箱根エリアのなかでもとりわけ自然のダイナミズムを感じることができる仙石原。「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 仙石原」は、プライベートな心地良さに満ちた空間と温かいもてなしが自慢の20室からなるスモールラグジュアリーホテル。ひらまつらしい旬の美食と源泉掛け流しの湯、そしてそこはかとない上質な時間はゲストに活力を与えてくれます。
関東エリアからのアクセスが良く、古来より湯治場として親しまれてきた箱根。およそ50万年前から続く火山活動によって良質な温泉が湧きだし、その豊富な湯質は20種類にも及ぶといわれています。玄関口ともいえる賑やかな「湯本」、いまなお地球の鼓動を感じさせる「大涌谷」、自然とアートが融合する「仙石原」など、老若男女が楽しめるエリアごとの魅力も箱根の特徴です。とりわけ、ススキの大草原が幻想的な仙石原は観光客で賑わう箱根のなかでも落ち着いた雰囲気を楽しむことができます。夏でも湯本より5度ほど気温が下がる標高700メートルの高原地帯では、凜とした冷涼な空気が心地良く感じます。特にくっきりとした富士山が望める冬は、実に清々しい気持ちにさせてくれる場所です。
「ポーラ美術館」や「箱根ガラスの森美術館」など、文化施設も多い仙石原エリアにある「THE HIRAMATSU HOTELS & RESORTS 仙石原」は、アライバルゲートをくぐるとギャラリー顔負けのアート空間が広がります。建築デザインを手掛けたのは森田 恭通氏率いる「株式会社グラマラス」。ゆったりとしたアプローチから出迎えるのは「色の魔術師」といわれた前衛画家ソニア・ドローネーのフラッグに、イタリアの火山岩「バサルティーナ」を用いたファサード。重厚でありながら、どこか楽しげな雰囲気に旅のムードも盛り上がります。エントランスロビーには草間彌生の珍しい作品や、ピカソ、シャガールのリトグラフ、ベルナール・ビュフェのペインティングなど、往年の名作がエネルギーを放ちます。重厚にして落ち着きのある佇まいは、開業から8年の時を経て一層しっとりとした魅力を増しているようです。
このホテルは「HIRAMATSU HOTELS」のなかで、ここだけにしかない2つの特徴を備えています。そのひとつが源泉掛け流しの温泉をすべての客室で楽しめること。湯質は美肌の湯と名高い「新姥子温泉(しんうばこおんせん)」で、さらりとしたお湯はじっくりと浸かるのにうってつけ。本館には11室のゲストルームがあり、居心地の良さは格別です。ベッド・リビングエリアからそのまま浴室が広がり、たっぷりとしたバルコニー越しに箱根外輪山が望めます。デセデのソファやポルトローナ・フラウのチェア、ルイスポールセンの照明など、アート作品に負けずインテリアも一流のプロダクトがそろいます。さまざまなブランドが絶妙に調和しているのは、いずれもクラフトマンシップに溢れ、時を超えてなお魅力を放つ名作だからでしょうか。上質なものに囲まれる豊かさを改めて実感します。
そして、もうひとつの特徴が2019年にオープンしたレジデンス棟。本館より高い位置にあるため視線を遮るものは少なく、アプローチが分かれているのもうれしいところ。こちらでは朝食のみのプランも選べるとあって、日中に出掛けた先でディナーを楽しんだり、ゴルフやハイキングなどのアクティビティと組み合わせて長期滞在するゲストもいるようです。9室あるゲストルームは大きさもレイアウトもさまざまで、テラスを含めて100㎡以上あるジュニアスイートは最大で4名まで宿泊可能。共有のランドリーも用意され、滞在の目的に合わせて二つの滞在スタイルを選べるのも魅力的。さらに、本館とレジデンス棟の間には「貸し切り露天風呂(要予約)」も用意され、客室とはひと味違ったヒノキ風呂での湯浴みを楽しむことができます。
のんびりとした時間を過ごしたら、いよいよディナータイム。「滞在するレストラン」をコンセプトにしているだけに、期待に胸がふくらみます。料理長を務めるのは19歳からひらまつの名店で研鑽を積んできた漆原 卓(うるしばら すぐる)さん。
「私は栃木県の出身で、親族に料理人など手に職をつけた人も多かったため、調理科のある高校へ進学しました。当時は『料理の鉄人』や料理人が活躍するドラマも流行っていて、憧れる気持ちが強かったのです。内定者を集めた合宿で発表された配属先がイタリア料理の『リストランテASO』。当時の料理長に『まずはパティシエをやれ』と言われました。料理を作ると思っていたので最初はショックでしたが、振り返るとパティシエというポジションを若いうちに経験できたのはとても強みになっています。その後、『ラ・フェット ひらまつ』の立ち上げで大阪へ行き、フランス料理に出会います。そこで、一つひとつの作業やレシピの組み立て方、コースの構成など“この料理は、なぜこうなるのか?”という料理人としての姿勢を学びました。奈良にあった「リストランテ オルケストラータ」の料理長を務めたあと、この仙石原でスーシェフを任され、2024年から料理長に就任しました。関西にいた実績やイタリア料理とフランス料理を両方経験した20年のキャリアを活かして、この場所でしか体験できない料理をお出ししたいと思います。ホテルの周辺の環境も静かでゆっくりくつろげるため、ゲストが料理に集中できる環境が整っています。その期待に料理で応えていきたいですね」
そんな漆原さんの料理の根底に流れるテーマは「filare(フィラーレ)」。イタリア語で「糸にする、紡ぐ」という意味が込められています。生産者の想いを紡ぎ、スタッフのもてなしを通してゲストへ繋ぐひと皿には、命が巡る食の本質を垣間見る思いがします。
「鶉(うずら)のベニエ」は、揚げた手羽を鳥の巣に見立てた藁の上に盛り付けたひと皿。ローズマリーやカボチャの香りが冬の温もりを感じさせます。続いて「魚介のタルタルとクスクス 冷製ビスクと共に」は、食感のアクセントが魅力的。幾何学的なアオサのチュイルを崩し、タルタルと混ぜながら頂くと濃厚なビスクの塩味と蟹の甘みが互いを引き立て合います。「フランス産フォアグラとリー・ド・ヴォーのネッチ」、「宮城県産 野田鴨のラグーソースで和えた自家製フェットチーネ」は、栗やムカゴ、ゴボウなど冬の野菜の使い方が印象的で、ペアリングで頂くとトリュフやラグーなどのソースが一層ふくよかに感じられます。「金目鯛と帆立貝のポーピエット ビーツと発酵トマトのソース」には甘酒の旨味に合わせて、神奈川県瀬戸酒造店の日本酒セトイチ「手の鳴る方へ」をペアリング。2か月かけて組み立てを考えるという緻密なコースは、まさに糸のように一本の物語を紡ぎます。「食は一期一会。同じ料理は作れないし、作らない」という漆原さんの言葉が深く響きます。
ゆっくりとグラスを傾けながら目の前のひと皿に没頭する悦楽は、かけがえのないひとときです。スタッフたちのさりげない心配りのおかげで、自分の時間にゆっくり向き合うことができます。つかず離れずの心地良い接客の秘訣は、女将の存在が大きいようです。岩﨑 純子(いわさき じゅんこ)さんにお話をうかがいました。
「私も料理長の漆原と同じ代官山の『リストランテASO』の出身で、ブライダルを担当していました。その後『メゾン ポール・ボキューズ』も担当し、2016年まで代官山エリアにあるひらまつの店舗のブライダルマネージャーをしていました。このホテルは2016年12月に開業したのですが、オープンの数ヵ月前にこのホテルの女将を打診され、戸惑いもあったものの即答したのを覚えています。ひらまつのレストランでは伝統としてマダムの存在が大きいのですが、このホテルでも女将の目線でゲストを気遣ってほしいと言われました。この場所は成熟した大人や日本の文化に造詣の深い海外からのゲスト、そしてひらまつでメモリアルを過ごしてくださるご家族など、さまざまなお客様がいらっしゃいます。最近ではプロポーズの舞台に選ばれるお客様も増えているんですよ。“女将としてのもてなし”の真意は、私が前線に立って切り盛りするより、ゲストの皆様に愛されるスタッフを育てることだと思っています。別荘のようにくつろいでいただきながら、期待を超えるささやかな驚きや感動をお届けする。それは人生の晴れ舞台であるウエディングとアプローチは変わりますが、実は相手の立場になるという部分は“ひらまつらしさ”に通ずるもの。以前ウエディングを担当させていただいたお客様がお子様を連れてホテルに来てくださったことがあるのですが、『こどもが気に入ったので、また遊びに来た』とおっしゃっていただいたときには、ひらまつで働くことの醍醐味を実感しました。お出迎えとお見送りの際に見えるアライバルゲートの景色が好きで、またお目にかかるときにはどんな季節なのかを想像しながらお客様をお送りしています」
朝、ベッドで目を覚ますと目の前には朝日を浴びた富士山の頂が輝いていました。そのまま掛け流しの湯船に浸かり、じっくりと身体を沈めて清々しい景色をしばし堪能。この無になれる瞬間は自宅ではなかなか得がたい快感です。湯上がりにストレッチをしながら簡単に身支度を調えて朝食へ向かうと、心身がしっかりほぐれているのを感じます。寝起きの胃を優しく温めてくれたのは、トリュフのエスプーマ(泡)がのったシャンピニョンのスープ。ひとくちすすると胃が温まり、ホッとすると同時に活力のようなものがむくむくと湧いてくるのを感じます。外輪山を眺めながらゆっくり頂く朝食は、身体を労っているようで実に気分が良いものです。そもそもVACATION(休暇)はラテン語の vacare(ヴァカーレ/空白)が語源なように、人生にはときどき身体を休めて頭を空っぽにする時間が大切なのだと実感します。自分のためだけの時間を過ごし、元気をチャージして日常に戻る。そんな止まり木のような時間にこそ、人は幸せを感じるのかもしれません。
〒250-0631 神奈川県足柄下郡箱根町仙石原 1245-337
Tel. 0460-83-8981 予約受付時間:9:00~19:00
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https://www.hiramatsuhotels.com/sengokuhara/