ともに暮らすように使う
IFUJIOVAL BOX
ともに暮らすように使う
IFUJIOVAL BOX

永く使いたいと思える道具と出合うことは、人生をともに歩むパートナーを得るような喜びがあります。薄く削った木を曲げて作られるシンプルな木箱、「IFUJI」の「OVAL BOX」もそのひとつ。今、世界中で愛用される「IFUJI」の魅力を探しに、長野県松本市にある工房を訪ねました。

現代の暮らしに溶け込む

キリスト教プロテスタンティズムの一宗派で、17~20世紀にかけて活動していたシェーカー教徒が製作していた「シェーカー家具」。装飾を排除し、有用性を追求した木製品は、デニッシュ・モダンの巨匠ハンス・J・ウェグナーをはじめ、数々のデザイナーや近代家具に影響を与えました。そのひとつである「シェーカーボックス」は、木を曲げて作られるシンプルな箱で、その優美で独特のデザインで世界中に知られるようになりました。このシェーカースタイルを再現しつつ、現代の暮らしとの融合を提案するのが「IFUJI(イフジ)」の「OVAL BOX」です。

ブランドの代名詞として

IFUJIは、木工作家 井藤 昌志(いふじ まさし)さんが主宰を務める工芸ブランド。「OVAL BOX」「TABLEWARE」「FURNITURE」の3つを柱とし、工房のある長野県松本市と東京にそれぞれ店舗を構えています。井藤さんは2003年に木工作家としてのキャリアをスタート。2009年に岐阜から松本へ工房を移転しました。「クラフトフェアで何度か来る機会があり、街の魅力に心惹かれました。木材を扱う仕事をするのに空気が乾燥していることもメリットでした」と井藤さん。2021年に「IFUJI」としてブランド化しました。

「現代の暮らしで、無垢の木製品に触れることって案外少ないんですよね。無垢の木の手触りや匂い、年月を経るごとに増す美しさ。その豊かさをもっと暮らしの中に取り入れられたらと独立当初から考えていました。そしてある時、シェーカーボックスを思いついたんです。これならどんな住空間にも合うし、手軽に手にすることができるのではないかと思いました」
2006年から製作していたOVAL BOXは、日本国内をはじめ、アメリカ、イギリス、フランス、アジアなどの海外のセレクトショップでも取り扱われ、ブランドの代名詞として人気を集めているアイテムです。

機能美を忠実に再現

シェーカーボックスの特徴と言えるのが、「スワロウテイル」と呼ばれる曲げた木の接合部分。接着剤を使わず、燕尾型にカットした先端を銅釘で留めて固定されています。円周の厚みをできるだけ均等にするため、重なり合う一方の木は半分ほどの薄さに削ります。重なり部分の長さと燕尾部分の長さを均等に揃え、引き合う力を調整。さらに薄く削っていない側の端を燕尾型にカットすることで、木量のバランスを整えます。
「デザイン性もありますが、全体のバランスを取るために、日本の曲げわっぱなども必然的にこの形状になるんです」
IFUJIのOVAL BOXでもこの機能美が忠実に再現されています。

最高の木材にこだわる

機能美を支えるもうひとつのポイントが原材料です。使用している樹はチェリー、オークといった広葉樹が中心で、主にアメリカで買い付けています。「重要なポイントは木目が通直(まっすぐ)で癖がないこと」と井藤さん。薄い板を曲げるため、少しでも木理が曲がっていると形が美しくならないと言います。木材の買い付けができるのは年に一度きり。葉が落ちた頃に切られた木は水分量が少なく、耐久性も高いと言われていますが、納得のいく木材と出合えるのは何百本とある中で1本あるかどうかという割合だと話します。

飾りながら収納する

手のひらに乗るほどの小ぶりなものから、床置きのサイドテーブルになるものまで、サイズと形状は多種多様。樹種、カラーを合わせるとその種類はなんと200を超えます。「裁縫箱や道具箱としてはもちろん、内側を無塗装にしてあるものは木が湿気を吸ったり吐いたりしてくれるので、茶葉やお菓子の保存にもおすすめです。しまっておくのはもったいない、とよく言っていただいて、リビングで使う方も多いようですね。リモコンやケーブル類など、そばに置いておきたいけれど見せたくないものをしまうのにも都合が良いようです。ペットの骨壷がちょうど入るサイズのものもあり、収納箱兼インテリアとしてお楽しみいただいています」

空間に馴染む、IFUJIの色

なかでもIFUJIならではと言えるのが、イタヤカエデ(国内産)を使った「gray」や「black」というシリーズ。草木染めで色付けされたもので、同じ木材を使いながら染め方を変えることで、グレーと黒の2つの色味を表現しています。
「木材特有のナチュラルな色味ももちろん好きですが、そうではない表現をしてみたいと思いました。ダークなトーンのインテリアにも合うように、黒のものがあってもいいとか。そう考えて、着物の黒染を木材に施してみました」
ナチュラルな風合いを残しながら重厚感があり、異素材との組み合わせやモダンでスタイリッシュな空間との相性も良さそうです。

永続的なものづくりを

14ほどある工程はすべて人の手によって行われています。取材にうかがった日も、各セクションで黙々と作業が進められていました。出来上る箱のシンプルな佇まいとは程遠い、繊細で根気のいる作業の数々。
「同じ型を使っていても、木というのは性質上、微妙に差異が生まれます。例えば蓋ですと、一つひとつに合わせて、ゆるすぎず、きつすぎず、片手でスッと引き上げられるように嵌合(かんごう/はめあい)させなければいけないので、手作業でないととてもできないのです」
現在、工房で働くスタッフは20数名。「なぜか、女性が多いですね(笑)。実は木工経験者は少なく、もともとIFUJIを愛用してくれて興味を持ったという方も多いです。ものづくりはハードルが高いと思われますが、手仕事ですから時間をかけて手順を覚えれば誰でも作れるようになります」という言葉に、作り手を育てていく永続的なものづくりへの思いが感じられます。

無垢の木と生きていく

松本市・大手の「the BOX SHOP」や2022年に東京・台東区にオープンした「IFUJI the box tailor」は、ラインナップが充実しているだけでなく、IFUJIの提案する暮らしや哲学に触れることができるような空間です。今後はこれらの実店舗で、メンテナンスのワークショップや使い方の提案、アーティストとのコラボレーションなども企画しているそう。
「毎日触ってあげるといいかなと思います。人の手が色艶を育ててくれます。時間と共に変化する深い色合いが、使い手の人生に寄り添う唯一無二のものになっていくはずです」
ともに暮らすように、永く愛用したいOVAL BOX、あなたなら何を入れますか。

IFUJI(イフジ)

the BOX SHOP
〒390-0874 長野県松本市大手1-3-28 神山ビル2F
Tel.0263-88-7706
営業時間:11:00〜18:00
定休日:火曜日(祝日は営業)

IFUJI the box tailor
〒111-0036 東京都台東区松が谷2-15-8 ROOT BLDG 1F
Tel. 03-5246-3345
営業時間:12:00〜18:00
定休日:毎週火曜、水曜日(祝日の場合は振替営業)、年末年始

お問い合わせは公式ホームページをご確認ください。
セゾン・アメリカン・エキスプレス®・カードが
ご利用いただけます。
https://ifuji.net

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