皇室や朝廷に海産物などの食材を届ける「御食国(みけつくに)」のひとつとされ、日本の神事においても重要な役割を果たしてきた若狭地方。2023年8月、この土地の風土や食文化を五感で堪能できる宿「若狭佳日」がオープンしました。5つの建物から構成される分棟タイプの宿では、さまざまなタイプの客室と贅沢な外湯、そして地域に溶け込むような体験が魅力です。若狭小浜の旬を切り取った季節の料理が、静かな非日常を体験させてくれました。
2024年3月、北陸新幹線が開通した福井県の敦賀駅。そこからJR小浜線に乗り換えると、若狭湾に沿ってのどかなローカル線の旅を楽しむことができます。今回ご紹介する若狭佳日は、小浜駅から車で20分ほどの福井県小浜市阿納(あの)地区にあります。日本海では珍しいリアス式海岸に囲まれた穏やかな内海と豊かな自然に恵まれた小さな漁村で、周辺は近畿エリアの海水浴場としても人気です。
その昔、朝廷の神事に用いられる良質な塩や海産物が獲れる場所を「御食国」と呼び、日本書紀や万葉集には兵庫県の淡路地方や三重県の志摩地方の名前が記されています。福井県の若狭地方もそのひとつで、穏やかな海ではいまでもフグやマハタ、カキの養殖などが行われています。
若狭地方は京都から近いこともあり、80年代の海水浴ブームでは関西地方を中心に全国から多くの観光客が訪れました。阿納地区は小規模な民宿や旅館が建ち並び、一帯が宿泊業を営んでいる集落です。そんな「民宿集積地域」に新しく誕生した旅館が若狭佳日。実は、廃業することになった宿をリニューアルした宿泊施設です。運営する「株式会社まちづくり小浜」の代表取締役を務める御子柴 北斗(みこしば ほくと)さんにお話を伺いました。
「私は長野県の出身なのですが、農林水産省に勤めていたときに小浜市役所に出向していたのが縁でこの地域の魅力を知りました。このエリアは古来より海と山の幸に恵まれ、豊かな風土が奥深い歴史とおおらかな気風を育てたのだと思います。その風光明媚な環境とおいしい食事を求めて観光客が押し寄せた時代もありましたが、現代では地域をあげて集客に取り組みつつも後継者不足に悩む宿泊施設も多いのが現状です。若狭佳日も、集落を代表する宿が2020年に廃業したことで新しい活用方法として再建した宿泊施設です。最大の特徴は地域の旅館15軒が資本を出資していること。競い合うのではなく、力を合わせることで地域の魅力を高めていくという姿勢が、この宿を生まれ変わらせました。日本の観光業や地方再生のヒントになれるのではないかと思っています」
若狭佳日は路地を挟んで5つの建物から構成されています。道路に面したフロントがユニークな「蔵」、客室棟をリノベーションした「別館」、元大浴場として使われていた建物を1フロア1室のスイートルームに仕立てた「離れ」、ダイニングと機能的な客室を備えた「本館」、そして唯一新築された湯所「内外海(うちとみ)」です。建物が細かく分かれているのには、阿納特有の事情がありました。宿泊業が盛んだったこの地域では、まず家を建て、隣に客室棟を建てて旅館業を始めます。次第に客室が足りなくなると、隣に別館を建てて大浴場や宴会場なども用意していきます。こうして、地域の繁栄とともに少しずつ敷地を建物が埋めていったため、このような分棟形式の旅館が多くなったのだそうです。さらにオペレーションの都合でそれぞれの建物の2階や3階を空中廊下で繋いでいきました。湯上がりや食後に路地を歩いていると、外廊下が道の上で建物を繋いでいる場所をよく見かけます。
客室は全部で13室。それぞれ景色や雰囲気が異なりますが、京都を拠点に活動している建築家の魚谷 繁礼(うおや しげのり)さんによる改修は快適で遊び心に満ちています。リフォームのようにすべてを漂白してしまうのではなく、昔ながらの良さを活かしつつモダンなデザインと機能的な空間にアップデートされていました。離れのスイートルームは元大浴場だった基礎の構造を大胆に活かし、若狭佳日でしか表現できないユニークな表情をみせています。各フロアは朝から夜までの光をイメージしたカラースキームで構成され、いずれのフロアも海側に大きく開放されているのが特徴。ピクチャーウィンドウから望む若狭湾の絶景に心が洗われます。ロフト付きの部屋やテラス付きの客室など、全体的に時の流れや歴史の気配を残したリノベーションには、若狭地方が積み重ねてきたものを大切に残していきたいという想いを感じます。
客室以外の共有エリアも充実しています。特に、新設された外湯での湯浴みは至福のひととき。1階と2階でそれぞれ海を眺めながら湯船に浸かることができるのですが、朝と夕で男湯と女湯が入れ替わるため、異なる表情を楽しむことができます。1階のインフィニティバスは黒い壁が光と景色をシャープに切り取っているのが印象的。半露天になっており、海の景色だけでなく湯船に映る空模様まで鮮やかに浮かび上がらせます。一方、2階の湯船は景色が上下に切り取られ、穏やかな海の風情にフォーカスを当てることで落ち着きのあるバスタイムを過ごすことができます。いずれも海景を主役にした空間では、自然が生み出すインスタレーションに没入するような感覚を味わえます。湯上がりには蔵を改装したラウンジでビールやアイスを頂いて、心も体もすっかりリフレッシュ。お風呂の前に海水浴をしたり、湯上がりに近所を散策するなど、地域に溶け込むような体験がなんとも贅沢です。
若狭地方を旅する醍醐味のひとつが食事。ダイニング「膳(かしわで)」の料理長を務めるのが飛山 司(とびやま つかさ)さん。地元の生産者から届く、いま一番おいしい食材だけを集めた日本料理をコース仕立てで提供します。鯖子のうま煮など、地元でしか味わえない伝統料理やアカイカ、マハタのお造り、そして名物「若狭ぐじ」は松笠揚げと若狭焼きで頂くなど、素材の繊細な味を巧みに活かします。
「もともと福井県越前市の出身なのですが、京都や東京、北海道などで料理の腕を磨きました。暖流と寒流がぶつかる若狭湾沖は通年を通して海が穏やかで、漁師さんたちが定置網でいろいろな海の幸を届けてくれます。水も綺麗なのでお米や野菜もおいしくて、市場でも毎回新しい出合いや発見に満ちています。この場所では料理のために食材を集めるのではなく、この土地の素材の魅力を引き出すひと皿を仕立てていきたいと思っています。日本料理をベースに、この土地の食材と伝統を織り交ぜながらさまざまなアプローチを試していきたいですね。一度この土地から離れていたからこそ、この土地のすばらしい価値を再認識することができました。冬はフグ、夏はグジと主役を据えながら、旅の瞬間に相応しい、この場所でしか味わえない料理をお届けします」
若狭は都に最も近い日本海の湊町で、かつて大陸文化の玄関口だった歴史もあり、人口に対して寺院が多いといわれています。「昔から豊かだったこともあるのでしょうけれど、漁業や農業などは自然とともに地域で力を合わせなければ成り立たない仕事なので、助け合いの精神や寛容な風土が育ったのかもしれません」と、御子柴さんは話します。現在では自然の豊かな恵みと「民宿集積地域」の特性を活かして、教育旅行にも力を入れています。地域が一体となって食育や農業体験に取り組む姿勢が評価され、現在では年間およそ30校、5,000人もの学生が阿納地区を訪れているといいます。取材時にもたくさんの学生が訪れ、都会にはないのんびりとした空気を満喫していました。競い合うのではなく助けあい、独占するのではなく分かちあっていく。そんな日本の良き文化が次世代に受け継がれていくことを願うばかり。たおやかな雰囲気が魅力のこの場所にいると、そんな気持ちが自然と生まれるから不思議です。湖のように凪いだ海を眺めながら浸る心地良い湯と滋味あふれる料理。そして、人々の優しさに触れる宿でした。
夕食事にウェルカムドリンク(地元の梅ワインまたは梅のサイダー)を1杯サービス。
〈対象期間〉
2025年2月28日(金)までにご宿泊予約をお申込みされた方
※年末年始(12/30〜1/3)を除く
〈ご予約方法〉
ご予約は公式サイトまたはお電話からお願いいたします。
・電話番号:0770-54-3010
・公式サイト予約ページ:https://go-wakasa-kajitsu.reservation.jp/ja
〈対象条件〉
・WEB でご予約の際は「ご要望入力」欄に【PT 優待】とご記入ください。
・お電話でご予約の際は「PT マガジンを見た」とお伝えください。
※チェックイン時に対象カードを提示いただき、チェックアウト時の支払いに該当のカードをご使用ください。
※他の特典付プランとの併用はできません。
〈対象カード〉
セゾンプラチナ・アメリカン・エキスプレス®︎・カード
セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス®︎・カード
MileagePlusセゾンプラチナ・アメリカン・エキスプレス®︎・カード
freeeセゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス®︎・カード
全弁協セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス®・カード
CPAセゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス®・カード
へきしんセゾンプラチナ・アメリカン・エキスプレス®・カード
へきしんセゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス®・カード
大和証券セゾンプラチナ・アメリカン・エキスプレス®・カード
〒917-0105 福井県小浜市阿納10-4
Tel. 0770-54-3010
セゾン・アメリカン・エキスプレス®・カードが
ご利用いただけます。
http://wakasa-kajitsu.com