星のや東京
「星のや東京」発、“神田・日本橋・人形町”江戸風情に触れる
星のや東京
「星のや東京」発、“神田・日本橋・人形町”江戸風情に触れる
サーバーメンテナンスのため、2021年10月27日(水)AM5:00〜8:00の間
PT MAGAZINEはご覧いただけません。ご了承ください。

日本の経済の中心地、東京・大手町。林立するオフィスビル群に溶け込みつつも趣 を異にする建物が、2016年に開業した「星のや東京」だ。それは、高くそびえる「塔の日本旅館」。丹念に編み込まれた柳行李を思わせる外観に、早く中を覗いてみたくなる。

 

 分厚い木の扉が開くと畳敷きの玄関が現れ、天井高くまで続く竹細工に目を奪われた。日本らしさ、その形と心がさまざまに表現された館内。自然の素材が織り成す端正な美しさに、工芸品の中に迎え入れられたような心地になる。
 久しぶりのイ草の香り。足裏の心地良い感触を確かめながら、塔の上階の客至フロアヘ。こちらは一転、明かりを絞り、陰影に富んだ心鎮まる空間だ。客室も色を抑えて、凛とした潔さに貫かれている。東京の真ん中とは思えない静謐さだ。けれど、障子をそっと開けると、やはり紛れもないビル街がそこにある。不思議な感覚だ。
 ダイニングは塔の地下にあった。フレンチの世界で腕を磨いた新進気鋭の日本人料理長が、「Nipponキュイジーヌ」で、日本の風土と文化を表現する。
 一方で、部屋でゆっくりしたいゲストには多彩なルームサービスも選択可能。ゲストとの距離感に心を配りつつさりげなく寄り添うのが、進化した日本旅館、星のや東京のもてなしだ。
 塔の最上階には温泉がある露天風呂から四角く切り取られた空を仰げば、格子越しに眠らない首都・東京の鼓動が感じられる。日常と隣り合う非日常に、心地良く身をゆだねた。

 

 翌日は、宿からほど近い神田、日本橋、人形町を巡ることにした。星のや東京では、「お江戸マイスター」なる街に精通したスタッフが、ゲストの要望に合わせて旅のプランの提案や手配をしてくれる。
 ここ大手町は江戸時代、大名屋敷が立ち並んでいたエリア。星のや東京も、庄内藩酒井家の屋敷跡に立つそうだ。3つの町は、そんな江戸からの歴史を感じられる場所。人力車で向かうのがおすすめという。
 体脂肪率の低そうな若い俥夫さんが、玄関まで迎えにきてくれた。軽快に走り出すと、たちまち心地よい風が起きる。思いのほか高さがあり、ゆるりと流れていく街の景色が新鮮だ。あっという間にオフィス街から、古書店街のある神田神保町界隈まで来た。地下鉄で潜ってしまうことの多い都心だが、こうして地上を移動してみると、路線図上では見えなかった地形や位置関係がわかっておもしろい。
 昔この辺りは多くが海だったこと。それを、徳川家康が神田の山を切り崩して埋め立てたこと……。俥夫さんは坂もマスクもものともせず、いろんなことを教えてくれる。途中、昔のたたずまいを残す街角に寄り道しながら、いつしか神田明神に着いた。「江戸の総鎮守」として親しまれてきた古社である。
 お江戸マイスターが提案してくれた、参拝マナー講座やご祈祷を受けられる神社のプライベートツアーに参加した。「神社とは」に始まり、神田明神の由緒や御祭神、お参りの作法などについて講義を受ける。座学のあとは、実践編。社殿に上がっての本格的な参拝を体験した。改めて知る、祈りの心と形。清楚な巫女さんによる舞といい、快い鈴の音色といい、日本古来の“美しい体験“に、心の濁りもいくらか清められた気がする。

 

 次に向かったのは、江戸随一の街、日本橋。川沿いには関東大震災まで魚河岸があり、江戸東京の台所として賑わっていたという。
 予約していた「てん茂(も)」は、そんなかつての日本橋を知る、江戸前の天ぷらの老舗。屋台で創業し、今年135年目を迎えた。小体な一軒家は、小津安二郎の映画から抜け出してきたよう。
 店内にはこうばしい香りが漂い、快い撥ね音が響く。白胡麻を炒った琥珀色の胡麻油を使うのが、創業時からの変わらぬ流儀だ。熱に強く高温で揚げられるといい、風味もよくなる。それはこれまで食べたどの天ぷらとも違っていた。軽い衝撃とともに、その歴史を噛みしめる。町の人に愛され続けてきた味と、それを裏切らない仕事。昔日の東京に思いを馳せた。
 腹ごなしに人形町へと歩く。カンカン帽にパイプをくわえたおじさんが、自転車で通り過ぎていく。日曜日のようなゆるりとした空気感。この辺りは水天宮の門前で、昔から茶屋が多かったらしい。いまもその名残なのか「甘酒横丁」の名前がついた通りには、たい焼きや人形焼など甘味処が軒を連ねる。

 

 教えてもらった「うぶけや」を訪ねると、これまた味のある店構え。天明3(1783)年から続く刃物店だ。暖簾をくぐると、包丁に裁ち鋏、毛抜きに剃刀、小刀などがずらり。かつて近くに江戸最大の繊維街があり、繊維問屋ではこうした刃物が欠かせなかった。
 奥は作業場になっている。「戦前の刃物屋はみな、このスタイルだったんです」とご主人。プロのお得意さんも多く、「ここをこうして」との注文に応えて一つひとつ調整し、売ったあとも面倒を見る。「切れていけないのは、毛抜きとお客様とのご縁ですから」と笑った。多くの仕事人を支えてきた江戸の職商人の技と心意気が、いまもそこに守り継がれていた。
 辺りが暮れなずむ頃、日本橋のたもとから舟に乗り込んだ。旅の終わりに、水の上から街を眺めてみては、とのお江戸マイスターからの粋な提案だ。
 とぐろを巻く大蛇のような首都高速の下を、小さな舟はスイスイ走り、行く手に現れるさまざまな形の橋をくぐるうち、隅田川に出た。左手にはシュッとしたスカイツリー。右手には雨後の筍のごとき佃島の超高層マンション群。いやはや壮観な眺めだ。灯り始めた明かりの中、「弁松総本店」の折詰弁当や「豊島屋本店」の銘酒など、舟に用意された町の逸品をいそいそと広げた。贅沢な現代版舟遊びである。
 刻々とダイナミックに変わり続ける街。いくつもの困難を乗り越え、今なお息づく昔ながらの技や心。それらを同時に体験できる幸せを、改めて実感した東京への旅だった。

(文/北井裕子 ・ 写真/小畑 雄嗣)

星のや東京

〒100-0004 東京都千代田区大手町1丁目9−1
Tel:0570-073-066
https://www.hoshinoresorts.com/resortsandhotels/hoshinoya/tokyo.html

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