究極の天ぷら料理を追い求める
麻布十番 真田
究極の天ぷら料理を追い求める
麻布十番 真田

神戸の「天ぷら料理 花歩(かほ)」は、開店からわずか4年にして関西全域から食通が通うという人気店。その料理長が新たな試みとして、東京に「麻布十番 真田」をオープンしました。当初は紹介制でスタートしたという経緯もあり、限られたゲストのためだけに繰り広げられる料理の数々は五感で楽しめる驚きに満ちています。地元神戸の食材はもとより、全国の旬の幸をベストな状態で目の前のお客様に届けたい。その一心で究極の天ぷらを求めて試行錯誤する姿勢は、芸術家のように純粋でした。

江戸時代のスナック

鉄砲の伝来とともにポルトガルから伝わったとされる天ぷら。今では日本を代表する料理として海外に広まっていますが、南蛮料理として伝わった「長崎天ぷら」が元祖とされています。今の天ぷらよりも味のついたフリッターのような料理だったようで、卵だけで小麦粉を溶き、酒や砂糖、塩などの調味料を混ぜた衣を油で揚げていました。江戸時代になると、魚河岸の魚介類をごま油で揚げた「ゴマ揚げ」が庶民の間に浸透します。火災を防止するために、火を使う料理は屋台で商っていたため、職人や町人の小腹を癒やす手軽なスナックとして人気になります。その後、京都のお茶屋に道具一式を持ち込む「お座敷天ぷら」や天ぷら料理の専門店などが登場し、それらが独自の料理を追求することで現代まで進化してきました。

神戸の「天ぷら料理 花歩」を開業

「天ぷら料理は日本料理の一部なので、修業してきた背景や素材に対する考え方など、料理観が明確に出るように思います」と話すのは、「麻布十番 真田」の真田 篤史(さなだ あつし)さん。途中プロボクサーにもなったという異色の経歴の持ち主です。幼少の頃から料理が好きで、食べた人が「おいしい」と喜ぶ顔を見たいと料理人を目指しました。出身地でもある神戸の「ホテルオークラ」で料理の修行を積み、「日本料理 山里」、「寿し はま磯」、「天ぷら にしき」とそれぞれの和食を経験したことで、「天ぷらほど素材をおいしくできる料理はない」と自身の道を定めます。その思いが結実したのが神戸の「天ぷら料理 花歩(かほ)」。「東京にはいろいろな天ぷら屋がありますが、関西、特に神戸はまだまだ天ぷら屋が少ないんです。オーナーとの出会いもあり、関西の人に本当においしい天ぷら料理をお出ししたいと思いました」と、当時を振り返ります。

たった6席のわがまま

カウンター12席と二つの個室を構える花歩は、2019年の開業間もなくコロナ禍に見舞われるも、近隣の食通が通い詰める名店へと成長します。開業から4年で「麻布十番 真田」をスタートさせた狙いは、どのようなところにあるのでしょうか。その想いについてうかがいました。

「花歩は本当にお客様に良くしていただいて、大変な時期でもなんとか軌道に乗せることができました。私は地元が神戸ですから、地場のおいしいものはよくわかりますし、周辺の生産者の皆様とも直接お話しをさせていただいています。花歩の営業を通して、その魅力を東京のお客様にも伝えたいという思いが強くなり、新しい挑戦として『麻布十番 真田』を立ちあげたのです。店名に自分の名前を使っているとおり、ここでは素材からお酒、音楽や空間に至るまで、一貫して自分のわがままを通すお店にしています。新天地の東京で、改めて自分の目が届く範囲でお客様に向き合いたかったんです。現代アートやワインとの組み合わせなど、誰もやってこなかったことに挑戦していきたいです。花歩と両立させるため営業日が限られてしまい、当初は紹介制でのご案内だったのですが、お客様からのアドバイスもあり現在は予約制でお受けできるようになりました。まだまだ突き詰めたいことはたくさんありますが、焦らずじっくりと育てていきたいですね」

旬の素材で季節を詠む

人生を「花と歩く」という想いで「花歩」と名付けたように、季節の旬に寄り添うのが真田さんの料理。「麻布十番 真田」もメニューは旬の素材を使ったお任せのコース一本で、料理と天ぷらを合わせて12〜13品で構成されます。こだわりは「素材」と「出汁」。お店には神戸ビーフを中心に、全国の産地からみずみずしい食材が続々と届きます。良い食材との出合いは自ら生産者の元を訪ね歩くだけでなく、料理人の仲間やお客様から教えてもらうことも多いといいます。「おいしい素材は何も手を加えず、水分や温度を変えるだけでおいしくなる」と話すとおり、塩や醤油をほとんど使いません。代わりに素材の状態に合わせて変えるのが、和食の基本でもあるお出汁。まぐろ節や鰹節など、その日に出す素材に合わせて数種類のお出汁を使い分けます。素材の旨味を閉じ込めたスープをいただくと、季節の滋味が広がります。さっそく、コースの一部をご紹介しましょう。

生よりもしっとりした茹で蟹

「蟹が好きな人が食べたい蟹」を具現化したような一皿は、北海道産の毛ガニを締めて蒸しただけのシンプルな料理。しかし、70℃で2時間、じっくりと蒸らされた蟹は生よりもしっとりとしているのに驚きます。「水分が漏れず、蒸気と一緒に旨味が身に戻ってくるため、生でそのまま食べるよりもしっとり感じるんです」と、真田さん。ほぐしすぎず、甲羅のなかにみっちりと詰まった身は、下段に味噌を加えることで味わいに深みが増します。

「自分でこれだけの身を食べようと思うと無言でほぐし続けますよね(笑)。素材によって天ぷらにするときもありますが、コースにはできるだけ蟹を入れるようにしています」

サッパリといただく神戸ビーフのしゃぶしゃぶ

十八番といえる神戸ビーフは、しっかりと引いた鰹出汁でいただきます。海外にもファンが多いWAGYUですが、とりわけ人気を集めるブランドが神戸ビーフです。その理由のひとつに、脂の融点が低いため意外とサッパリ食べられるという特徴があります。しゃぶしゃぶでも同様で、脂がほどよくお出汁に溶けて混ざり、胃袋にすっと収まります。花山椒の香りがほんのりと香り、初めて食べるのにどこかホッとする味です。

「おいしい記憶とかけ離れていないのも大切なポイントなんです。こちらも手に入る素材によって、ヘレ(ヒレ)ならステーキにしたり、他の部位ではもちろん天ぷらにもします」

油を自在に操る芸術的な天ぷら

そしてメインの天ぷらは、特製の衣をまとって三重県産の太白ごま油で揚げられます。車海老の天ぷらを2本出されたのですが、それぞれ揚げている時間が違うことに気付きます。「天ぷらって揚げ物ではなく、衣の中で風味を閉じ込める蒸し料理なんです。低い温度でゆっくりと火を通せば旨味がしっかりとまわってしっとりするし、高い温度でからりと揚げれば、中身はレアでサッパリと仕上がるんです。どうです、おもしろいでしょう?」と、話す様子はどこかうれしそうです。

先ほどまで元気に泳いでいた稚鮎は、衣を薄くすることでゆっくりと時間をかけて火を通します。カリッと軽い口当たりに、ワタの苦みがしっかり効いています。「焼くように揚げた」と言うとおり、脂っぽさを全く感じさせない繊細な技術に思わず唸ってしまいます。

3時間揚げたサツマイモ

そして特筆すべきはサツマイモ「紅はるか」の天ぷら。デンプンが糖に変わる80〜100℃の間で油の温度を調節しながら、およそ3時間も揚げるといいます。専用の三口コンロを自在に操り、最後は180℃でパリッと揚げることでスイーツのような逸品に仕上がるそうです。スナックのように手で持って食べると、皮は飴のような食感で、なかはとろけるほど柔らかくなっていました。

「お客様に“こんなの食べたことない!”ってビックリしてほしいです。皮をウロコ状に剥いているのも、味と食感のためなんです。自分で食べてみると、ちょっと皮が多い気がして、ちょうど良いバランスを見つけるのに時間がかかりましたね」

完成することのない料理

『池波正太郎の銀座日記』などにもたびたび登場する天ぷら。いかにも食通の通う店というイメージで、憧れを抱きつつも近寄りがたい印象を持っていました。しかし、真田さんのお仕事を間近に見ていると、油を自在に使った繊細で高度な料理の向こう側に、一途においしさを求める料理人の心が見えてきます。〆の鯛飯茶漬けを頂きながら今後についてうかがうと、「食べた人の喜ぶ顔が見たい一心でここまで来ました。東京を起点にたくさんの人に天ぷらのおいしさや神戸の魅力について知ってもらえたらうれしい」と、目を輝かせます。まるで精緻な工芸品のように驚きに満ちた天ぷら料理。目の前のひと皿を極めようとする料理人の想いをじっくり味わってみてはいかがでしょうか。

<ご優待>

<内容>
「麻布十番 真田」をご予約の際に「セゾン・アメリカン・エキスプレス®・カードの優待を希望」とお伝え頂いたお客様に、特別なお土産をお渡しいたします。営業日やご予約などの詳細については、下記「麻布十番 真田」まで直接お問い合わせください。

<ご予約対象期間>
2023年9月30日(土)まで

麻布十番 真田

〒106-0045 東京都港区麻布十番2-6-2 THE CITY 麻布十番 AVANTI 2F
Tel. 03-6231-1756(予約受付時間 10:00-23:00)
営業曜日:月〜土曜日
営業時間:17:30〜、20:45〜の二部制
料  金:コースのみ(ドリンク含む)55,000円税込・サ10%別

天ぷら料理 花歩

〒650-0004 兵庫県神戸市中央区中山手通1-25-6
Tel. 078-231-5555
営業時間:18:00〜23:00

セゾン・アメリカン・エキスプレス®・カードが
ご利用いただけます。
https://tempura-kaho.jp/

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