ニコラ・フィアットは、フランスで第1位、世界で第3位の販売数を誇るシャンパーニュ・メゾン。ブランドが誕生したのは、創設者であるニコラ・フィアットが、アメリカ滞在中に親交を深めたケネディ家やイヴ・サン=ローランなどのセレブリティのためにシャンパーニュを造ったことがきっかけです。今回は、ニコラ・フィアットが特に力を入れている環境問題への取り組みと、すべての料理にシャンパーニュをペアリングするという新しい提案についてうかがいました。
「和食とシャンパーニュはものすごく合います。例えば、Grand Cru 2015 Blanc de Noirsは、お刺身やウニなどさまざまな海の幸と一緒に楽しんでいただきたいです。実は昨日のランチは鉄板焼きだったのですが、そのときも野菜からお肉まですべてにロゼのシャンパーニュをマリアージュしてみて、とてもすばらしいペアリングになりました。日本の食文化は旨味があるのが特徴ですが、その旨味にシャンパーニュのアロマがとてもよく合うと思うのです」
このように話すのは、来日したNicolas Feuillatte(ニコラ・フィアット)のセラーマスター(醸造最高責任者)、ギョーム・ロフィアンさんです。飲食業界関係者、および有資格者向けに東京と福岡でフラグシップシャンパーニュ「Réserve Exclusive Brut(レゼルヴ・エクスクルーシヴ ブリュット)」を含めた全6種類のテイスティングセミナーを開催し、解説しました。
高品質なブドウを使うために、ニコラ・フィアットは、シャンパーニュの大規模メゾンでは珍しい「協同組合」というビジネスモデルを採用。シャンパーニュ地方の3分の1を占める5,000を超える農家とパートナーシップを結ぶことで、常に高品質のブドウを安定的に入手することができます。さらに環境にも配慮したシャンパーニュづくりに力を入れていると言います。
「創業当初から環境配慮には力を入れていましたが、特にここ5年は深刻な環境問題に対して我々ができることはなにか、真剣に取り組んでいます。15年前は、シャンパーニュ地方にオーガニックでブドウを作る農家はわずか3軒しかありませんでした。でも今は、560軒もの農家がオーガニックでブドウを栽培し、認証も取っています。面積でいえば、およそ90ヘクタールにまで拡大しました」
オーガニックでブドウを栽培することは、農家にとって大きな負担となります。それでも挑戦してもらえるよう、ニコラ・フィアットではさまざまなサポートを行ってきました。
「まず、農家の方々がどのような点で負担を感じるのかをヒアリングしました。技術的に不安があることや生産量が減少する一方で労働時間が増えること、設備投資が必要になることなどがオーガニック栽培への移行を阻む要因であることがわかりました。そこで、ブドウ栽培や有機農業の専門家を派遣したり、もともとオーガニックを実践していた農家のノウハウを共有したりするなどの支援を行いました。その結果、雪だるま式にオーガニック栽培に取り組む農家が増えていきました」
フランスではオーガニック認証を取得するのに3年かかります。さらに、農家の金銭的な負担もあります。ニコラ・フィアットは、オーガニックで栽培されたブドウを従来のブドウよりも高く評価し、品質に見合った高い値段で買い取るなどのサポートも行いました。
「高品質なブドウを使用することに加えて、ニコラ・フィアットのDNAが感じられるシャンパーニュを作らなければなりません。ニコラ・フィアットらしさの重要なポイントは2つあります。それは、ブドウのフレッシュ感と果実味。納得がいくものができるまで、相当な時間がかかりました」
フランスの農家は、気候変動による深刻な影響を受けています。ニコラ・フィアットは、そうした農家を引き続きサポートしています。
「2024年のフランスは非常に雨が多く、オーガニックでブドウを育てている農家も大きな打撃を受けました。我々は現場に出向いて状況を視察し、協同組合として経済的な支援も行いながら農家が困難な状況でも持続的に経営できるようにサポートしています。困難な時こそ寄り添い、支援を続けることが重要なのです。私たちは農家の皆さんをファミリーだと思っています」
ブドウの収穫時期は35年前と比べて平均して約1ヵ月早まっているなど、気候変動は栽培だけでなくさまざまな影響を与えているようです。
「昔に比べて今はブドウのpHが高くなり、フレッシュ感がやや減少しています。そのため、リザーブワインの存在がこれまで以上に重要です。多くのメーカーはその年に使わなかったワインをリザーブワインに回しますが、私たちは逆に、まずリザーブワインとして使うための高品質なものを確保しています。毎年異なる条件の中でも、コンスタントに高品質なワインを作るためには、このリザーブワインが必要不可欠なのです。リザーブワインがあるからこそ、ニコラ・フィアットは安定的に高品質のシャンパーニュを提供できるのです。現在、私たちは100種類以上のリザーブワインをストックしており、その豊かなバリエーションとクオリティを誇っています」
今回はミシュラン一つ星およびミシュラングリーンスターを取得したフレンチレストランLATURE(ラチュレ)のフルコースにペアリング。すべての料理にシャンパーニュを合わせるという取り組みは新鮮な驚きを与えてくれました。
最初の一杯は「Collection Organic Extra Brut(コレクション・オーガニック エクストラ ブリュット)」からはじまります。フルーティな香りと目覚めるような甘酸っぱさが口の中に広がり、最初の一杯にぴったりのシャンパーニュ。アミューズの鹿の血を使ったマカロンとマリアージュしました。少しスパイシーな甘酸っぱい味わいが、シャンパーニュのピリッとした風味と絶妙に調和し、力強い味わいのベストマッチを楽しめました。
続いて、「戻り鰹」のグリエや4種のジビエを使ったパテの複雑な味わいに合わせたのは「Grand Cru 2015 Blanc de Noirs(グラン・クリュ ブラン・ド・ノワール 2015)」。干ばつや大雨、暑さと寒さといった気候によるコントラストがあった2015年のピノ・ノワールを使用した一本で、北と南のピノ・ノワールをブレンドしています。複雑さと奥行きを感じる特徴的なアロマは、しっかりとしたストラクチャーがフルーティなトーンと調和しています。凝縮されたフレーバーには力強さを感じる一方、フルーツの透明感も感じる一杯で、料理と合わせるたびに違う表情を楽しむことができました。
https://www.nicolas-feuillatte.com/jp/-/122-grand-cru-2015-blanc-de-noirs-3282946016094.html
メインの「北海道産エゾ鹿のモモ肉のロースト」では、セオリーであれば赤ワインを合わせるところですが、「Palmes d'Or Vintage 2008 Rosé Intense(パルム・ドール ロゼ インテンス 2008)」とのマリアージュは見事にマッチしていました。グランクリュのブージィ産ピノ・ノワールがもたらすコショウのようなスパイスと、リセイ産ピノ・ノワールの特徴的なつぶしたイチゴの香りが絶妙に融合した特別なプレステージのシャンパーニュ。濃厚で豊かな風味を持ちながら、強い泡立ちで爽快感があり、お肉の旨味とソースのカクテルを引き立て合うペアリングです。お肉にロゼのシャンパーニュという組み合わせは、新しい可能性を感じさせてくれました。
最後にデザートと合わせたのは「Grande Réserve Rosé(グラン・レゼルヴ ロゼ)」。シャンパーニュ地区全体から厳選された、20から50の単一クリュのブドウをブレンドしたもの。口に含むと繊細なアロマが広がり、赤カシスやブルーベリー、ラズベリーの香りがグラデーションのように感じられます。軽くてさっぱり華やかな味わいに、気分がリフレッシュ。デザートの「フォレノワール」の濃厚なチョコレートやとソースの甘酸っぱさとも相性抜群でした。チーズと一緒に味わうのもおすすめだそうです。
「今回料理すべてにシャンパーニュをペアリングできたのは、それだけの多様性がシャンパーニュにはあるからです。今回は4種類のシャンパーニュをご紹介しましたが、それぞれ異なる特徴がありながら、いずれもシャンパーニュであることに変わりありません。シャンパーニュには軽やかさがあり、泡が消化を助ける効果もあります。フランスでも、食事にシャンパーニュを合わせることがますます一般的になってきています。最近では食生活やライフスタイルの変化が進み、特に若い世代は軽いものを何度も食べるスタイルが広がっています。そんな時、ちょっとしたおつまみにシャンパーニュを合わせることで、とても豊かな時間を過ごすことができます」
コースのすべての料理にシャンパーニュを合わせるという体験は初めてでしたが、全く飽きることはありませんでした。むしろ、ひと皿ごとに広がる新鮮な組み合わせは、料理の新しい可能性を感じる試みです。シャンパーニュにこれほどまでに複雑な魅力があることに改めて驚かされ、乾杯だけで終わらせるのはもったいないとさえ思いました。また、シャンパーニュは、グラスに注がれただけで気分を高揚させる力もあります。ぜひ、コースの取り合わせにあうシャンパーニュをソムリエに尋ねてみてください。食体験における新しい贅沢を感じることができるはずです。
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