上質な海の旅を再定義したMSCグループの新しいブランド「Explora Journeys(エクスプローラ ジャーニー)」。現在運航中のエクスプローラⅠに続き、2024年9月より「エクスプローラⅡ」が就航。ラグジュアリーツーリズムに新しい旅のスタイルを提案するブランドの魅力は、どのようなところにあるのでしょうか。イタリアのチヴィタヴェッキアで開催された命名式の様子や最新の豪華客船内を2回に分けてご紹介。前編では、「エクスプローラⅡ」の命名式の様子や華やかなセレモニーの様子をお届けします。
創業一族経営による世界最大のクルーズライン「MSCクルーズ」は1988年にスイスのジュネーブを本社として誕生しました。その後、世界中の海へと順調に航路を延ばし、2027年には25隻ものクルーズ船を保有する予定です。日本では地中海・エーゲ海へのFly & Cruiseが人気で、2023年からは大型客船「MSCベリッシマ」が日本発着のクルーズを実施したことでも注目を集めました。リラックスしたムードでゲストを迎えながらも、洗練されたヨーロピアンスタイルのサービスが好評で、初めてのクルーズに選ばれることも多いブランドです。
MSCグループは世界有数の複合企業体で、海運輸送を手掛ける「MSC(Mediterranean Shipping Company S.A.)」では、現在800隻以上のコンテナ船を世界中の海で運航しています。その輸送能力は世界全体の海運量の20%にも及び、年間平均約2,250万個のコンテナを輸送、寄港地の数は世界で520ヵ所にのぼります。オーナーシップは創業者であるジャンルイジ・アポンテ(Gianluigi Aponte)率いるアポンテファミリー。その一族でMSCグループのCFOを務めるアレクサ・アポンテ・ヴァーゴと、その夫でありMSCグループのクルーズ事業および乗客部門のエグゼクティブチェアマンであるピエルフランチェスコ・ヴァーゴによって新しく立ち上がったブランドが「エクスプローラ ジャーニー」です。
旅慣れた旅行者、とりわけ富裕層が旅行に求める体験は、刺激的な非日常体験やわかりやすい贅沢さを超え、よりパーソナルな感動やくつろぎへと変化しています。「クルーズ体験を再定義し、独自のカテゴリーを創り出すことは、私と私の家族の長年のビジョンでした」とピエルフランチェスコ氏が話すように、エクスプローラ ジャーニーのコンセプトは彼らが望むハイエンドなライフスタイルや個人的な旅行への想いにインスピレーションを得ています。「結局のところ、時間こそが究極の贅沢なのです」という言葉は、まさにラグジュアリーツーリズムの未来を示唆しています。
その舞台となる客船「エクスプローラ」シリーズは2028年までに6隻の運航が予定され、「エクスプローラⅠ」は2023年に就航しました。2隻目となる「エクスプローラⅡ」が、2024年9月16日から始まる処女航海を前に命名式を開催。ラグジュアリークルーズの新しい時代が幕を開ける瞬間をご紹介しましょう。
命名式が開催されたのは、イタリアの首都ローマから北東におよそ80kmの場所にある歴史ある港町「チビタベッキア(Civitavecchia)」。1615年に「慶長遣欧使節団」を率いる支倉 常長(はせくら つねなが)が初めて上陸した港で、現在はクルーズターミナルとして大型客船が何隻も停泊しています。これらのクルーズ船の建造では伝統的にさまざまな儀式が執り行われます。最初の鋼材が切り出され、建造の開始を祝う「スチール・カッティング」、船の最も重要な背骨にあたるキール(竜骨/りゅうこつ)に特別なコインを設置する「キール・レイイング/コインセレモニー」など、いずれも航海の安全を祈って行われるもの。そして数々のセレモニーのなかでも最初の航海の前に行われるもっとも神聖なイベントが命名式です。ゴッドマザーと呼ばれる名付け親が正式に命名し、船首にシャンパンボトルをぶつけて船出を祝福します。
ゴッドマザーは時に有名なアーティストなどが選ばれ、華やかなセレモニーを盛り上げます。その様な潮流の中で、「Ocean State of Mind(海とのつながり)」という新しい価値観を掲げるエクスプローラ ジャーニーが選んだのは、イタリアの著名な海洋環境活動家のロサルバ・ジューニ氏。1985年に創設された無党派環境保護団体で、海洋環境保護を目的としたマレヴィーヴォ財団の創設者兼社長です。
「エクスプローラⅡの名付け親に任命されたことはこの上ない光栄です。持続可能な方法で世界を体験するという我々共通の目的を反映しており、この役目は私にとって特別に重要な意味を持っています。エクスプローラ ジャーニーとMSCグループによる、貴重な海洋生態系のさらなる保護に向けた文化の促進・推進を支援できることをうれしく思います。我々の未来は海の健全性と結びついており、それは我々の選択にかかっています。気候危機は明らかな警告で、我々の時間は限られています。生態学的移行は今すぐに始める必要があり、明日ではすでに手遅れかもしれません」
セレモニーはイタリアの女優でタレントのロレラ・クッカリーニ氏による司会で進行し、錚々たるゲストによって華やかに祝福されていきます。イタリアの副首相兼外務大臣アントニオ・タイヤーニ氏、チビタベッキアの市長マルコ・ピエンディベーネ氏などの政治家から、造船会社「フィンカンティエリ」のCEOピエロベルト・フォルジエロ氏、アカデミー賞を受賞した映画監督であり脚本家のジュゼッペ・トルナトーレ氏などが祝辞を述べました。英国のポップシンガーのトニー・ハドリー氏によるライブやアーティストによるパフォーマンスを挟みながらセレモニーは最高潮を迎えます。MSCグループからは創設者兼グループ会長のジャンルイジ・アポンテを含むMSCグループ幹部、そしてオフィサー(高級船員)陣による伝統的なパレードも行われ、華やかさのなかにも厳粛で神聖な雰囲気が漂う独特のムードに包まれていました。最後は壇上のジューニ氏によって、船首でボトルを割るための象徴的なリボンカットが行われ、命名式は無事にフィナーレを迎えます。式の後にはガラディナーや夜空を彩る大規模なドローンショーなどが記念すべき日に華を添え、館内のバーやラウンジでは夜更けまでグラスを傾ける人々で賑わいました。
命名式に先駆けて、エクスプローラ ジャーニーの新社長にアナ・ナッシュ氏が任命されました。ナッシュ氏はアマンリゾーツに10年間の在籍期間中、マーケティングやコミュニケーションの責任者を歴任、直近ではチーフ・コマーシャル・オフィサー(CCO)としてブランドを牽引してきました。「エクスプローラ ジャーニーの成長と発展において、このような極めて重要な時期に入社できることを大変誇りに思います。ラグジュアリーな海洋旅行体験を再定義するというブランドの姿勢に感銘を受け、ヴァーゴ氏や才能あるチームと緊密に協力し、このビジョンをさらに発展させていくことを楽しみにしています。私たちは共に、世界中の目の肥えた旅行者の心に響く、忘れられない旅を創造するために努力していきます」と、決意を表します。
さらに、ナッシュ氏からはエクスプローラ ジャーニーはエクスプローラⅢのコインセレモニーと、エクスプローラⅣのスティールカッティング式が同時に行われたことも発表されました。エクスプローラⅢは2026年、エクスプローラ ジャーニーが保有する予定の残り4船中で初めてLNG(液化天然ガス)を燃料とする船になります。「エクスプローラ」シリーズは最新の環境・海洋技術を採用することで、自然環境へのインパクトを低減させながらクルーズの魅力を最大化していきます。
エクスプローラⅡの命名式を終えた翌日、改めて館内を散策しながらギャラリーで展示されている写真展をゆっくり鑑賞していました。フセイン・アーガー・ハーン王子による海中の多用な生物や環境を映し出す「MARINE ENCOUNTERS(海との出会い)」展で、命名式と同時に展示が始まったものです。MSCグループでは環境保護と人道的活動を行う独立非営利団体として「MSC財団」を運営しています。アポンテ家により設立されたもので、「一世代のうちに人と自然の間の重要なバランスを回復すること」をビジョンとしています。ハーン王子による海洋写真コレクションは、MSC財団と「フォーカス・オン・ネイチャー」のパートナーシップの一環として寄贈されたもので、海洋生物と生物多様性の保全の必要性を啓蒙し、行動を促すという共通のビジョンを反映しているのです。
エクスプローラ ジャーニーの最もユニークな点は、こうした海との共存や地球の未来に向けられたメッセージと、モダンラグジュアリーがシームレスに融合しているところにあります。ロサルバ・ジューニ氏による命名もアナ・ナッシュ氏を新しい社長に任命したことも、すべてはクルーズに留まらない、新しい世代の富裕層が抱くニーズを敏感に受け止めたブランドの姿勢であることがうかがえます。次回は、新しい時代の洋上の癒やしを体現したエクスプローラⅡの快適な滞在体験をご紹介します。
アテネから8日間かけてイスタンブールへと向かうコースです。
エーゲ海の美しいビーチを経由して古代の痕跡を辿る特別な旅はいかがでしょうか。
料金(1室) $3,780~(2名利用の場合の1名料金)※ 2024年11月20日現在
運航日 2025年4月28日~5月5日
https://icruises.jp/p/search/detail/EXJ-E120250428-007
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