色気を纏ったレザーアイテム
T・MBH
色気を纏ったレザーアイテム
T・MBH

決済も名刺交換もすっかりデジタルツールが普及し、それらをしまうアイテムはどんどん小さく、場合によっては不要にさえなってきました。だからこそ、サッと取り出した財布や名刺入れが美しいと、ひときわ印象に残ります。いまこそ、純粋にレザーアイテムを楽しみたい。そんな粋な革小物好きから注目されているのが「T・MBH」。道具の持つ色気と機能が融合した、実用的な嗜好品です。

ビジネスシーンのアイデンティティ

ビジネスシーンにおいて、財布や名刺入れ、腕時計やペンなどの小物は、ふたつの意味で重要なツールです。ひとつは当然、時間を知る、メモを取る、大切なものをしまうといった実用的な道具であること。そして、もうひとつの重要な役割が、ある種の自己表現を叶える嗜好品であること。あらゆるものがデジタルに置き換えられる現代において、前者の役割はどんどん希薄になっていきますが、後者はいわば自分のアイデンティティとしてより重要になってきているように感じます。

ビジネスシーンの粋

そんななか、“私のテーラー”でお馴染みの「LECTEUR(レクトゥール)」で見つけたのが「T・MBH(ティー・エムビーエイチ)」。素っ気ないほどシンプルなデザインが、上質なエキゾチックレザーの個性を際立たせています。そこはかとない色気と存在感を醸し出す「T・MBH」は、ビジネスパーソンの密かな楽しみとして男女問わず注目されているといいます。人目に触れる機会も減り、機能としての重要性を持たなくなったアイテムだからこそ、自分の好みを突き詰めて遊ぶ。まるで着物の裏地にこだわる江戸っ子のような“粋な遊び”は、ビジネスシーンにおいてこそ面白いのかもしれません。「T・MBH」を運営する株式会社TAKUYA MADE BY HANDの岡本 拓也さんにお話を伺いました。

実用と趣味の融合

岡本さんは、もともと大手の塾で講師として勤めていました。その傍らでレザークラフトを独学で学び、さまざまなブランドを立ち上げます。「最初は工芸品として誰にも真似のできない技術をレザーアイテムに盛り込んでいました。いわゆる一点ものの世界です。その後、スマートフォンのケースなどをレザーで作るブランドを手掛け、マーケティングやデザインを徹底的に意識したものづくりを学びました。その両極端の経験が現在の“T・MBH”に繋がっています」と、岡本さん。機能性と嗜好性が混ざり合った独特のレザーアイテムは、こうして生まれました。

独学から生まれた技術

このブランドの存在を特異なものにしているのが「葉合せ」と呼ばれる独自の技術。通常は異なるレザーが縫い合わせられているはずの部分がシームレスに合わさり、独特の表情を生み出しています。この技術について岡本さんは「“縫う”ということは革に穴を空け、糸という革と違う素材でつなぎ合わせるということです。当然、穴に負担がかかれば破けますし、強度を出すためには革を厚くしなければなりません。実用品としてなら壊れれば買い換えるだけで済みますが、大切な嗜好品ではそうはいきません。そこで、縫わない技法を考え抜きました」と話します。革の縁を極限まで薄く削り出して接着することで「薄いのに丈夫」という相反する要素を融合させる。ハンドメイドの常識を疑い、理屈で検証を重ねていくことによって生まれた独自の技術です。

作り手のエゴを隠す美学

「T・MBH」のロゴは内側に小さく表示されているだけで、いわゆる“それ”とわかるものはピンクゴールドのアイコンだけです。「これ見よがしにブランドロゴを出すことはしません。技術の高さやレザーの風合い、使い勝手もすべて使う人だけが実感できればいい。その潔さが色気や品格に繋がるのではないかと思っています」と、その理由について話します。薄くて機能的なことはスマートな所作に繋がり、存在感がありながらどこかミステリアスな佇まいは色気に通ずる。ミニマルなデザインには、そんな美学が込められていました。

手間と時間を楽しむ

浅草橋の直営店では、独自のオーダーシステムも採用。製品を作る前の皮革「レザーリーフ」から好みの色や風合いを選び、製品に仕立てることができます。すべて手作業による制作期間はおよそ2ヵ月。自分が選んだ一点もののレザーが美しいレザーアイテムに仕上がります。さらに、岡本さんに直接希望を伝えて一点ものをあつらえる「スペシャルオーダー」も直営店ならではの醍醐味です。トートバッグやノートカバーなどのアイテムはもちろん、相談内容によってはゼロから図面を引いてくれます。

レザーアイテムへの憧れ

思えばレザーアイテムに憧れるようになったのは、子供の頃の気がします。仕事から帰って来た父が書斎で腕時計を外し、財布や名刺入れを所定の位置に置く仕草に、どことなく大人の作法のような強い憧れを感じたものです。しっとりと艶やかなレザーアイテムたちは、いかにも“大切なもの”という存在感がありました。

私は美しいブラウンに染め上げられた象革の長財布と、あえて天然の傷が付いた濃紺のカバ革の名刺入れを愛用していますが、華奢に感じた印象とは裏腹に収納力と堅牢さに驚いています。まだまだ力強い生命力を感じさせるレザーが、エイジングによってゆっくりと艶を帯びて、少しずつ自分の手に馴染んでいく。その頃にはきっと、いつか憧れた所作が身についているでしょう。便利なものが手軽に手に入る時代だからこそ、変化を慈しむ時間を愛おしく感じるのかもしれません。

T・MBH浅草橋直営店

〒111-0053 東京都台東区浅草橋3-26-3 アコルデ浅草橋3階
Tel. 03-5829-4135
営業時間:月木金14:00~19:00/土日11:00~19:00
定休日:火・水・祝日、12月30日~1月3日、4月29日~5月5日
※ 岡本拓也さんをご指名の場合は、事前の予約が必要です。
セゾン・アメリカン・エキスプレス®・カードがご利用いただけます。
https://takuya-mbh.jp

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