畑から広がる大きな縁の輪
ENOWA YUFUIN
畑から広がる大きな縁の輪
ENOWA YUFUIN

ラグジュアリーを再定義して誕生したボタニカルリトリート「ENOWA YUFUIN」。滞在の主役ともいえる体験がレストラン「JIMGU(ジング)」で繰り広げられる野菜中心の料理たち。命が巡る「FARM-DRIVEN」を実践する食体験は、ここにしかない驚きと発見に満ちています。滔々と湧き出す掛け流しの温泉に癒やされ、旬の食材からエネルギーを頂く。ここは珠玉のリトリートです。

日本屈指の湯処「湯布院」

日本で温泉の源泉本数が最も多い大分県。そのほぼ中央部に位置する由布院は、毎分約38,600リットルもの豊富な湯量に恵まれ、約900もある源泉の67%が「単純温泉」といわれています。癖のない柔らかな湯質はこどもからお年寄り、そして温泉に馴染みのないインバウンドの観光客にも人気です。朝霧に包まれる幻想的な風景や、金鱗湖に映る山々の姿が訪れる人の心を和ませ、「由布院駅」から伸びる湯の坪街道沿いには、古き良き温泉街の風情が息づいています。「山荘無量塔」「亀の井別荘」「由布院 玉の湯」などの名旅館をはじめとする老舗で知られる湯処ですが、2023年に誕生した「ENOWA YUFUIN(以下、ENOWA)」も注目を集めています。

いま、豊かさについて考える

ENOWAは「ボタニカルリトリート」をテーマに、豊かさやラグジュアリーの意味を再定義した宿泊施設。2023年に開業しました。約44,000㎡もの敷地には全室掛け流しの温泉を備えた19室のゲストルーム、丘の上のサウナ、季節のハーブや果物が育つインドアガーデンから続くレストランなどが、高低差を活かしたランドスケープにレイアウトされています。ときおり野生の鹿がおりてくるガーデンには豊富な植栽が瑞々しく輝き、随所に自然の息吹を感じさせます。水や空気、光や風がゆっくりと循環している小さな生態系は、まるで山から湧き出るエネルギーを湛えているようです。

自然を取り込んだ心地良いヴィラ

高台に配置されたヴィラタイプのゲストルームは全部で10室。リビングエリアとベッドルームが繋がった広々とした空間には、木や石、土壁などの天然素材がふんだんに使われ、高い天井とあいまって実に開放的です。窓の外には由布岳が四季折々の表情を見せ、街並みの向こう側には「阿蘇くじゅう国立公園」の眺望が楽しめます。源泉掛け流しの温泉で満たされた露天風呂と、その先にはインフィニティプールが繋がり、水盤のように陽光を煌めかせていました。とろりとした湯にしばし浸かって目を瞑ると、柔らかな風と湧き出る湯の音に心と体がほぐれていきます。湯上がりはビールを片手に外気浴するもよし、ディナーまでベッドでしばし微睡むのも至福のひとときです。

さまざまな縁が紡いだENOWA

最大の特徴はシェフとスタッフが自ら手掛けるファーム。シェフのタシ・ジャムツォさんは、チベットの出身で、高校時代にアメリカに渡り、NYのレストランで料理人としての腕を磨きます。その後、FARM TO TABLEの元祖ともいえる「ブルー・ヒル・アット・ストーン・バーンズ」で副調理長を務めました。日本の文化に関心があったタシさんは2018年に一度来日し、「酒蔵などをめぐりながら、日本人の礼儀正しさや感性に興味を持った」と話します。その後、縁あってENOWAと出合い、その思想に共鳴。開業の2年前に日本へ移住し、畑の土作りから手掛けました。現在はファームを中心に「立命館アジア太平洋大学(APU)」との連携や近隣の生産者とも交流を重ねながら、自然の恵みに新たな価値を見出すことに情熱を注いでいます。

畑がその日のメニューを決める

タシさんの一日は、朝ファームへ出かけることから始まります。その日の食べ頃だけを摘み取り、素材からメニューを考える。大地から最短距離で提供される一皿は、究極の食体験です。

「この畑ではおよそ250品目もの野菜が育てられています。米殻を撒いて雑草を減らしたり、料理に出したヒオウギガイの殻を砕いて粉にして畑にまいたり、地域の生産者にも協力してもらいながら工夫して畑を育てています。有機栽培や無農薬を学んでいくと、自然の力と昔の人の知恵に感心します。もちろん料理に野菜しか出さないわけではなく、肉や魚介が与えてくれる栄養も大切です。ENOWAではアローカナという青い卵を産む鶏と紅葉鶏という2種類の鶏を育てて、採れたての卵を朝食に出しています。バランスの取れたヘルシーな食事は何よりも贅沢で、豊かさを感じる瞬間ではないでしょうか。ここで育った野菜はどれも味が濃くて瑞々しい。色味や形、味やテクスチャーもさまざまで、体に優しいのにとてもたくさんのエネルギーを与えてくれます。野菜を好きではなかったこどもが“おいしい!”と笑顔を見せてくれたときはうれしいですね」

毎日が収穫祭

ディナーのプロローグはインドアガーデンから始まります。パセリやディル、ブロッコリーやケールが植えられたガーデンで頂くのは、キャベツのチップスと2種類のスナック。人参のムースやサツマイモのナゲットは自然な甘さが優しく、酸味のきいたシェフ特製のディップに合わせて頂くと実に美味。このディップが絶品で、ラボッシュという薄いクラッカーのようなパンと合わせるとアペリティフにもぴったりです。柔らかな日差しが差し込む空間で体験するENOWAの物語に心が躍ります。

続いて案内されるのがレストラン「JIMGU」。中央には森のような植栽が植わり、周囲をボックス席が八角形に囲みます。「帰ってくる場所」「戻ってくる場所」を意味するチベット語で、自然の営みや命の循環を感じさせます。

それは、地球の物語

コースの一皿目は、自家製の干し柿の甘さとヒオウギ貝のミネラル感が優しい前菜。ディルとクリームチーズの酸味がシャンパンの爽やかな香りとよく合います。ファームから届いた2種類のビーツにイチゴとチコリー、トマト、ピスタチオがのった二皿目は、バルサミコの効いたソースの酸味がたまりません。焼きたてのブリオッシュと一緒に頂くと、まるでジャムのような濃厚さ。続いて塩漬けにしたブリとグリーンのソースのコントラストが鮮やかな一品は、リンゴとセロリ、大根、シトロンなどの五味が一皿に凝縮されています。かき菜や水菜と一緒に大分県産のイカをバジルのオイルでまとめた食感が新鮮な一皿、ちりめんキャベツの上にハーブのエスプーマ(泡)にヒラメとカボチャにブールブランソースを合わせた一皿など、野菜と魚介のマリアージュが続きます。

国際色豊かな厨房

そして、シグネチャープレートの「野菜のブーケ」は4種のソースと旬の野菜たちが冬の名残と春の香りを運びます。厨房にお邪魔すると、壁には一面のハーブやスパイスが並んでいます。「インドネシアやアジア各国のスタッフから刺激をもらいます。スパイスはもっと勉強していろいろな料理を吸収したいですね」と、タシさん。4種のソースと10種類近い野菜を美しく盛り付ける様子は、アートそのもの。野菜のブーケがあっという間に絵画のように美しい一皿に仕上がります。メインには別府エリアの牧場で放牧されていたグラスフェドビーフ。モモとヒレにそれぞれ野菜のピューレが組み合わさり、滋味を味わう喜びに満たされます。すべての料理にワインがペアリングされ、野菜料理とお酒の組み合わせには新鮮な驚きが満ちていました。

家族で楽しめるラグジュアリー

翌朝目が覚めると、体も軽く胃腸もすっきり。ニューヨークのフーディーが通う「The Dutch」をイメージしたボリューム満点の朝食が食欲をそそります。カボチャのスープやケールを混ぜたスコーン、朝採れ卵のサニーサイドアップやオムレツなど、一つひとつの食材を丁寧に噛み締めます。総支配人の水岡 裕晶(みずおか ひろあき)さんに、ENOWAの魅力についてうかがいました。

「ENOWAではどのようなお客様にも寛いでいただけるように、かしこまった接客よりもリラックスしていただけるようなおもてなしを心がけております。スタッフはもちろん、シェフも常にお客様が寛ぐことをとても大切にしており、食を中心に心と体を癒やしていただける宿になることを目指してきました。ゲストの3割はシェフと一緒にファームへ出かけ、“Farm Driven(農場主導)”の理念に関心を持ってくださいます。普段は12歳以下のお子様はお泊まりいただけないのですが、ファミリーを対象とした食育イベント『FAMILY HARVEST STAY』を開催したところ、大変好評をいただいております。これまで本当に奇跡のようなご縁に恵まれてきました。今後もすばらしい縁の和が広がっていくように、お客様に癒やしと寛ぎを提供していきたいと思います」

“豊かさ”の新しい受け皿

豊かな自然を引き込んだシンプルで無駄のない空間、生態系を凝縮したような美しい庭、命の循環をテーマに独創的なシェフの腕が光る食体験など、これまでのラグジュアリーとは一線を画すENOWAの試み。2024年には「ミシュランキー」ホテルセレクションで「2ミシュランキー」を獲得。2025年3月からはルレ・エ・シャトーにも加盟することになりました。開業から間もなくの快挙に、業界からの期待がうかがえます。いま、ラグジュアリーツーリズムは過去に類をみない選択肢と可能性に満ちています。オーセンティックな格式も、アクティブでエネルギッシュなライフスタイルも、持続可能な心地良さも、それぞれの伝統や風土を巧みに織り交ぜながら成熟しているように感じます。2025年の6月でようやく2周年を迎えるENOWAのアプローチは、また豊かさの新しい受け皿として進化していくことでしょう。

ENOWA YUFUIN

大分県由布市湯布院町川上 丸尾544
Tel. フロント 0977-28-8310
Tel. 予約センター 0120-770-655(受付時間 9:00〜17:45)
Email. enowa@jpn-rsc.co.jp

セゾン・アメリカン・エキスプレス®・カードが
ご利用いただけます。
https://enowa-yufuin.jp/

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