暮らし方や働き方が多様化し、空間の定義がボーダレスにシフトしているいま、インテリアにおいても変化に柔軟なデザインと機能性が求められています。by interiors(バイ インテリアズ)は、ハイエンドの輸入家具に対する豊富な経験から導き出された独自の哲学と美意識を持ち、個性豊かなデザイナーたちとのコラボレーションを展開するインテリアブランド。国産の高い技術とインテリアの本質を問う姿勢は、空間に対する新鮮な問いを投げかけています。
表参道から根津美術館へ抜けた角地に建つレンガ造りの瀟洒な建築。イタリアの建築家、ピエロ・リッソーニによってコンバージョンされた建物は、周辺の雰囲気と相まって独特の存在感を放ってきました。株式会社インテリアズの「è interiors(エ インテリアズ)」は、イタリアの高級キッチンブランドBoffi(ボッフィ)をはじめ、数々のハイエンドインテリアを巧みに織り交ぜた提案型のショールームです。最大の特徴はブランドの垣根を越えた独自のスタイリング。リアリティのあるフロア構成でインテリアのトレンドとブランドの世界観を伝えています。まるで家具のようなBoffiのアイランドキッチンを主役にしたLDKをはじめ、近年ニーズの高まるワークスペースを取り入れたスタジオタイプの空間、寝室などのプライベート感を重視したリラックスできる部屋など、およそ100㎡ごとに区切られたフロアにはインテリア好きならずとも憧れるような空間が広がります。
インテリアズでは⽇本の販売代理店としてショールームの機能を提供する⼀⽅、さまざまなコントラクトビジネスも展開してきました。コロナ禍では輸入家具の持つ納期や価格面での課題を解決するために、オリジナルブランド「by interiors(バイインテリアズ)」も本格的にスタート。2021年4⽉には南⻘⼭にショールームをオープンし、グローバルに展開しています。取締役の磯飛 佳花(いそひ よしか)さんにお話をうかがいました。
「インテリアズは、一つのショールームで複数のブランドをミックスして提案しています。イタリアを中心としたさまざまなハイエンドブランドを扱うことで、すばらしいプロダクトが暮らしに与えてくれる豊かさを学んできました。しかし、商業施設や公共施設などの空間デザインにおけるコントラクトビジネスにおいては、納期や価格面において輸入ブランドだけではニーズに応えることが難しいのも事実。特にコロナ禍以降で課題になったのは、不安定な納期と円安による価格の高騰です。そのような状況において、建築家やデザイナーが納得できる製品を提案するには、自社でコントロールできるオリジナルプロダクトを開発する必要がありました」
その課題は、創業時からパートナーとしてブランドをサポートしていたデザイナー、⽥渕 智也(たぶち ともや)さんも同様に感じていたようです。「アイコニックな海外のハイブランドと相性の良い、柔軟性の高いコントラクト家具は業界としても求められていた」と、⽥渕さんは当時を振り返ります。そこで、by interiorsの第一弾として一緒に1台のテーブル「TEE(ティー)」を開発しました。素材は軽くて強く、加工のしやすいアルミニウムに着⽬し、天板と4本の脚だけというミニマルなデザインにすることで素材の魅力と技術力の高さを際立たせています。従来の納品イメージのようなスタイリングでは発表せず、柔軟な提案ができるプロダクトとして展示したところ、反響は大きかったといいます。新潟の燕三条の高度なアルミ加工技術によって実現したこの提案は、プロフェッショナルのイマジネーションも刺激しました。
「TEE」の天板は、厚さ19mmの「アルミニウムハニカムパネル」という素材を使用しています。⽥渕さんは強度が飛躍的に向上した素材の特徴を最大限に活かしました。
「最小限のパーツ構成で、様々な用途に展開出来るテーブルを考えたとき、高い強度を持った天板⾃体を構造体にするアイデアが生まれ、それを軸にフレキシビリティの高さを表現できるデザインを模索しました。素材の特徴を構造的にも視覚的にも伝える手段として、通常では1枚成形することが難しい3mの天板を4本の脚だけで支える構造を考案しました。それを可能にしているのが、天板に対してスチール製の脚部をねじ込んで固定する独自のジョイント方法です。脚と天板の接合部分にアルミの無垢材を直接“ねじ切り”することでパーツの使用を極限まで抑え、独特の浮遊感を感じるデザインになっています。工具を使用せずに組み立てることが可能で、ジョイント部分はすべて19mmの天板に収まっています。これは切削加工の高い技術力があってこそ実現できるデザインです。足下に広がる広い空間が最大の特徴で、どこにでもありそうな普遍性を持ちつつ、このモデルにしかない特徴を備えています」
素材、構造、デザインが高い次元で融合したTEEは、高いフレキシビリティを生みました。その特徴を最大限に活用したのが「TEE Kitchen」。コミュニケーションスペースとして、アフターコロナのオフィスニーズから生まれたものです。「システムキッチンを作るわけではなく、人と人が交わる機能を空間に提供するツールとしてデザインしました」と、田渕さんは説明します。さらに、アルミニウムがリサイクル可能な環境配慮素材であることは、これからの時代において強みになります。⼤量生産、大量消費によるものづくりが疑問視される現代では、作って終わりではなく、その後も素材として何度でも活用できることは重要な選択要素です。表層的なデザインだけではなく、構造的にも無駄をそぎ落としたミニマルなテーブルは、デザイン性だけでなく現代の社会需要にも応えるシリーズへと展開を広げています。
by interiorsのプロジェクトは現在、大城 健作(おおしろ けんさく)や武内 経至(たけうち けいじ)などのデザイナーも加わり、さまざまなコラボレーションを展開しています。プロダクトが世の中に流通するには製造工程や仕様などの詳細に加え、価格や流通など協議することがたくさんあります。工場とのやりとりなどを含めたとりまとめ役を担うのが、株式会社インテリアズの商品部。磯飛さんは現在の生産体制について「考える人、作る人、売る人が、それぞれ独立した立場で自分の仕事を全うするフラットな関係」と表現します。こうして生まれたタイムレスな家具たちは、世界のクリエイターも刺激していきます。印象的なエピソードを田渕さんが話してくれました。
「以前、スペインの『MUT(ムット)』というデザイナーが“TEEに合う椅子をデザインした”といって、東京のショールームに直接持ち込んできてくれたんです。そんなことは初めてでしたが、デザインが言語として機能しているのを実感してうれしかったですね。しかも、その作品は現在by interiorsのラインアップとして生産されているんですから、クリエイターとしてこれほどすばらしい縁はないと思います」
最近では、プロユースだけでなく個人のオーダーも増えてきているといいます。「もともと汎用性が高いデザインでしたが、コロナ以降その傾向は強まっている」と磯飛さん。書斎のデスクをオーダーされたユーザーがこどもたちの勉強机、ダイニングテーブルと追加でオーダーすることもあるそうです。また、「ミラノサローネ国際家具見本市」とともに開催されるデザインウィークでの展示では、意外にもアメリカのブティックや企業からの反応があり、2019年にはニューヨークに支社も設立しました。その背景について磯飛さんは「アップルなどITテックがアメリカのインテリアデザインにおけるトレンドの流れを変え、そのムードに合致したのではないか」と話します。汎用性が高く、インテリアに連続性を持たせることができるプロダクトは、多様な価値観が共存する街でこそ存在感を発揮することでしょう。時間や場所を超越して心地よい体験を提供するby interiorsのプロダクト。自宅やオフィスという空間やインテリアの在り方について、改めて見つめ直すきっかけを与えてくれました。
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定休日:土・日曜日・祝日
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