戦後の日本ファッション史をたどる、世界初の大規模展!
ファッション イン ジャパン 1945-2020
―流行と社会
国立新美術館(東京・六本木)
戦後の日本ファッション史をたどる、世界初の大規模展!
ファッション イン ジャパン 1945-2020
―流行と社会
国立新美術館(東京・六本木)

2020年6月〜8月にかけて開催予定だったものだが、あいにくのコロナ禍の影響で2021年6月〜9月開催に延期されたもの。「東京オリンピック・パラリンピック2020」の開催に合わせて、世界中からやってくるお客さんにも見てもらいたいという背景があるだけに、オリンピックの開催が中止にならないことを願わざるを得ない。というのも、ファッションを軸に、戦後75年の日本の変化を、これほど大規模、かつ如実に表現した展覧会は、そう度々、開催されるものではないと思われるからである。

銀座、女性たち/1935年/東京都写真美術館 撮影:師岡宏次
長沢節/女性像(赤いコート)/1950年代/セツ・モードセミナー
田中千代/ニューキモノ(市松柄のキモノ)/1950年/渋谷ファッション&アート専門学校蔵 撮影:加藤成文

服装に関わるすべて

改めて辞書でFashionを引いてみると、語源は「つくられたもの」とある。つまり、「人の営み」ということになる。次いで「流行」「人気」「はやり」の訳が出てきて「服装・髪型などについていう」とある。確かに、流行歌や流行作家という言葉はあるが、こうしたジャンルにファッションの表現は用いない。VogueやModeも流行を示すが、ちょっと気取った感じがして、やはり一世を風靡するような流行には、ファッションの表現がふさわしい。そこには「もんぺ」から「ジーンズ」「DCブランド」など、服装に関わるすべてが含まれる。

森英恵/ジャンプスーツとカフタン「菊のパジャマ・ドレス」/1966年 島根県立石見美術館
森英恵/アロハシャツ 映画「狂った果実」衣裳/1956年/日活株式会社 撮影:杉本和樹
鋤田正義/Kansai Yamamoto×デヴィッド・ボウイ/1973年

ファッションは時代を映す鏡

1960年代から70年代にかけて、おしゃれな若者たちはアイビールックで身を飾った。男の子は、アメリカントラッドの装いで街に繰り出し、女の子は長めのスカート丈でこれに合わせた。銀座のみゆき通りや並木通りが溜まり場だったので「みゆき族」とか「並木族」などと呼ばれたりした。こうした流行現象をリードしたのが「平凡パンチ」などの若者向け雑誌メディアだった。こうした現象は、1964年の東京オリンピックを契機に、日本の高度経済成長が著しく、カー(自動車)、クーラー、カラーテレビの3Cが普及し、「豊かさ」を実感できるようになったことが背景にありそうだ。

中野裕通/ドレス 第36回NHK紅白歌合戦 小泉今日子氏衣装 なんてったってアイドル/1985年/作家蔵
ジュンコシマダ/88-89AW/1988年/Photo: Guy Bourdin

時代の空気を表現

一方で、同じ時代を生きながら、ベトナム戦争への反対運動や大学紛争も盛んで、硬派の学生たちは長髪とラッパズボンで反体制の意思を示そうとしていた。とりわけ、1968年の東大・駒場祭に登場したポスターは強烈だった。画家の横尾忠則氏が当時、人気絶頂のヤクザ映画に登場する高倉健をモチーフに、東大在学中だった作家・橋本治氏のコピー「とめてくれるなおっかさん 背中のいちょうが泣いている 男東大どこへ行く」を配したポスターは、「時代の空気」を絶妙に表現していた。ファッションは、社会の変化、時代の雰囲気、人々の気分など、さまざまな要素を呑み込みながら、社会現象として登場してくる。それは、私たちもまた当事者としてそこにあることを意味している。

三宅一生/PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE(ISSEY MIYAKE1994年春夏コレクション映像より)/1994年 撮影:フィリップ・ブラジル
『FRUi TS』8月号No.13 表紙/1998年/ストリート編集室発行/個人蔵

極めてまれな展覧会

ファッションを通して、これだけ大規模に時代の変化を見せてくれる展示は極めてまれであろう。というのも、オートクチュールとプレタポルテを問わず、市販のアパレル製品を「作品」として大規模にコレクションしている施設は少ないからである。展示されている作品の大半は個人蔵かアパレルメーカーの所有で、それを一つずつ、展示の目的に沿って借りていく作業は、地道で根気のいるものだったに違いない。量販品は、時代的に貴重なものであっても、販売されれば四散していく。それぞれの時代を生き、ときにはその時代の真っ只中に位置していた人たちにとって、これだけの規模と内容をもった展覧会にお目にかかれる機会は、これからもほぼないと思われる。

ファッション イン ジャパン 1945-2020
―流行と社会
<東京展>

会期:2021年6月9日(水)〜9月6日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室1E(東京・六本木)
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2
開館時間:10:00〜18:00(入場は閉館時間の30分前まで。開館時間は変更になる場合がございます)
休館日:火曜日
観覧料:詳しくはホームページをご確認ください。
お問い合わせ:03-5777-8600(ハローダイヤル)
Twitter:@fij_2020
Instagram:@fij_2020
展覧会ホームページ

<島根展>

会期:2021年3月20日(土・祝)〜5月16日(日)
会場:島根県立石見美術館
〒698-0022 島根県益田市有明町5-15 島根県芸術文化センター「グラントワ」内
開館時間:9:30〜18:00(入場は閉館時間の30分前まで)
休館日:火曜日(ただし5月4日は開館)
観覧料:前売券/一般1,000円 大学生500円 小中高生200円・当日券/一般1,200円 大学生600円 小中高生300円
お問い合わせ:0856-31-1860(代表)
展覧会ホームページ

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