日本の繊維産業が“呼吸”する場所
COQ
コキュウ
日本の繊維産業が“呼吸”する場所
COQ
コキュウ

「呼吸」と同じ響きをもつ、エシカルライフスタイルブランド「COQ(コキュウ)」。テキスタイルデザイナー梶原 加奈子さんによる、日本のものづくりにこだわったエシカルなアイテムがファッション業界を中心に注目を集めています。北海道に続く2店舗目「COQ TOKYO」が、2023年2月にオープンしました。「お客様はもちろん、日本の産業が呼吸する場所でありたい」と語る梶原さん。ブランドを立ち上げた想い、そしてプロダクトやお店を通じて発信していきたいメッセージを伺いました。

デザインの新たな力に気づいて

テキスタイルデザイナーで「COQ」を立ち上げた梶原 加奈子(かじはら かなこ)さんは、イッセイミヤケでの仕事を経て渡英。Royal College of Art Fashion & Textile Course で修士課程を取得します。そこでは、日本の教育とは違うアプローチで「デザインの仕事とはなんなのか」という本質的な役割を叩き込まれたと話します。

「デザインという仕事を通して、世の中にどう貢献するのか。社会課題をどう解決するのか。デザイナーの社会的意義を重視する教育でした。例えば、中米のグアテマラにある織物工場へ研修で派遣されたときのこと。工場の機械や人材、残糸などのいま在る資産を活用して、イギリスで流通する生地を提案するというプロジェクトでした。この経験を通して、デザインの力で地域の雇用や産業をいかに活性化できるか、実体験として学ぶことができました。私自身を含めて、特に若いときは、自己表現を重視してデザインという仕事に向き合いがちだと思います。そんななか、自分のデザインスキルを社会にどう生かすのかという利他的な役目に気づいたことで、デザイナーとして目指すべき道が自然に拓けていきましたね」

繊維産業の発展に貢献したい

イギリスでの留学を終えて、繊維業界に大きなシェアを持つインドで働くことを考えていた梶原さん。大学院の教授に、「日本の繊維産業の発展に貢献したらどうか」とアドバイスをもらったことがきっかけで帰国を決意します。「人件費が高く、少子高齢化が急速に進んでいる日本は工場経営が行き詰まる。その立て直しをした方がいいと、教授に言われたのです」。教授が助言したのは、イタリア型の工場経営を参考にすること。「イタリアは工場で働く職人たちが自らデザインをして、ブランドやデザイナーにプレゼンテーションを行う。日本の工場が発注を受けてから動くのとは、大きく異なります」。この課題に向き合うため、梶原さんは2006年に日本でKAJIHARA DESIGN STUDIOを創業。日本発信の素材を集結させたテキスタイルブランド「KANA COLLECTION」を立ち上げ、欧米のハイメゾンに積極的に売り込みます。イタリアのように販路開拓やブランディングまで自分たちで行うスタイルにしないと、日本の繊維工場は生き残れない。そのパイオニアになる、という意気込みもありました。

ジャパンメイドが生き残るために

繊維工場が自らデザインを生み出し、自販や海外販売をすることの必要性。これに加えて、もうひとつ、梶原さんが教授から受けたアドバイスがありました。「日本にはすばらしい素材がたくさんあるけれど、マーケットのニーズやトレンドのタイミングに合っていない。工場もファッション業界の動向にもっと目を向けて勉強しないと世界では戦えない、と指摘されました」。イギリスにいた頃、ファッショントレンドのマーケティング企業でインターンをした経験があった梶原さんは、そこでの経験を活かしてトレンド分析を綿密に行うようにします。

「例えば、多層構造で弾性のある触感が人気のダンボールニットを、世界が求めているタイミングに合わせて売り込むことができました。日本の手間ひまをかけた丁寧なものづくりは、希少性が高くニーズもある。糸の縫い目が見えないような極薄生地などは、本当に喜ばれます。せっかく技術力があるのだから、もっとトレンド分析に力を入れれば、海外販路はどんどん開けると考えます」

北海道に「COQ」をオープン

2017年、メーカーや工場のプロデュースをメインに活動していた梶原さんは、ホテルやショップ、レストランを併設した複合施設「COQ」を札幌郊外の森の中に作ります。「それまでは、どちらかというと企業ブランディングの支援や販路開拓の目的に合わせたデザインの仕事を中心にしていました。社会と向き合うことを積み重ねてきたなかで、自分のなかに蓄積してきた希望に向かう気持ちに注目しました。それは子供の頃から変わらず追い求めていた朝の光のようなものであり、もっとこの気持ちをテキスタイルやライフスタイルを通して表現していくことが誰かの幸せに繋がるかもしれないと思ったことがオープンのひとつのきっかけですね」。思想の根幹として、故郷でありクリエイションの源になっている北海道の自然を追求しました。そして、店名の「COQ」には、「自然の恵みの中で、深呼吸して心が洗われるような空間を目指したい」という思いが込められています。樹々に囲まれ川のせせらぎが聞こえるショップでは、テキスタイルや靴下雑貨を中心に、さまざまな産地工場のファクトリーブランド製品が揃います。

残糸や残布を活用したものづくり

2022年にはCOQアパレルラインをスタート。「COQ」には、梶原さん自身がディレクションしたファッションアイテムも多く並びます。どのようなこだわりがあるのでしょうか。
「産地技術の継承や地方活性化に加えて、できる限り環境に負荷をかけない素材選びや、安定した工場運営に向けた端境期生産に力を入れています。ものづくりを通して、エシカルなライフスタイルや思想をデザインしたいですね」
製造業の大きな課題である廃棄ロス削減に向けて、セカンドライン「COQ hibi」では、残糸や残布を活用したデザインにも取り組んでいます。

例えば、札幌常盤の森をイメージしてデザインした「COQ socks」は、奈良の靴下工場の残糸を主に用いて生産。
「工場に眠っていた素材を使って小ロットのオーダーをしていくので負担も少なく、職人さんにありがたがられることが多いのがうれしいです。新たな切り口で価値を想像できるのではないかと、やりがいを感じています。でも、無駄をなくすのが目的ではなくて、半分に折り曲げて履くとデザインが変わるという風に、色々な楽しみ方ができる靴下なんですよ!」
また、残布を組み合わせたパッチワークウエアもデザインしています。「ヒーリングになるような心地よいカラーリングにもこだわっています」

エシカルな暮らしを語り合う拠点

2023年2月には、2店舗目となる「COQ」東京店を中目黒にオープンしました。「コロナを経て、暮らしに求めるものが多様に変化している勢いを感じます。そこで、今まで札幌のお店で続けてきたエシカルな活動をさらに加速させるべく、東京にもお店を開くことにしました。お客様との直接的なコミュニケーションを重ねる機会をもっと増やし、自然を感じる暮らしや日本のテキスタイルについて語り合う発信拠点を目指したいと考えています。お客様はもちろん、日本の繊維産業が呼吸する場所でありたいですね」。広々としたアプローチや日本のヴィンテージ家具、そして梶原さんが描いた絵画などが印象的な「COQ」東京店。「家の中に自然を取り入れてほしい」という思いから販売している観葉植物や流木、石のオブジェにも心が安らぎます。

忙しい日々の中、心身のケアやライフスタイルを楽しむことが疎かになっていると感じたら、足を運んでみてはいかがでしょうか。まるで深く呼吸をしたときのように、心と体が整うはずです。

COQ TOKYO

〒153-0051 東京都目黒区上目黒1-15-13
Tel. 080-3562-2331
営業時間:平日 12:00~20:00/土日祝 11:00~19:00
定休日:不定休

お問い合わせは公式ホームページをご確認ください。
セゾン・アメリカン・エキスプレス®・カードが
ご利用いただけます。
http://coq-textile.jp

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