富士山の麓、河口湖湖畔の大自然に建つ一棟のホテル。一日ひと組だけが過ごせるプライベートな空間で、手厚いもてなしとともに自由で気ままな時間を過ごすことができます。滞在の魅力は、なんといっても冷涼な空気と心地良い静寂。元バックパッカーで寝装具のプロであるオーナーが手掛けたこのホテルでは、昼は自然と戯れ、夜はぐっすりと眠ることができます。
富士五湖のひとつ、河口湖。湖畔は富士山の北麓「吉田ルート」の玄関口として、国内外を問わず多くの観光客で賑わいます。しかし、今回ご紹介する「yl & Co. Hotel (イルアンドコーホテル)in Mt.Fuji」は標高約1,000メートルの鳴沢村にあり、ホテル周辺の一帯は森に囲まれた静かなエリア。夏は冷涼な避暑地として人気があり、大きな道路から奥まった場所にあるため落ち着いた雰囲気です。「山椒の木などが自生する豊かな自然環境が自慢で、料理研究家の方が仲間と長期滞在することもあるんです」と、教えてくれたのは、ジェネラルマネジャーの伴野 仁美(ばんの ひとみ)さん。地元出身の強みを活かして、ゲストのあらゆる要望を実現してくれる心強いスタッフです。
ホテルの名前に含まれている「yl」とは「Yonebayashi Lease(ヨネバヤシリース)」の略。布団やリネンサプライのリース業を営む傍ら、民宿をバックパッカー向けホステルにコンバージョンしたり、2022年には寝装具に特化したライフスタイルブランド「sinso(シンソー)」を立ちあげるなど、未来の衣食住をテーマにさまざまな事業を展開しています。ヨネバヤシリース株式会社の取締役、米林 美香(よねばやし みか)さんにお話をうかがいました。
「代表の米林 琢磨(たくま)の実家は、もともと山梨県を中心にレンタルの寝装具を扱っていました。彼自身は若い頃バックパッカーとしてさまざまな国を訪れ、日本にも手軽に安心して眠れるホステルが必要だと感じていたようです。私の実家は河口湖で民宿を営んでいたのですが、代表との結婚を機に『kagelow Mt.Fuji Hostel Kawaguchiko』としてリニューアルしました。それが2012年のことです。衣食住を提供できる宿泊事業に可能性を感じ始めた頃、もともと撮影スタジオだったこの場所を知人に紹介され、旅の目的地になるような宿を作ろうとプロジェクトをスタート。スタジオだったこともあり、天井が高く光が綺麗に入るなどの特徴もありましたが、何よりこの土地が持つ無垢な空気に魅せられました。そうした土地や建物が持つ魅力は残しつつ、ハード面とソフト面から理想の宿泊施設を考えた結果、フレキシビリティとホスピタリティを両立させた現在のサービスに至りました」
全体の建築デザインは「墨壺屋デザインワークス」によるもの。山梨県を拠点に店舗や別荘などの建築デザインを手掛ける伊藤 泰藏(たいぞう)と亮陽(りょうよう)の兄弟による高低差を活かした内装デザインは、古民家の建具などをミックスした独自の世界観が特徴的です。約3000㎡の敷地と約370㎡の建物は、デザインコンシャスでありながら機能的な空間。大人数で宿泊しても快適です。コンセプトやサービスについて、伴野さんにうかがいました。
「建築デザインはkagelowと同じチームだったので、イメージどおりのすてきな空間に仕上がりました。ビジネスでのオフサイトミーティングなどのご利用も多く、二家族での宿泊や三世代での滞在でも快適に過ごせる空間になっています。ただ、旅自体が目的であることが前提のホステルと、フルアテンド付きの一棟貸しホテルではサービスに求められるものが全く違います。そこで、ソフト面は快適性や清潔感などを軸に見直しました。リビングやシアタールーム、テラスなどの大人っぽい雰囲気は大切にしつつ、キッチンや浴室、寝室では女性やこどもが安心して快適に過ごせることを最優先にしています。有機的な森に無機質な建築、クールな内装に温かいもてなしなど、こうした心地良いギャップを我々は“振れ幅”と表現し、大切にしています」
一般的な貸別荘などは基本的に空間と設備を借りるだけなので、それぞれの目的に合わせて自分たちで旅の準備をして、あとは自由に過ごすというのが基本です。しかし、このホテルがひと味違うのは、スタッフが滞在をあらゆる面からサポートしてくれること。例えばBBQをひとつとっても、全部任せたいのか、焼くところだけは自分たちでやりたいのか、はたまた食材から自分たちで用意したい場合はどこで買えば良いのか、ニーズに合わせて相談にのってくれます。森の庭でサウナを楽しみたければテントサウナを設置してくれたり、連泊でのランチが必要になったらケータリングを手配してくれたりと、ゲストの要望に合わせて可能な限り力を尽くしてくれるのがうれしいところ。要望がないときは干渉されることもないので、シアタールームで映画を見たり、庭でボーッとなにもしない時間を過ごしたり、気分に合わせて気ままなひとときを満喫するだけ。サイクリングやゴルフなどのアクティビティも充実しているエリアだけに、過ごし方は実にさまざまです。
自分たちで料理を楽しめるように、キッチンには基本的な調理器具や食器などがそろっています。おすすめは地元の通も唸る食材を取りそろえたBBQとしゃぶしゃぶ。スタッフが近所の八百屋や肉屋、魚屋を回って、その日のおすすめの素材を用意します。「わたしたちは料理人ではないので、自分たちが食べて感動したものを用意するだけです」と、伴野さんは地元で採れた自慢の食材を並べてくれました。近隣から届く季節の野菜はもちろん、牛は「甲州牛」、豚は「甲州富士桜ポーク」、鶏は「信玄どり」と、山梨ブランドのフルコース。地元では特別な日には食卓に並ぶという馬刺しに、なんだか親しみを覚えます。「お好きなお酒を持ってきても楽しいですし、山梨の共栄堂さんからナチュールワインもそろえているので、ぜひ食事に合わせてもらえたらうれしいです」と、米林さん。地元の魅力が凝縮された心づくしのもてなしに、お腹も心も満たされます。
そして寝室スペースでは、sinsoのオリジナルのナイトウェアや寝具が眠りを誘います。マットレスは姿勢を支えるように、適度な硬さのウレタンを独自に開発しました。リネン類やパジャマはすべて綿100%で、洗いざらしの柔らかな肌触りは自宅のようなくつろぎを与え、布がこすれる音さえ心地良く感じます。2022年には自社運営のクリーニング工場も設立し、洗剤や漂白剤などを削減する手段としてオゾン水を使って洗浄されています。枕に使われているダウンは、役目を終えた羽毛布団を回収して生まれ変わった「アップサイクルダウン」を使用したもの。「寝装具のあり方を正し、再構築する」というコンセプトを体現した睡眠環境は、眠ることの気持ち良さに改めて気づかせてくれます。夜が明けると自然に目が覚め、窓にカーテンがなかったことに初めて気づきました。自然のなかで過ごしているうちに、リズムがゆっくり自然と同調してくるのを感じます。
yl & Co. Hotel in Mt.Fujiでの滞在は、プライベートな解放感と痒いところに手が届くようなサービスが適度に両立しています。例えば夕方、陽が落ちると辺りの気温がぐっと下がりました。日中は初夏の陽気だったので薄手のアウターしか持ってきていなかったのですが、窓の側にはきちんとダウンコートが用意されているのです。夜に焚き火がやりたいと思い立てば、薪の横にはきちんと焚き付け用の着火剤まで用意されている。このもてなしに「代表自身が実際に世界を旅してきたからこそ、宿泊する場所に対して自分なりの理想があり、それを実現したかったのだと思います」と、米林さんは話します。さまざまなスタイルの宿泊施設が活況を呈しているいま、フルアテンド付きの一棟貸しという選択肢は最も贅沢な旅かもしれません。
〒401-0320 山梨県南都留郡鳴沢村鳴沢5555-3
Tel. 050-1265-7988
セゾン・アメリカン・エキスプレス®・カードが
ご利用いただけます。
http://ylandco-hotel.com