミニシアター「シアターギルド代官山」です。「映画館がなかったし、どこかパリに似た雰囲気を感じたのが、この街を選んだ理由です」
「シアターギルド代官山」の最大の特徴は、世界初のヘッドフォン劇場システム「サイレントシアター®」であること。観客は、シアターギルド社が発明・開発し、特許を取得している専用のヘッドフォンを付けて映画を鑑賞します。隣の人の雑音や外に漏れる音を心配することなく鑑賞が可能で、個別にボリュームを調整することもできます。そして無線でありながら映像と音のタイムラグがほとんどありません。
実際に「サイレントシアター®」を経験すると、その没入感に驚かされることでしょう。ヘッドフォンを装着して映画が始まった途端に、奥行きを感じさせるサウンドが頭の中に広がり、グッと映画の世界に誘い込まれます。ヘッドフォンだからこそ小さな音も聞こえてくるため、「すでに観たことのある映画も、ここで鑑賞すると別物になる」という声もあるそうです。
「シアターギルド代官山」は、今までの映画館の常識を覆すラグジュアリーな内装設計も画期的です。「少し豪華な友人宅に招かれて、リビングルームで一緒に映画を楽しむようなイメージです」と五十嵐さん。日本式であることにもこだわり、“玄関”で靴を脱ぐスタイルも寛げるポイント。そして室内に入ると、3m×5mの特注4K LEDスクリーンの他、バーカウンターやブビンガ(アフリカ産の巨木)の1枚板のメインテーブル、そしてハンス・J・ウェグナー代表作のベアチェアなど、世界の銘品チェアが目に入ります。「チャールズ・イームズが、腰痛に悩んでいた友人で映画監督のビリー・ワイルダーのためにデザインしたイームズ ラウンジチェアも置いています」という、映画好きならたまらないセレクトも。
壁面には写真家・荒木 経惟さんの作品など数々のアートが並び、購入することもできます。館内の中央に配された巨大な植物のモニュメントは、PARDA®︎(パルダ)と名付けられたシアターギルドが開発した自動光合成植栽システムで、富裕層の自宅やオフィスへの導入実績もあるそう。
「テクノロジーを中和するための何かアイコニック的なものが欲しくて、作ってみました」。座る場所は自由。好きな場所で好きな姿勢で、きちんとマグカップやグラスに入れられたドリンクと共に映画を楽しむひとときは、確かに豪華なリビングルームで寛ぐ時間そのものです。
コロナ禍で新しいライフスタイルが普及した影響もあり、自宅で映画を鑑賞する人が急増したと言われています。あえて外に出てシアターで映画を見ることの醍醐味とは何でしょうか。
「やはりライブ感と一体感だと思います。動画配信サービスには“いつでもどこでも誰とでも”という便利さがあります。でも、映画が記憶や心に残るのは、“あの日、あの場所で、あの人と”という映画館での体験ではないかと僕は思います。ミュージシャンはライブのために曲を作るし、映画制作者もシアターで観てもらうために映画を撮るというのは、変わることのない本質的な魅力ですよね。とはいえ、伝統に必死にしがみついているわけでもありません(笑)。映画というのは、芸術のなかでは比較的若いジャンル。お客様からどんどん新しさが求められている気がするので、色々なサービスを作っていきたいです」
ヘッドフォン劇場システム「サイレントシアター®︎」は、防音対策の厚い壁や密閉ドアを省くことができ、街のあらゆる場所を映画館に変えることが可能です。「騒音へのハードルで難しかった既存のテナントや屋外のロケーションを映画館へ、そして新たな才能が集う場として、街の交流拠点として、国内外へ展開していきたいです。古いアパルトマンでさえ新しい劇場になるので、パリにも出店したいですね」と、五十嵐さんは展望を語ります。「学生街のカフェにオープンさせるとか、その土地の雰囲気やカルチャーに合わせて展開したいと考えています。サイレントシアター®︎の技術は、映画に限らず、スポーツやライブなど、あらゆる映像に応用できる可能性を感じています。映画以外の他ジャンルの人々とも一緒になって、面白いことにどんどんチャレンジしていきたいです」。
周囲のノイズを気にすることなく、お気に入りの映画に浸る秋のひととき。「シアターギルド代官山」は、これまでにない映画の楽しみ方や文化の新たな可能性を感じさせてくれました。公開されるプログラムは随時更新されているので、ぜひウェブサイトをチェックしてみてください。
シアターギルド代官山
〒150-0033 東京都渋谷区猿楽町11-6 サンローゼ代官山 103区画
Tel. 03-6721-1618
無休
セゾン・アメリカン・エキスプレス®・カードがご利用いただけます。
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