ヨーガンレール / ババグーリの世界観を体験できるホテルとして2018年に誕生した「Hotel MALDA Kyoto」。京都のなかでもアクティブに動きやすい立地にありながら、シンプルでゆったりとした設えと落ち着きのある空間が魅力です。1日3組限定の客室と丁寧に用意された朝食は、久しぶりに旅の風情を満喫させてくれました。暮らすように泊まる京都トリップにちょうど良いホテルをご紹介します。
ドイツ人デザイナーのヨーガン・レールは1972年から日本で暮らし、「Jurgen Lehl(ヨーガンレール)」を立ちあげました。天然素材や手仕事の温もりを大切にしながらも、美しいテキスタイルや空気を含んだシルエットはアーティスティックで洗練された印象を与えます。2006年にスタートした「Babaghuri(ババグーリ)」は、手織りの布や草木染めの綿など、より自然との調和をテーマにしたブランド。その思想や普遍的なデザイン哲学に共感する人は多く、ファッションを超えたライフスタイルブランドとして広く愛されています。京都の御池通からほど近い、堺町通と姉小路通の角地に立つ「Hotel MALDA Kyoto」は、総合監修を株式会社ヨーガンレールが手掛けたホテル。豊かな暮らしのヒントが詰まっています。
Hotel MALDA Kyotoは1階がカフェで、上階がゲストルームというシンプルな構成です。客室は全部で3つあり、2階は「赤(AKA)」、3階は「青(AO)」、4階は「墨(SUMI)」となっています。厳選されたインテリアは、テーマカラーが表現された左官仕上げの壁に合わせてセレクトされたもの。1フロアに1部屋という仕様は、外国の友人宅を訪れたような独特の高揚感に包まれます。約60㎡の空間にはツインベッド、デイベッド、ダイニング、キッチン、バスタブ、トイレが効率よくレイアウトされ、中長期の滞在でも快適に過ごせる設備。ビジネスホテルも高騰しているいま、バランスの良い贅沢を味わえる滞在先です。肌触りが心地良い上質なリネン、タオルやカトラリー、バスアメニティに至るまで、まるでヨーガン・レールの自宅に招かれたような気分になります。
大きな窓からは人々の営みが感じられ、まるで暮らすように滞在できる居心地の良さが特徴です。ゆったりしたシンプルな空間には、ババグーリの商品を含むファブリックやインテリアがよく似合っています。Hotel MALDA Kyotoの代表を務める藤本 信行(ふじもと のぶゆき)さんにお話をうかがいました。
「私はもともとホテルや商業施設を手掛けるUDS株式会社で設計を担当していました。マネジメントではなく設計を続けたいという想いで独立した矢先に、ホテルの向かいにある『ババグーリ 京都』を手掛けた建築集団『六角屋』の三浦 史朗さんからこの建物を宿泊施設に改築したいという相談をいただいたのです。それまでヨーガンレールのことをあまり知らなかったのですが、代表取締役である松浦 秀昭さんと三浦さんの三者で打ち合わせを進めていく過程で、その思想や生き方に共感する部分がありました。著書なども拝見するうちに、ヨーガンレールにも使われているインド原産のシルクを生み出す繭が『MALDA』という種類であることを知り、ホテルの名前にしたいと思いました。客室の床を洗い出しにしているのは、ヨーガン・レール氏の自宅からいただいたアイデアです。テーマカラーやシンプルなカーテンのあしらいなど、ババグーリのインテリアと組み合わさることで、暮らしの延長線上にある寛いだ雰囲気が漂うホテルに仕上がりました。これまでのホテルを設計してきた経験から、デザイン性と宿泊施設としての安心感の両立を大切にしています。ホテルというよりは、京都で暮らすように寛いでいただきたいですね」
Hotel MALDA Kyotoの宿泊プランにはディナーが含まれておらず、時間を気にすることなく京都の街を散策できる手軽さも魅力のひとつ。思い立って京都に来るならこれくらいの軽やかさがちょうど良いかもしれません。チェックインをしたら荷物を置いて、ふらりと街に繰り出すにも便利な立地ですし、1階の「Café MALDA」で食事を済ませて考え事や仕事に没頭するのも良さそうです。
「お店では砂糖、卵、乳製品を使わずにつくられたマフィンやクッキーなどの手作りお菓子と、オリジナルのスパイス配合で仕上げたチャイやレモングラスティやパキスタンレモンと蜂蜜のソーダといった石垣島のヨーガンレール農園から届く季節の果物を使用したドリンクなどがお楽しみいただけます」と話してくれるのは、カフェスタッフの中田 晃代(なかた あきよ)さん。調理を担当する林 ひろみさんは、「ヨーガンレールのデザイナーであり、ババグーリのお菓子も企画された牧野 里香(まきの りか)さんのレシピをベースにMALDAのオリジナルレシピで食事を提供しています。身体にも優しい素材を使っているので、おいしい選択肢のひとつになればうれしいです」と、旬の素材を使ったメニューに取り組んでいます。そして、食に対する想いが強かったヨーガン・レールの思想を色濃く反映しているのが朝食です。
手書きのメニューとともに部屋まで運ばれてきた朝食はボリューム満点。ヨーガンレールの社員食堂から受け継いだ季節の有機野菜料理は、素材の滋味を感じる味わい。主食は玄米と古代黒米のご飯、玄米がゆ、パンから選べ、連泊の際にはメニューが変わります。今回は特別に和食と洋食の両方を用意していただきました。
長芋と万願寺唐辛子、ふきのとうを米粉で揚げたかき揚げはサッパリとしていて、ごま塩をかけると野菜の甘味が引き立ちます。蓮根と筍のきんぴらやぬか漬けなどの塩味をアクセントにしながらご飯を頬張り、まめ味噌の濃厚なお味噌汁を頂いていると、なんだか自分がとても大切にされているような気持ちになります。
洋食はエンドウまめと豆乳のポタージュスープをメインに全粒粉の天然酵母パンを頂きます。ズッキーニとトマトのチーズオムレツ、里芋と青じそ、新タマネギのコロッケなど、こちらも身体に負担が少ない素材ながら満足感のあるボリューム。朝からしっかりとエネルギーがチャージできます。
早朝から朝食の準備に取りかかるのは小野 美晴(おの みはる)さん。ヨーガンレールの社員食堂で研修も受け、そこで料理人の佐藤 雅子さんから受け継いだレシピをベースに「当たり前のおいしさ」を提供しています。
「ヨーガンレールの社員食堂は、光がたっぷり降り注ぐ会社の一番良い場所にあるのです。研修に行ったとき、佐藤さんからヨーガン・レールの食への想いや暮らしへの姿勢を聞いて、多彩な菜食料理の魅力に気付かされました。MALDAに宿泊されたゲストへお出しする朝食では、近隣の生産者の皆さんから届く有機野菜や、石垣島のヨーガンレール農園から届く食材などを使用し、調味料なども手作りで提供しています。梅干しもしっかり酸味を感じるので、目が覚めます(笑)。グルテンフリー、ビーガンといったご要望にも対応していますし、朝の活力をご提供できたらうれしいですね。私自身、毎日違う献立を考えながら、丁寧に作られた旬の素材を最大限に活かした食事の魅力を実感しています」
近年、外資系の高級ホテルを筆頭に宿泊施設の開業ラッシュが続く京都。好調なインバウンド旅行者の影響もあり、プライベートでもビジネスでも“ほど良い滞在先”を見つけるのに苦労することも増えました。JR東海が1993年から実施している「そうだ 京都、行こう。」も、今では懐かしく感じてしまいます。高級で上質な旅はもちろんすばらしい体験ですが、Hotel MALDA Kyotoはもっと気軽に、気ままな京都を楽しみたいと思っている方にぴったりの滞在先かもしれません。気取らず、それでいて上質な素材に囲まれた客室で寛ぎ、自由に街を巡る。夕食はその時の気分に合わせて好きなお店に入れば良いというのも、街の暮らしに溶け込むようでなかなか心地良い体験です。そしてゆっくり湯船に浸かって、肌触りの良いリネンに包まれながらぐっすり眠る。朝には身体に優しい朝食でしっかりと英気を養えば、古都の営みにすっかり癒やされていることに気付きます。朝の静かな街を散歩しながら、久しぶりに京都の旅を満喫することができました。
〒604-8106 京都府京都市中京区堺町通御池下る丸木材木町684
Tel.080-1456-5967 (9:00〜18:00)
セゾン・アメリカン・エキスプレス®・カードが
ご利用いただけます。
https://www.maldakyoto.com