心地良い未来に触れる
MAISON SHIRO
心地良い未来に触れる
MAISON SHIRO

コスメティックブランド「SHIRO」が手掛ける一棟貸しの宿泊施設「MAISON SHIRO」。建設業界の常識を覆す「森の都合」に合わせた設計は、社会の課題に対する潔いスタンスを鮮やかに浮かび上がらせています。陽の光がたっぷりと注ぐ心地良い空間をはじめ、香りの原料を蒸留するラボラトリー、自然素材による蒸留水のロウリュが気持ち良いサウナなど、SHIROの考える“心地良い未来”を堪能できるメゾンです。

胸を張って家に持って帰りたい

「自分たちが本当に毎日使いたいものをつくること」。ブランドの姿勢について、代表取締役会長/ブランドプロデューサーの今井 浩恵(いまい ひろえ)さんは真っ直ぐに目を見て話します。企業の歩みは、生活雑貨や化粧品のOEM事業からスタートしますが、2003年に長男を出産したことで「化粧品ビジネスの“常識”に疑問を感じた」と今井さんは続けます。それは、水の中に数滴だけの成分を垂らしたものを「自分が本当に欲しいと思えるか?」ということ。業界の都合に合わせてビジネスをするだけではなく、胸を張って家に持ち帰って、自分の家族や子どもに使ってもらえる製品をつくりたい。そんな想いから、冒頭の「自分たちが本当に毎日使いたいものをつくること」を目指してOEM事業から撤退し、2009年にシロの前身となるコスメティックブランド「LAUREL(ローレル)」を立ちあげます。その後、ブランド名を「shiro」に変更し、さらに2019年には世界に通用するブランドを目指して現在の大文字の「SHIRO」へとリブランディングしました。

常識を疑い、自分なりの筋を通す

今井さんの目指すものづくりは、一貫しています。それは「現地現物」をモットーに自ら生産地へ赴き、生産者と会い、直接言葉を交わすこと。そして、素材の良さを最大限に引き出し、シンプルに世の中へ送り出す。この「Simply Simple」という姿勢は、2023年にオープンした北海道砂川市にある製造拠点「みんなの工場」にも通じます。創業地への感謝も込めて地域に貢献できる施設にするべく、小学校跡地にショップとカフェなどを併設した新工場を建設。製品の製造プロセスのすべてをオープンにし、ありのままを伝えています。みんなの工場と並行してMAISON SHIROに取り組んでいた今井さんは、商業施設にテナントとして入るだけではなく、初めて建築と向き合ったことで建築業界の“常識”に疑問を感じました。たくさんの木材を使うのに、誰もそこに使われている木がどんな森で育ったのか、誰が森に入って木を切り出しているのか何も知らない。現地現物をモットーとするSHIROの工場が、建材カタログや模型だけで建築を進めて良いのか? このプロジェクトと新型コロナウィルスによるパンデミックをきっかけに、今井さんは「SHIROが目指すべき未来」について考え直すことになります。

出会いから生まれたプロジェクト

コロナ禍に今井さんがワーケーションで訪れたのが北海道夕張郡の長沼町。この場所で、「MAOIQ(マオイク)」というバケーションハウスを運営する武隈 洋輔(たけくま ようすけ)さんとの出会いをきっかけに、ここでSHIROの暮らしを表現した滞在空間を実現できないかと考え始めます。さらに、知人に紹介されて淡路島の「ISLAND LIVING(アイランドリビング)」を訪れ、インテリアデザイン事務所「DRAWERS」の小倉 寛之(おぐら ひろゆき)さんによる空間設計に感銘を受けます。「デザインが良いだけの宿泊施設はたくさんあるけど、ここにはちゃんとすてきな暮らしをしている人がつくった空間だなと感じました。“ここを設計した人と一緒にSHIROの空間をつくりたい”と思ったのを覚えています」と、当時を振り返ります。「みんなの工場」のプロジェクトマネジャーを務めた高山 泉(たかやま いずみ)さんも加わることで、SHIROらしい宿泊施設をつくるプロジェクトは加速しました。まず、みんなで森に入って「目指すべき未来」と、それによって解決できる林業や建築の課題について話し合うことから始めます。テーマは「森の都合に合わせた建物づくり」。社会や未来、自分たちの暮らしへの想いが結実したプロジェクトがスタートしました。

森の都合に合わせた建物づくり

MAISON SHIROで使われているほとんどの木材は、建材として伐られたり輸入されたりした木材ではなく、森を活かすために伐られた間伐材でつくられています。壁の裏側まで北海道の森と繋がる“意味のある素材”といえます。当然、効率ではなく森の都合を優先した進め方には多くの協力者が必要でした。「建築に関して素人ならではの発想だったので、本当にたくさんの方に力を借り、そのおかげでお互いにとって学びの多い機会になりました」と、当時を振り返ります。

「実際に森に入って間伐にも立ち会い、50年かけて育った木の存在感とその行く末をリアルに感じることができました。正直、化粧品よりも社会に与える影響が大きいと実感したのです。社会に必要な建物が隅々まで行き渡ったいま、効率や価格を求めるだけでは立ち行かなくなるのがよくわかります。ただ、森の都合をSDGsやエシカルだと押しつけるつもりは毛頭ありません。ユーザーは純粋に心地良さや快適さを堪能してほしい。ただ、提供する私たちは自分たちの疑問に真っ正面から向き合い、誠実に応えていく必要があるはずです。それは製品であっても空間であっても変わりません」

効率を求める“規格”から無駄が出る

“森の都合”を象徴するデザインが、広いLDK空間を支える柱。2本の木で梁を支えるような構造になっています。これは、切り出した間伐材が“図面や構造の都合”より細かったことで生まれた独特の表情で、乾燥による“割れ”も構造や強度に問題ないためそのまま使われています。こうした視点で室内を観察していると、細部まで実によく工夫されているのがわかります。例えば床は「みんなの工場」で余った木材を活用。セン、ハン、サクラの順に明るい素材からグラデーションで表情を出しています。一見、無垢な表情がデリケートな印象を与えますが、ホワイトオイルを塗布することで汚れから保護するなど、使い勝手は快適。サウナのベンチは、よく見ると木の幅が不揃いなことに気づきます。角材を切り出すことで生まれた端材は、敷地の囲いやベッドサイドのナイトテーブルなどにも活用されていました。規格優先の素っ気ない空間ではなく、知恵と工夫で無駄な負担を減らした空間には、昔から日本に伝わる生活の知恵にも通ずるものを感じます。

SHIROの気配を感じる暮らし

西側に大きくとられた窓にはカーテンがなく、まだ初々しいハーブガーデン越しに差し込む西陽が優しく室内を照らします。今井さんがセレクトした書籍を眺めたり、少し仕事をしたりしていると、やがて日が暮れて札幌の夜景が輝きだしました。コーヒーを淹れてベランダで一息したら、真っ白なバスタブに浸かり「SHIRO PERFUME」のアメニティで心地良い香りに包まれます。サウナはすぐ隣の別棟にあり、お楽しみは併設された「シロラボラトリー」で蒸留されたエッセンシャルウォーターのロウリュ。トドマツなど季節に合わせて採れたての自然素材を湧水で蒸留したものです。しっかり汗を流したら、深さ90cmの水風呂でしっかりと熱を冷まし、デッキのデイベッドで外気浴をしながら整えます。夜空には夏の星座が瞬き、あたりは初夏の心地良い空気に包まれました。リラックスしたらいよいよディナータイム。装備の充実したキッチンで料理をするのも魅力的ですが、今回は近隣のレストランを紹介していただきました。

近隣との心地よい関係

MAISON SHIROから車で10分ほどの場所にある「Caleidoscopio(カレイドスコーピオ)」は、まるでおとぎ話に出てくるようなすてきな庭のあるイタリア料理店。オーナーシェフの安部 康裕(あべ やすひろ)さんは、イタリア各地で郷土料理を学び、食材の魅力を巧みに引き出します。

「30歳前後の頃に3年間ほどイタリアで料理を学びました。複雑に入り交じった地方の伝統料理はまるで万華鏡のようで、感動したのを覚えています。地方料理の魅力に目覚めた私はイタリア各地を訪れては食べ歩き、いろいろなレストランで働きながらたくさんの料理に出合いました。日本では“イタリアン”とひとくくりにカテゴライズされがちですが、それぞれの伝統料理に歴史や物語があり、実に奥深い魅力を持っていることに気づかされたのです。今回のコースではフィレンツェ地方のリボッリータ(黒キャベツの煮込みスープ)やプーリア地方のオレキエッテ(耳たぶを意味するパスタ)、ミラノ地方のオッソブーコ(仔牛の煮込みとリゾット)など、地方の特徴的な料理をご用意しました。パスタは生パスタを基本に、素材は北海道の野菜や魚介を使っています。モダンなイタリアンとはひと味違うイタリア料理を自然のなかでゆっくりとお楽しみください」

日常の延長線上にある未来

朝、目が覚めると室内には自然の光が満ちていて、なんとも清々しい気持ちになります。歯を磨いて顔を洗い、SHIROの化粧水や美容液を使って丁寧に身支度を整える。朝食は新鮮な卵とソーセージを焼いて、ゆっくりコーヒーを淹れる。焼きたてのパンにバターを塗りながらぼんやり朝陽に包まれていると、身体が目覚めていくのを感じます。まるでここで暮らしているかのように自然に始まる一日に、今井さんが語る「SHIROが目指すべき未来」の気配を感じるのです。そこは日常の延長にある未来。だけどいつもより少し心地良くて、なんだかちょっと優しい気分になる。そんな、手の届きそうな未来に思えます。今後はレストランの運営なども始まるようで、庭の植物が育つ頃にはどんな景色が広がっているのでしょう。MAISON SHIROは、未来が少し楽しみになる場所でした。

MAISON SHIRO

〒069-1316 北海道夕張郡長沼町加賀団体

セゾン・アメリカン・エキスプレス®・カードが
ご利用いただけます。
https://maisonshiro.jp

Caleidoscopio

〒069-1317 北海道夕張郡長沼町東6線北3
Tel. 090-9432-5484

セゾン・アメリカン・エキスプレス®・カードが
ご利用いただけます。
https://www.caleidoscopio2021.com

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