専用のガンで糸を植え込み、ラグやカーペットなどを作る「タフティング」。最近ではこのタフティングを気軽に体験でき、オリジナルのラグが作れるワークショップも増えてきています。日本初のタフティングスタジオとしてオープンした「tufting studio KEKE」は、徳島を拠点とするラグブランド「MIYOSHI RUG」の直営スタジオ。今回は代表の市川 憲人(いちかわ かずと)さんに、タフティングの魅力やスタジオの立ちあげに込めた想いをうかがいました。
「タフティング」は100年以上前にアメリカで産業として発展し、1960年以降にモダンなインテリアスタイルの普及とともに日本でも広まりを見せました。基布(きふ)と呼ばれる布地に糸を植え込み、ラグやカーペットを作り出すファブリック製造技法のひとつで、専用のガンで糸を打ち込むキャッチーな製法や毛足で表現されたポップなデザインがSNSなどでも話題です。現在ではラグやカーペットだけでなく、DIYやアートの表現方法としても人気を集めています。
東京・白金台にある「tufting studio KEKE」は、タフティングのワークショップを行うスタジオ。丁寧なサポートのもと、自分のオリジナルデザインのラグを1日で完成できる初心者コースが人気です。2021年に日本初のタフティングスタジオとして東京・根津にオープンし、2023年に白金台へと移転しました。住宅街の中にひっそりと佇む古民家を改装した施設は梁や柱を残しながらモダンにリフォームされ、アットホームで落ち着いた雰囲気のスタジオです。
ワークショップは完全予約制で、まずは事前にガイドに沿って作りたいデザインを作成するところから始まります。3,600平方センチ以内であれば、四角形、円形、ダイカットなど自由なデザインが可能で、糸は6色まで使用できます。当日はまずタフティングガンの基本操作を教わり、縦横やカーブといった線に沿って打ち込みの練習からスタート。次に事前に送っておいたデザインをプロジェクターで投影し、基布に下書きをします。下書きができたら、ひたすら打ち込みをして作品を仕上げていきます。完成したものは、スタジオスタッフによって整えられ、8週間以内を目安に手元に届きます。
「一見難しそうに見えますが、これまで完成できなかったという方はいらっしゃいません。どなたでも必ず完成できるというのも魅力のひとつではないでしょうか」と話すのは広報を担当する高山 菜々子(たかやま ななこ)さんです。
徳島を拠点とするラグブランド「MIYOSHI RUG」の直営であるため、職人の技術に近いクオリティのワークショップを体験できるのがtufting studio KEKEならではの特徴のひとつ。「このワークショップをきっかけにタフティングが趣味や仕事になったという方もいらっしゃいますよ」と高山さん。オンラインショップでは、木枠、タフティングガン、糸、基布、糊など一式がそろったスターターセットも販売しており、興味を持った方の背中を後押しするサービスも充実しています。実はMIYOSHI RUGで活躍する職人たちもtufting studio KEKEやMIYOSHI RUGを通じてタフティングに興味を持ったという方がほとんどで、現在20代を中心とした十数名が在籍していると言います。
「タフティングは産業として衰退の一途を辿っています。地方産業全体の課題でもありますが、後継者不足が圧倒的な原因です。稼働している工場は全国で10軒あるかどうか。それに伴い基布や専用の糸を作る工場も廃業が続いています。産業全体の復活をめざすにあたり、まずはタフティングという技術があるということを知ってもらうことが必要だと考えました。その第一歩としてワークショップを始めようと思ったのです」と話すのは、tufting studio KEKEを運営する「株式会社三好敷物」代表取締役の市川 憲人さんです。
三好敷物と並行して、アパレルやインテリアブランドのOEMの別会社も営む市川さん。タフティングとの出合いもこのOEMの事業を通じてのことでした。パートナーだった徳島のタフティング工場が廃業することになり、併せて深刻な産業の衰退を危惧した市川さんは事業を引き継ぎ、「株式会社三好敷物」及びラグブランド「MIYOSHI RUG」を立ちあげました。
「事業の都合上という側面もありますが、私自身、タフティングには大きな魅力を感じています。主にラグやカーペットに使われてきた技術ですが、アイデア次第でなんでも作ることができ、デザインの表現のひとつとしてのおもしろさがあります。裏面からガンを打って作っていくという姿も格好いいですよね」と市川さん。ブームで終わらせず未来に残していきたい技術だと続け、「今後タフティングガン100台を学校に寄付する予定です。ミシンや刺繍機などのように、一般の技術として定着するためにはまず学校のような身近な環境で触れてもらうことが重要だと考えました」と裾野を広げる活動にも力を入れています。
「最近はタフティングのワークショップができる場所が増えてきていますから、気になったらぜひお近くで体験してみていただきたいです。とにかくまずは知ってもらうこと。私たちのスタジオだけで何とかするというよりも、業界全体で盛り上げていかなければ産業の復活は厳しいと思っています」
実際に試作をさせてもらうと、初めこそおっかなびっくりですが、慣れてくるにつれ大胆に打ち込みができ、没頭しているうちにあっという間に時間が過ぎていました。表面の様子をイメージしながら作るというのもおもしろく、完成したラグはやや不恰好なところも含めて、愛着を持たずにはいられません。
新たな年の始まりは、何かに挑戦してみるのにちょうど良いタイミング。興味を持ったらまずはぜひ体験をしてみては。また、MIYOSHI RUG(https://miyoshirug.store)のオンラインストアでは、カラーが選べるオーダーメイドラグの受注も受け付中。ポップでかわいいインテリアのアクセントとしてタフティングに触れ、使って楽しむのもおすすめです。
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