空間と家具の可能性を追求する
Karimoku Commons Tokyo
空間と家具の可能性を追求する
Karimoku Commons Tokyo

インテリア業界の一翼を担うカリモク家具。一般家庭向けのイメージが強い大手メーカーは、2021年2月に「Karimoku Commons Tokyo(カリモク コモンズ トーキョウ)」を立ち上げました。住空間はもとより、オフィス空間や公共施設など、空間における価値が多様化している現在、インテリアにできることはなんなのか。西麻布の閑静な住宅街から発信されるメッセージを紐解くと、インテリアの新しい可能性が見えてきそうです。

空間の持つ意味や機能について

古くは民族の大移動から定住を経て、いままたわたしたちは遊動の時代に入ったといわれています。2010年代まではオフィスと住宅が主な活動スペースで、途中に立ち寄るカフェなどはサードプレイス(第三の場所)と呼ばれてきました。働くことや学ぶことが本格的にフリーアドレス化したら、わたしたちの暮らしを取り巻く空間はどのように変わるのでしょうか。自宅で仕事をする時代には、くつろぐためにオフィスへ出掛けることもありえます。空間が持つ意味や機能が多様化する時代に、木を使ったものづくりによる豊かな暮らしの提案をするのが「Karimoku Commons Tokyo」。プロジェクトを牽引したカリモク家具株式会社 取締役副社長の加藤 洋(かとう ひろし)さんにお話を伺いました。

きっかけとなった一軒のマンション

ある建築家に「Karimoku Commons Tokyo」を紹介されたとき、意外な印象を受けました。カリモク家具といえばソファやダイニングセットなどのオーセンティックな家具メーカーという印象が強く、実験的な取り組みとは真逆のイメージを持っていたからです。

「企画から製造、販売まで、一貫して木製家具を国内生産してきた企業ですので、意外に思われる方も多いようです。しかし、カリモク家具の歴史は挑戦の歴史でした。現在、カリモク家具ではさまざまな取り組みを行っているのですが、それらのきっかけと言える最初の取り組みが、建築家と協業し特定の空間のためにデザインされた家具を展開するコレクション、Karimoku Case Studyの「KINUTA PROJECT」でした。デンマークのデザインスタジオ「Norm Architects(ノーム・アーキテクツ)」と建築家の芦沢 啓治がテラス型集合住宅の内の2戸をリノベーションするプロジェクトで、空間に合わせたビスポーク家具を作ったのです。技術を詰め込みがちなメーカーのものづくりとは違い、環境や空間など建築家の理想にフォーカスするプロジェクトは新鮮でした。その実験的な取り組みから地続きに『Karimoku Commons Tokyo』があるのだと思います」

暮らしの思考を巡らせる空間

東京の新たな拠点として選んだのは東京・西麻布。住宅街でありながらレストランやギャラリーも多く、東京のエアポケットのようなエリアです。芦沢啓治建築設計事務所が手掛ける築40年近い空間は、リノベーションすることで時代性を帯びているように感じました。1階にはギャラリーを備え、この場所がただのショールームではないことを伝えます。階段で2階に上がると一転、柔らかな光が包み込む空間には自然なレイアウトで家具がコーディネートされています。3階は落ち着いたグレートーンの左官仕上げで、ミニマルなオフィスのような雰囲気。六本木の景色が印象的な屋上には開発中の屋外家具があり、東京とは思えない心地よいスペースです。躯体のテクスチャと天然素材の豊かな表情が合わさり、家具だけでなく木を使ったものづくりと、そのプロダクトが社会に与えるインパクト、そしてこれからの暮らしについて思考を巡らせることができる複合的な空間になっています。愛知県の本社から毎週さまざまなスタッフが出張し、Karimoku Commons Tokyoで仕事をしている姿も新鮮です。加藤さんから、ここで取り扱っている4つのコレクションについてご紹介いただきました。

良き人生を味わう「Karimoku Case Study」

1940年代の米国の実験的プログラム「ケース・スタディ・ハウス」に着想を得た「Karimoku Case Study」は、建築家とコラボレーションしたライフスタイルブランド。建築家が設計した空間にとって理想的な家具をデザインする、というアプローチがこのコレクションの特徴です。実際に使用する空間から考える家具の方が、より生活に馴染み、良いものになるという考えのもと、カリモク家具のクラフトマンシップにより、さらに使い心地とクオリティを高めています。住宅以外の商業空間や公共施設へとフィールドを広げ、トレンドに左右されることのない家具作りを目指しています。

家具本来の在るべき姿「石巻工房 by Karimoku」

芦沢 啓治が代表を務める「石巻工房」とカリモク家具のコラボレーションから生まれたのが「石巻工房 by Karimoku」。「石巻工房」は、東日本大震災で大きなダメージを受けた石巻市で、なにもないところから暮らしに必要な家具を“自分たちの手で生み出す”ために誕生しました。材料も設備もない環境で、初めて家具を作る人にも完成させられるデザインは、家具という道具が持つプリミティブな魅力に満ちています。

Masaaki Inoue, Bouillon( instagram / web )
Masaaki Inoue, Bouillon( instagram / web )
Masaaki Inoue, Bouillon( instagram / web )

森から考える「Karimoku New Standard」

2009年に設立された「Karimoku New Standard」は、家具の材料として活用されてこなかったカエデやクリなどの広葉樹に着目し、日本の森が抱える問題に対してアプローチしています。世界中のトップクリエーターとカリモク家具の木材に対する知見が融合したプロダクトは、素材から製造まで一貫して持続可能な姿勢を貫いています。新しい時代の模範となる家具の在り方を模索し、業界に新たな視点を訴えるコレクションです。

Sohei Oya (Nacasa&Partners)
Sohei Oya (Nacasa&Partners)
Sohei Oya (Nacasa&Partners)

無垢の魅力を伝える「MAS」

ヒノキをはじめとする国産の針葉樹を活用した「MAS(マス)」は、酒器にもなり計量器にもなる日本の「枡(ます)」がモチーフ。デザイナーの熊野 亘と協業し、家具には不向きな強度の針葉樹をカリモク家具の技術で美しい白木の家具に仕立て、道具としての魅力を引き出します。十分な量がありながら需要の減っているヒノキを中心に使うことで、生態系へポジティブな影響を与え、その活動が“マス”プロダクションとして量産されることを目指しています。

家具は豊かな時間を過ごすためにある

「私なりに『木とつくる幸せな暮らし』というグループミッションと向き合ったとき、安定的な社会が実現しなければ事業も安定しないということに思い至りました。カリモク家具は家業であると同時に、天然資源という共有財産を社会実装するプロジェクトでもあるのです。これは一社の独断で進めることではなく、建築家やデザイナー、ときにはユーザも巻き込んで選択肢を広げていく必要があります。その姿勢を“コモン”という言葉に込めました。この場所が暮らしの本質や日本人のアイデンティティに向き合う装置として共有できることを願っています」

今後は「Karimoku Commons」を全国に広げていきたいという加藤さん。時代やライフスタイルが大きく変わり、家具や空間のあり方が問われるいま、豊かな暮らしへのヒントが見つかるかもしれません。

Karimoku Commons Tokyo

〒106-0031 東京都港区西麻布2丁目22-5
Tel. 03-6805-0655
営業時間:12:00-18:00
予約可。ご予約はこちら

セゾン・アメリカン・エキスプレス®・カードが
ご利用いただけます。

https://commons.karimoku.com

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