職人技が際立つユニークなジュエリー
YUTAI
ユタイ
職人技が際立つユニークなジュエリー
YUTAI
ユタイ

Joke(冗談)と同様にラテン語のjocalis(遊びの)を語源とする「Jewel(宝石)」。前衛的なデザインと伝統技術が融合した「YUTAI」は、飾るという行為が秘めた遊び心を心地よく刺激し、繊細で大胆な想像力はファッショニスタからも熱い視線を集めています。YUTAIの取り扱い店舗の1つである、2023年5月に表参道にオープンしたジュエリーの魅力を再発見する場所である「SHIHARA LAB」にて、デザイナーの石原 勇太さんにブランド設立の経緯とジュエリーを楽しむ新しい視点などをうかがいました。

「YUTAI」と「SHIHARA」の異なる魅力

2021年にローンチしたファインジュエリーブランド「YUTAI(ユタイ)」。石原さんによる、もう1つのブランドである2010年にスタートした「SHIHARA(シハラ)」とは対照的なアプローチで、ユニークなピースを展開しています。有色の素材を使わないなど素材にある種の制限を設けることでジュエリーの本質を描き出す「SHIHARA」に対して、「YUTAI」は特別な宝石を素材にデザインしています。また、「SHIHARA」が非装飾的で“引くこと”が主流なのに対して、「YUTAI」は“足すこと”を取り入れている点でも対照的。伝統的な宝飾技術を用いて作られたジュエリーのパーツをアップサイクルしたり、ジェムストーンをカットして組み合わせ、1つの石にする技法を取り入れたりと従来の宝飾品とは異なる魅力を提案しています。

ジュエリーの着け方から見直す

宝飾産業が盛んな山梨県で生まれ育った石原さんにとって、ジュエリーデザイナーの道を選ぶことは自然なことでした。彫金を学んだ後、個人でジュエリー制作を請け負うなどした後に「SHIHARA」を立ちあげます。「学生時代から社会人の友人が多く、自分でお店を営んでいる人も多かったので、自分で事業を起こすことにあまり抵抗はなかったですね」と話す石原さん。ピアスやネックレスに不可欠だとされた留め具を取り払ったSHIHARAのミニマルなデザインは、ジュエリーに新しいアプローチを提示しました。また、身に着ける人自身の美しさを引き出すために装飾性を削ぎ落とした“非装飾的なジュエリー”というコンセプトはこれまで宝飾品に興味を持たなかった層からも共感を集め、瞬く間に人気となりました。

「ジュエリーは太古の昔から存在しています。興味深いことに、人類の文明は発達しましたが、“耳に穴を開ける”、“首から下げる”といったジュエリーの着け方は昔から変わっていません。だから僕は、着け方や構造から見直して、新しいジュエリーを提案したいと思ってSHIHARAを立ちあげました。ジュエリーを身に着けるという行為自体を一度考え直し、機能とデザインが一体化したものを作り出したいと考えたのです」

技術と素材の価値を再発見

そして、2021年に始めたブランドが「YUTAI(ユタイ)」。各コレクションにデザインテーマを設定し、一点もののジュエリーを展開しています。例えば「Revive(リバイブ)」は、かつて日本でつくられたクラシカルなセッティングのジュエリーを再構築したコレクション。波打つように精緻にセッティングされた台座は、今では“古いスタイル”とみなされ、センターストーンのみ外されて転売されることも少なくありません。しかし、石原さんはその高い職人技術とその美しさに価値を見出し、あえて取り巻きのデザインをそのまま使用。ベースの素材を幅のあるデザインに変更し、現代にフィットしたスタイルに蘇らせました。ただ古いものに価値を見出すだけでなく、モダンに蘇らせるというコンセプトが新鮮です。

ユニークなデザインアプローチ

「Sectional(セクショナル)」は、パールやジェムストーンなどさまざまな球体の断面をつなぎ合わせたコレクション。クラシカルなイメージの素材に新しい魅力を加えています。ゴールドやプラチナの金具部分は、職人が素材の断面に合わせて地金を打ち出して作ったもの。「Fused Gem(フューズドジェム)」は、複数の石をカットして組み合わせ、1つの石のように表現する新しい技法を使いました。それぞれの石の色が反射し、また融合することで自然界には存在しない新しい色が生まれます。まさに、宝石の概念を一変させるコレクションです。いずれも石原さんのジュエリーに対する深い知識と豊かな発想力、そして日本の職人の技があるからこそ成立しているアイテムたちです。

「ジュエリー業界には『この素材はこういう風には使わない』といった傾向がありました。そういったことを前提としない方が、ユニークでおもしろいものができるのではないかと思っています。自分なりに掘り下げて考え、ジュエリーとして成立するテーマを設定したものが、そのままコレクションとして展開されています」

「SHIHARA LAB」をオープン

そして、2023年5月には新たな試みとして「SHIHARA LAB(シハラ ラボ)」をスタートしました。YUTAIのコレクション以外に、「Alice Cicolini(アリス・チコリーニ)」や「Bibi van der Velden(ビビ・ヴァン・デル・ヴェルデン)」といった世界のジュエリーブランドから6つのブランドがセレクトされています。

「僕自身とは全く異なる要素を持つデザインだったり、リスペクトできる技術や表現力を持ったジュエラーが世界にはまだまだたくさんあります。それを皆様にもっと見てほしいと思って始めました。最近は、SNSのフォロワー数が選択の大きな決め手になっていると思いますが、僕は本当にジュエリーとして優れているか、その存在価値を見極めて買い付けています。ニッチすぎて、同業者の友人には『攻めすぎ』と言われることもあります」

「Bibi van der Velden」のジュエリーを見て「動植物系のモチーフがユニークです。ワニのしっぽがちゃんとスムーズに動いたり、僕にも構造が理解できないくらい作りが良い」、「Nikollë Radi(ニコール・ラディ)」のジュエリーを手にとっては「プラチナの線を自分で編むという素晴らしい技の持ち主。素材の性質をものすごくよく理解しているのがわかります」と、ジュエリーデザイナーならではの視点でコメントをいただきました。

ジュエリーの本質に触れる場所

2フロアで構成された「SHIHARA LAB」は、ゆっくりとジュエリーに向き合うことができる空間となっています。今後はプライベートラウンジとして、キュレーションしたブランドの販売だけでなく、クリエイターの展示やトランクショー、ワークショップなど、ジュエリーを取り巻く体験をボーダーレスに発信していく場所にしたいとのことです。

「欧米に比べると、日本ではジュエリーとライフスタイルの距離が遠いように感じます。人生の節目に選ぶ特別なアイテムという側面だけでなく、素材、技術、デザインなど、“自分を飾る”という行為の魅力はもっとエネルギーに満ちているように思うのです。まだ私たちの発信力は小さいかもしれませんが、少しずつこのような場を通してジュエリーの本質に触れていただき、ジュエリーとの付き合い方が多様で柔軟になっていったらうれしいですね。買っていただくのも光栄ですが、まずはいろいろなジュエリーに触ってもらうことで、たくさんの魅力があることを知ってもらいたいです」

ブランドを残すこと

そして、自身が生み出したブランドたちを残すことに力を注ぎたいと続けます。

「ありがたいことに、結婚指輪に私のデザインを選んでくださる方がたくさんいます。ブランドを始めたデザイナーの責任として『結婚指輪を買ったブランドがなくなってしまった』ということは避けなければいけないと、身の引き締まる思いでブランドを育てています。ジュエリーは永続的なものだからこそ、たとえ僕が死んだ後でもブランドが存在し、永きにわたってカスタマーサポートを提供し続けられることがジュエラーとしての責任であり、お客様との約束だと思っています。ただ、残すことが目的化してブランドが大衆化することは本末転倒なので、良いブランドが残る社会環境を構築したうえで、選ばれるブランドであり続ける必要がある。なかなか難しいバランスですが、ジュエリーで人々を幸せにするお手伝いができたらと思っています」

ジュエリーを着ける意味を改めて考えさせられたり、見たこともない素材使いや職人技の虜になったりと、さまざまなインスピレーションを与えてくれる「SHIHARA LAB」と「YUTAI」。ここで飾ることの魅力を再発見し、その輝きに心躍らせてみませんか。

SHIHARA LAB

〒150-0001 東京都渋谷区神宮前5-15-2
Tel. 03-3486-1922
営業時間:12:00~18:00(金・土・日曜日)

セゾン・アメリカン・エキスプレス®・カードが
ご利用いただけます。
https://shiharalab.com/

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