風土が育む暮らしの知恵
桷志田黒酢
福山黒酢株式会社
風土が育む暮らしの知恵
桷志田黒酢
福山黒酢株式会社

いわゆる“黒酢ブーム”からおよそ30年。独特の香りと酸味はいかにも体に良さそうですが、なかなか習慣にまでは至らないという方も多いのではないでしょうか。鹿児島・福山の自然が育んだ壺造りの長期熟成玄米黒酢「桷志田(かくいだ)」は、黒酢杜氏が手塩に掛けて育てたまろやかな酸味と滋味深い味わいが魅力です。今回の取材では、工場統括部長の発酵マイスターにお話をうかがい、壺造り黒酢の魅力に迫りました。

暮らしを支えた調味料

和食の味付けの基本「さしすせそ」にも含まれるお酢。一般的にはお米や麦、果物などの糖質を含む食材を原料にしており、ブドウを原料とするワインビネガーや餅米からつくられる香酢など、世界各地にさまざまなお酢が存在しています。その歴史は古く、紀元前5000年からお酢づくりが始まりました。人類最古の調味料とも言われ、ギリシャの医学者であるヒポクラテスは病み上がりの病人にも摂取を薦めたというほど。日本ではおよそ4世紀頃に現在の大阪周辺で米酢の製法が伝わり、調味料としてだけでなく水垢の除去や鍋の焦げ落としに効果があるなど、古来より生活の知恵としても活用されてきました。黒酢の魅力と可能性について、発酵マイスターであり、福山黒酢株式会社の執行役員を務める竹下 義隆(たけした よしたか)さんにお話をうかがいました。

可能性を秘めた微生物の営み

研究開発室室長であり、工場の責任者である竹下さんは、バイオテクノロジーの技術士。体へ影響を与える成分の活用はもちろん、調味料として新しいレシピの開発や美容へのアプローチなど、日々黒酢の可能性を研究しています。

「大学では酵素や好熱菌などの微生物、それからゲノムなどの研究をしていました。ともかく発酵や菌が好きで、卒業後は納豆のメーカーで研究開発をするなど、微生物一筋の人生です。出身が宮崎で、福山町に伝統的な壷作りの黒酢があると聞いてドライブがてら見に来たのですが、敷地一杯に広がる壷には圧倒されました。この敷地に約2万もの壷が並んでいるのですが、そのなかで乳酸菌や酵母、酢酸菌、麹菌などのたくさんの微生物が生きているんだと思うと居ても立ってもいられず、履歴書を用意したのを覚えています。黒酢に含まれるいろいろな菌には、まだ私たちの知らない可能性が眠っています。現在も産学一体となってさまざまな成分の研究を進めながら、暮らしや健康に役立てる商品開発を行っています」

飲みやすく、使いやすく

健康に良さそうなイメージのある酢ですが、そもそもどのような働きがあるのでしょうか。酢の主成分は、酢酸(さくさん)やクエン酸、グルコン酸、りんご酸などの有機酸といわれるもの。酸味の要因となる酢酸やクエン酸といった成分は、体内に入った栄養素や疲労によって蓄積した乳酸を燃焼させてエネルギーを生み出すため、疲労回復に効果的です。また、アミノ酸には血行を良くする働きがあり、殺菌効果や夏バテ予防、免疫力向上も期待できます。さらに、適度な酸味には塩味を引き立たせる効果があるため、減塩効果のある調味料としてさまざまな料理に使われてきました。1996年にはハチミツを加えた黒酢飲料がブームとなり、黒酢は一躍手軽な健康商品として注目を集めました。しかし、喉ごしや独特の刺激に慣れることができず、習慣化しなかった人も多いようです。そんな「黒酢は飲みにくい」という常識を覆したのが、福山黒酢株式会社の長期熟成玄米黒酢「桷志田(かくいだ)」です。

「長期熟成」の玄米黒酢

通常の穀物酢が精製されたお米を使うのに対して、黒酢は玄米を使うことでビタミンやミネラルを多く含んでいるのが特徴です。鹿児島の福山町では、約200年前の江戸時代後期から黒酢作りが始まりました。夏は涼しく冬は暖かい気候で、一年を通して過ごしやすいため屋外での自然発酵にも最適です。シラス台地から湧き出す仕込み水は硬度30の超軟水ということもあり、独特の口当たりの良さとまろやかさを生みました。さらに、国産の有機玄米と自社製の麹を使用することで、良質な黒酢の条件がそろいました。これを信楽焼のかめ壷に入れて屋外でじっくり発酵させるのが「桷志田」。一般的な黒酢の発酵熟成期間が半年〜1年なのに対して、最低でも3年間熟成させています。この長期熟成によってアミノ酸がピークを迎え、そして飲みにくさの原因である酸味をまろやかにしているのです。

手塩に掛けて育てる

これらの仕込みは春と秋に行われます。壷に蒸した玄米と麹、水を7割ほど入れて寝かせるのですが、その際に胞子の付いた乾燥麹を均一に振りまきます。「振り麹」と呼ばれるこの作業によって液体の表面に蓋をし、外からの雑菌汚染を防ぎながら発酵が進みます。春に仕込む壷の数はおよそ1600個。屋外に並べられた壷は昼の太陽と夜の冷気にさらされ、黒酢は壷の中でゆっくりと熟成していきます。これらを毎日点検しながら、黒酢職人たちが丹念に壷をのぞき込むこと約1年。順調に発酵した黒酢はここから3年かけて熟成させていきます。発酵中の黒酢を確認しながら竹下さんは「うまく発酵できなかった黒酢は表面をかき混ぜたり、発酵の妨げになる酢酸菌セルロースを取り除くことで成長させていきます。順調に育つことは何よりも大切なのですが、手がかかるのも可愛いものです」と、うれしそうに話します。

企業や大学との研究開発

200年続く伝統的な製法を守りながら、丁寧に育てられる長期熟成玄米黒酢。しかし、その可能性はまだまだ広がりを見せています。黒酢の乳酸菌を活用したビールブランド「カクイダブルワリー」は、竹下さんをはじめとする酵母などの微生物を知り尽くした研究者が黒酢の醸造技術を活かして仕込んだもの。また、国立鹿屋体育大学自転車競技部の選手たちの要望から誕生したのが「桷志田 泉」。通常の「桷志田」より多くのアミノ酸を含むため、ストレスや激しい運動などによって過剰に生成された活性酸素が抑制されることがわかったのです。さらに関西大学との共同研究によって、黒酢にはコラーゲンの生産を促進し、肌のバリア機能を高める「D-アミノ酸」が米酢の約55倍も多く含まれていることが明らかになりました。こうした作用を生活に取り入れやすくするために、野菜と黒酢の美容効果を一度に得られる「黒酢ピクルス」などのレシピ開発も行っています。

風土を楽しみながらヘルシーに

福山町には現在8つの黒酢メーカーが存在します。この町ではずっと酢が作り続けられたことで、発酵に欠かせない酵母が町全体の空気中に含まれるようになったからだと考えられています。桜島を望む錦江湾と山がちな地形に挟まれ、酵母はこの土地に根付いていったのです。お酢作りに適した風土が育まれてきたこの場所では、微生物の営みである自然発酵にも土地の個性があることに気付かされます。最近我が家ではサラダに「桷志田黒酢ドレッシング オニオン」を愛用していますが、良質なオリーブオイルと爽やかな酸味に食が進みます。霧島の空気をたっぷりと含んだ桷志田の黒酢は、我が家の新しい習慣になりそうです。

桷志田黒酢(福山黒酢株式会社)

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