ときとしてゴルフは人生や旅にも例えられます。「単純だが、それを知るまでには時間がかかる」というベン・ホーガンの言葉にもあるように、奥深い魅力を持ったスポーツです。神戸に日本で初めて4ホールのゴルフコースが作られたのは1901年のこと。1世紀以上を経た日本のゴルフ文化は、少しずつ、そして確実に多様化しているようです。時代の流れを象徴するように大きな変貌を遂げたゴルフ場が、トータルゴルフリゾートを目指す「THE RAYSUM(ザ・レーサム)」。運営する株式会社アセット・ホールディングスの代表取締役を務める黒木 論一(くろき のりかず)さんにお話を伺いました。
2022年1月に代表取締役に就任されましたが、どのような経緯でゴルフ場の経営に携わることになったのですか?
「理科系の大学を卒業して、これからはアジアの時代が来るだろうと思い、まだイギリス領だった頃の香港に渡りました。しかし、新卒だったので職歴がないためビザが下りず、深圳の工場で仕事をしながら中国語を覚えました。数年後、ITバブルの波と共に帰国して、ベンチャーの立ち上げに加わったのが20代後半。7人で始めた会社が数百人の規模に成長しました。30代は盛り上がりはじめていた上海へ渡り起業。当時の中国は世界中から資本が集まり、経済もカルチャーも凄い勢いで成長していたのですが、外食産業などの成熟度はまだまだでした。そこでレストランなどを経営している頃に、飲食業のオーナー仲間に誘われてゴルフを始めたのです。上海でのビジネスを10年で清算し、2015年頃に再び帰国。日本でレストランなどを経営していたところ、THE RAYSUMのリニューアルと新しい男子プロの大会を立ち上げる企画を相談されたのがきっかけです。さまざまな時代の変化に立ち会ってきましたが、これから間違いなくゴルフ文化の流れが変わるというタイミングに立ち会えることは嬉しいですね」
新しい男子プロの大会というのが「For The Players By The Players」。実際に観戦させてもらいましたが、近年まれに見るアグレッシブな戦いに興奮しました。
「この大会は『選手による、選手たちのための』というコンセプトで企画されました。コース造りや運営に選手たちも携わり、THE RAYSUMが10年にわたってサポートするというものです。群馬県で開催される男子プロゴルフのツアーは、2008年に「旧レーサム ゴルフ&スパ リゾート」で開催された『日本プロゴルフ選手権』以来となります。地元出身の小林 伸太郎(こばやし しんたろう)選手がツアー初優勝を飾り、選手とサポーターの温かい距離感を実感しました。最初の大会として歴史に残る良い試合だったと思います。24年ぶりに復活した『ステーブルフォード方式』による攻めのゴルフなど、変化を積極的に起こすことでゴルフの新しい魅力をお届けできたのではないかと思っています」
2年にわたるリニューアルのコンセプトは、今後のゴルフカルチャーを考えていくうえでひとつのベンチマークとなりそうです。
「ゴルフを取り巻く環境は、プレーヤーの価値観も、道具も、ファッションも、時間の流れと共に変化している。それなのに、ゴルフ場だけが変化していない。これまでのゴルフ場を支えてきた団塊世代の多くが、2025年から引退していきます。その先の未来において、伝統や品位などに縛られていては、新しい顧客のニーズに対応することは難しいのではないでしょうか。前世代のゴルファーと新しい世代のゴルファーは、それぞれゴルフ場に求めているものがまるで違うのです。この正反対といえる客層を共存させようとするのは、経営努力ではなく現実逃避になってしまいます。けれど、多くのゴルフ場はターゲットをスライドできずにいる。ゴルフ場が劇的に変わるのはオーナーチェンジしたときだけ。これらの事実から推察すると、新しいゴルファーの価値観やニーズにゴルフ場だけが追いついていけず、現状を変えられないという市場環境が見えてきます。そこに大きなチャンスがあるのです。むしろ、そこにしかゴルフ場が生き残る道はない。私はそう感じています。THE RAYSUMは楽しさや驚き、新しい豊かさを追求していく人たちのためにありたいのです。そこで、我々は当面の期間は会員制度を採用せず、お客さまとイーブンな関係構築に努めていきたいと思っています」
2013年にも取材をさせて頂いたことがあるのですが、「旧レーサム ゴルフ&スパ リゾート」とはかなり雰囲気が変わりましたね。
「コースには3000本のサクラと4000本のツツジを植えました。豊かな自然を取り戻したことによって、季節の移り変わりだけでなく鳥の声も楽しめるようになったんです。プレーには関係ないかもしれませんが、ゴルフという体験の質は明らかに豊かなものになりました。畑も作り、間伐材でBBQや焚き火をする。お酒を片手に日の暮れたゴルフ場で火を囲みながらお喋りをするだけで、ゴルフにプラスアルファの気持ちいい時間が流れます。ゲストやスタッフに交流が生まれるし、地元の生産者のみなさんとも仲良くなれるかもしれない。ゴルフだけではなくトレッキングをしてもいいし、車で榛名をドライブする日があってもいい。ゴルフをきっかけに、周辺エリア一帯の魅力を作る一助になること。無理のない永続的な関係をつくることも、我々の役割だと思っています。ふるさと納税の取り組みなどもその一環です。地方創生という言葉をよく聞きますが、残念ながら予実が伴っていないと言わざるを得ないプロジェクトも散見します。我々はこの安中榛名に大きな資本だけでなく、人的な投資もしています。そこに特別な優遇があるわけではなく、あくまで対等な関係としての投資です。ですから、ゴルフ場としてというより、一つの町づくりとしてのベンチマークとして他の地域にもノウハウを共有できたら嬉しいですね」
温泉やサウナにスパ、フレンチレストランなど、ゴルフをしない人と来ても充分にリゾートとして楽しめる内容です。
「ゴルフはあくまで娯楽であって、日常を構成する一部でしかないかもしれません。ですが、多くのプレーヤーにとっては仲間同士のスケジュール調整にはじまり、送り迎えや渋滞など、面倒なことも多いのです。せめてスコアが良ければ救われますが、そんな日はめったにない(笑)。むしろフラストレーションが溜まることさえあるのに、それでもゴルフにはやめられない魅力があるんですから不思議です。せめてTHE RAYSUMではそんなネガティブな要素が吹き飛ぶぐらいの穏やかな非日常を体験できる環境にしたいと思っています。例えば現地集合でディナーから合流することもできますし、ラウンド後に泊まって焚き火にあたり、星空を眺めながらラウンドを振り返ることもできる。サウナや温泉、SPAで疲れを取って、翌朝はゴルフ場から仕事に行くのも良いですよね。いくらゴルフが好きでもすべての休日をラウンドに当てられるわけではないので、大切な一回が心に残るようなラウンドになることを願っています」
「コースのコンディションや運営について、スタッフや選手ともよく話をします。THE RAYSUMという場所を通して、みんながゴルフの未来について話ができるのは業界にとっても大きな収穫です。わたしたちの願いは、ゴルフをすることで毎日が少し良い方向に向かって欲しいということ。綺麗なコースって気分が良いだけでなく、プレー全体もポジティブになるんです。このコンディションをぜひたくさんのゲストに体験して欲しいですね。ただ、リゾートゴルフだと思っていらっしゃると意外に攻め甲斐のあるコースなので、気合いを入れて臨んでください!」と黒木さん。
インタビュー中も、出場選手のひとりであるHan LEE(ハン・リー)選手に話しかけられていました。多様化するゴルフというライフスタイルに、新しい選択肢を提案するTHE RAYSUM。実際にプレーをして、ゆっくりと滞在してみることで、ゴルフの新しいトレンドを実感できそうです。
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