心が整う茶室
瀧爪/TAKIZME
心が整う茶室
瀧爪/TAKIZME

お茶席の体験を通してマインドフルネスを提案する「瀧爪」。ここではお茶の味わいだけでなく、香りや音を五感で感じることができます。静謐な時間は感性を刺激するだけでなく、私たちに「今」を見つめる機会を与え、気づきや癒しをもたらしてくれました。日本のお茶文化に独自の解釈を加えることで、新しい体験を届ける茶室「瀧爪」をご紹介します。

品川の古民家で体験する特別なお茶

茶室「瀧爪」は、メディテーションを取り入れた新感覚のお茶体験を提供しています。その舞台となるのは、旧東海道の趣が残る東京・品川の古民家。住宅が立ち並ぶ路地を奥へと進み、暖簾をくぐると、つくばいを再解釈した滝のオブジェが迎えてくれました。どこからか漂うパロサントのお香の芳香な香りが、非日常へと誘います。靴を脱いで、茶室へ上がると、「瀧爪」をイメージした印象的な掛け軸が目に留まります。そして、それぞれの客席には板が何枚も置かれてあり、これを自分で組み立てることからお茶席が始まります。「瀧爪」の亭主の案内どおりにこれらの板を組み立ていくと、ただの板が立体的なお膳台に早変わり。側面には「瀧爪(TAKIZME)」の“T”と“Z”の文字が浮かび上がり、自ら組み立てるプロセスも含めてなんとも遊び心を感じさせます。ゆっくりと白湯をいただいた後に、メディテーションで心を落ち着かせるのが「瀧爪」の特徴です。

外資系コンサルタントからの転身

「瀧爪」の亭主は、もともと外資系企業に務めるコンサルタントとしてシンガポールを拠点に海外を飛び回っていました。その経験のなかで「世界で通用する日本のかっこいいブランドが少ないことに気づいた」と話します。フランスで料理人を目指すことも考えたほど食に興味があった「瀧爪」の亭主は、なかでも日本のお茶に魅了され、日本の体験をテーマにしたブランドを立ち上げる決断をしたそうです。

「機能性を評価されている日本の製品はたくさんありますが、ブランドそのものやバックストーリーが評価されていることは少ないように感じます。いっぽうで、禅や庭などのカルチャーそのものが高く評価されている。日本ではかつて淹れたお茶を飲むことが当たり前でしたが、手軽なペットボトルのお茶が普及したことで、お茶を飲む行為に含まれていた精神的な安らぎなども感じられなくなってきました。そこで、メディテーションなどの新たな価値をつけ、英語での解説を加えることで、お茶の魅力を多くの人に発信できるのではないか。そう考えて、瀧爪をスタートしたんです」

新たなお茶文化を追求

お茶を日本発のかっこいいブランドにして新たな価値を与えたい。「瀧爪」の亭主のこの想いは、お茶そのものはもちろん、道具やお菓子などにも現れています。お茶席で使われる道具は従来の茶道の道具と形が違い、独自の発想で作ったもの。当然、所作も異なります。

「お茶の伝統を学び、その魅力を再解釈するにあたり、道具や使い方についても改めて考えてみました。例えば、一般的にスープボウルなどは茶道で使われません。でも、お茶の雰囲気に合っていたり、自分がおもしろいと思えば従来の価値観にとらわれず取り入れることにしているんです。そのうえで伝統的な所作に落ち着くこともあり、様式美の奥深さを再認識しています」

お茶に関しては、九州産の茶葉が多く使われています。その魅力についてうかがうと「九州の生産者には個性的で遊び心を感じるお茶が多く、予想を裏切ってくれる魅力がある」と話します。そしてお茶菓子は、和と洋をミックスすることに力を入れていて実にユニーク。「四季折々の豊かな表情も日本の魅力のひとつなので、季節を大切にしながら洋の東西を感じさせないレシピを開発しています」とのこと。例えばだし巻き卵をベースにしながらプリンのイメージを取り入れたものや、カヌレ・ド・ボルドーの中にみたらしのキャラメルを詰めたお菓子など、和と洋の魅力が絶妙にミックスアップされています。

「調ふ茶」の春のペアリング

春に「瀧爪」でいただいたのは、三種のお茶とお茶菓子のコース「調ふ茶(ととのうちゃ)」です。三種類のお茶とお菓子のペアリングを楽しめます。

【一:一番摘み玄米茶(福岡県八女市)、ほうじ茶団子とずんだ】
信楽焼のお茶碗に注がれる瞬間、玄米茶から広がる香ばしい香りに五感が一気に研ぎ澄まされます。後味が残らず、すっきりと飲みやすい味わいが特徴的です。一緒にいただくのは、風炉の炭火でいぶられたほうじ茶のお団子。ずんだ餡は「瀧爪」の亭主の自慢の手作りで、ザクザクとした食感と優しい味わいが口の中で調和します。

【二:ほうじ茶(鹿児島県志布志市)、お出汁のプディング】
カカオニブやダークチョコ、黒糖、フルーツの酸味が感じられるほうじ茶の香りは奥深く、豊かな風味が口の中を満たします。陶芸家の山本 拓也(やまもと たくや)さんによる、温かみを感じるシンプルなお茶碗でいただくと、心の中までもお茶の香りで満たされるようです。お菓子は、見た目が出汁巻き卵のようなプディング。カラメルソースと絡めると、まさにプリンの味わいが広がり、印象ががらりと変わります。

【三:釜炒り玉緑茶(宮崎県日南市)、うめ餅】
最後のお茶は、フローラルな香りが華やかな玉緑茶(たまりょくちゃ)。阿部 慎太朗(あべ しんたろう)さんによるスープボウルでいただきました。ひとくち含むと桃のような甘い香りが広がります。このお茶は前の二種類に比べると香りが特に強く、低めのお湯でじっくりと淹れていきます。ペアリングされるお菓子は、梅干しを練り込んだお餅で白いんげんの餡子を包んだという斬新なひと品。しっかりと酸味が効いて、お茶とも絶妙にマッチします。

7月以降は「桃の水まんじゅう」「和スパイスチョコチップクッキー」「イチジクとアーモンドのチョコサンド」「トマト大福」などのお茶菓子を予定しているとのことで、新しいマリアージュが楽しみです。
※お茶とお菓子の組み合わせは、予告なく変更になる可能性がございます。

心の平安を取り戻す

お茶とお菓子をひと通りいただいたあと、最後に再びメディテーションを行い、瀧爪のお茶席は終了します。
「一瞬一瞬の心を整えて、精神性を高める。そして、いま、目の前にある時間を存分に楽しむ。ものや情報が溢れている現代においては、自分と向き合う時間が最も贅沢なものだと思います。コーヒーはアクセルのような存在だとすると、お茶はブレーキのようでありニュートラルな休息の状態に戻してくれる存在だと感じています。 お茶席にメディテーションを取り入れることでお茶と瞑想の両方をアップデートできるのではないかと思ったのです。店名の『爪』には、枝に留まり羽を休める鳥のイメージから、忙しく動き回る人々にここでゆっくりひと息ついてほしいという願いを込めています。いずれはカフェも展開して、世界中に止まり木を増やして行きたいですね」

私たちは日々のストレスやプレッシャーにさらされ、ざわざわと心が落ち着かないこともあります。そんな時に自分の気持ちと向き合う時間を持てれば、心の平穏を取り戻すきっかけになるかもしれません。一服のお茶とともにゆったりと過ごし、穏やかな時間の中で心身のバランスを整える。ストレスや煩わしさを無理に取り除こうとせず、向き合うことで明日への活力を取り戻すことは、お茶という文化が本来持っていた魅力だったことに気付かされました。ぜひ、「瀧爪」の門をくぐり、心が整うお茶の世界を体験してみてください。

瀧爪/TAKIZME

瀧爪 ティーハウス
〒140-0002 東京都品川区東品川1丁目28−7
Tel.080-9536-3260

【予約制】
茶体験:水・木曜日 11:00/15:00/18:00
土曜日 10:00

セゾン・アメリカン・エキスプレス®・カードが
ご利用いただけます。
https://takizme.jp/

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