樹木の化石から太古の風景を想う
OAK Petrified Wood
樹木の化石から太古の風景を想う
OAK Petrified Wood

有機的で複雑な模様にしっとりと艶を帯びた独特の表情。珪化木はまだ日本ではあまり馴染みのない素材ですが、近年ヨーロッパをはじめとするインテリアのトレンドとしても注目されています。植物の化石の一種である希少な珪化木をプロダクトに落とし込む「OAK Petrified Wood」は、日本初の珪化木インテリア専門店です。

時を閉じ込めた木の化石

地球上の生物が多様化したのは約5億4000万年前以降のこと。そこから「古生代」「中生代」「新生代」という3つの大きな時代に分類されています。大まかな地球の歴史を俯瞰してみると古生代には三葉虫が栄え、中生代は恐竜やアンモナイトなどが全盛期を迎え、人類を含む哺乳類が反映したのは新生代になってからのこと。植物なども長い歴史の中で絶滅と誕生を繰り返しています。

珪化木は主に古生代から中世代の植物が化石化したものの一種。古生代には巨大なシダ植物の「鱗木」などが繁茂し、中生代には世代交代をするようにソテツ類やイチョウ類が生い茂りました。倒木した古代の木々が地中に埋没すると、やがて地層の圧力によって珪素を含んだ地下水が染み込み、何千年から何億年という月日を経て酸化珪素(シリカ)へと変化していきます。形を変えずに全体が化石化した樹木はやがて地殻変動によって大陸を移動し、再び地表に表出。それが珪化木として主にアフリカ、北アメリカ、南アメリカ、東南アジアなどで産出され、鑑賞用として取引されてきました。

複製できない素材の魅力

その最大の魅力は独特の質感と模様にあります。もとは自然の植物なので同じものは二つと存在しません。成分によって反応が変化するためその色合いは実に複雑で、このような摩訶不思議な模様が生まれるのはまさに地球の神秘です。珪素(シリカ)を多く含んだものは白っぽく変化し、炭素や酸化マンガンを多く含んだものは黒っぽく変化し、その中間色や他の成分が混ざるとなんともいえない複雑なマーブル模様を描きます。その生成プロセスは特定の自然条件が揃った場合にしか反応しないため、再現することは不可能。

一つひとつをじっくり眺めていると、年輪のようなものがうっすらと見え、木の中を通った水の痕跡が想像できます。この木が生えていた風景を思い浮かべていると、いつまでも見飽きることがありません。なかにはアメリカ合衆国ユタ州の渓谷「キャニオンランズ国立公園」を上空から眺めているような模様などもあり、大地との相似を感じさせます。有機的な模様から幾何学のような造形まで、その表情はまさに多彩な自然のアートといえそうです。

日本初の珪化木インテリア専門店

この不思議な存在感に魅了されたのが、OAK Petrified Woodのオーナー峯岸 巧(みねぎし たくみ)さん。若干26歳にしてブランドを立ちあげた背景についてうかがいました。

「学生時代はエンジニアの勉強をしていて、留学先のヨーロッパや北欧を旅していたときに初めて珪化木の存在を知りました。比較的大きな黒い珪化木がレストランに飾られていて、その不思議な魅力は帰国してもずっと印象に残っていたのです。卒業後はコンサルティング会社に就職し、AIの研究や開発を行っていました。ただ、ChatGPTに代表される生成AIが次々に発表されると、いくら独創的なコードを書いても、いつか代替される時が来ると実感したのです。人間のクリエイティブな部分ですらAIに複製・代替されてしまうことに違和感を覚えていた頃、旅行先でたまたま珪化木のインテリアに再会しました。数億年もの年月をかけて地球が生み出した、人間のテクノロジーでは決して複製出来ない、『唯一これきり』の存在に強烈に惹きつけられました。帰国後に購入しようと色々調べたのですが、日本ではきちんとした珪化木を扱っているショップやブランドがありませんでした。そこで、思い切って自分が日本で最初の珪化木を使ったインテリアの専門店を立ちあげようと思ったのです」

有機物であり、無機物でもある

ギャラリー内にはコーヒーテーブルやスツールなどの大型のインテリアから、ブックエンドやトレイなどの比較的小ぶりなものまでさまざまなバリエーションが並びます。実際に手に取ってみて驚いたのがその重さです。ローテーブルなどは50kg以上もあるそうで、見た目の軽やかさとは裏腹に化石の重厚感が実にミステリアスな印象を与えていました。一見すると天然木を使ったようなナチュラルな雰囲気でもあるのですが、大理石のような無機物のクールな佇まいも備える独特の表情は珪化木ならでは。峯岸さんは、「二度と同じものに出会えないと思うと、気に入ったものをどんどん自分のものにしたくなる(笑)」と言います。「最近ではテナントやホテルからの大型インテリアのオーダーも増えているのですが、『この柄と全く同じものでもう少し大きいものが欲しい』と言われてもなかなか応えられない場合がある」と話すように、大量生産できる工業製品にはない魅力を求めて、ギャラリーには若い人も多く訪れるようです。

若い世代にとって新鮮な体験

建築関係のクリエイターだけでなく、若い層からも関心を集めているのは意外な気もします。彼らにとって、なにが魅力的に感じるのでしょうか。

「SNSをメインに活動していることもあると思いますが、フォロワーや顧客の約80%が30代以下です。規格にあわせて効率良く作られたためものが当たり前の我々世代にとって、珪化木の存在感はある種の異物なのだと思います。アナログ回帰とか、90年代ブームとかのトレンドだけではなく、大量生産を見慣れた目には新鮮な驚きを与えるのではないでしょうか。この美しい模様や独特の存在感は、SNSで流れてきても見逃せないインパクトがありますよね。既製品や大量生産へのある種の反動というか、現代ならではといえるリアクションなのかなと、自分自身の経験も踏まえて感じています。オンラインだけでなくギャラリーを用意したことで、実際に足を運んでもらい、手に取ってもらえる。そうして珪化木の魅力を知ってもらえたらうれしいですね」

現代に合う作為と無作為

実際、ヨーロッパでも鑑賞用のオブジェから実用的なインテリアとして注目され始めたのもここ10年くらいとのことで、今後は少しずつ目にする機会も増えるかもしれません。自宅にも珪化木のシンプルなトレイを置いていますが、小物を飾ったり、小さな植物を置いたりして、良いアクセントを与えてくれています。シンプルな空間には有機的なアクセントを与え、高級な雰囲気や重厚な素材とも相性が良い。そんな柔軟性の高さもインテリアとして注目される理由なのかもしれません。「Unearth the Beauty Buried in Time.(時の中に埋もれた美を見出し、現代の生活空間に新しい選択肢を提供する)」というコンセプトを掲げるOAK Petrified Woodは、まさに時代的にもトレンド的にも現代の空間にマッチする魅力を発掘したといえそうです。

OAK Petrified Wood

東京都立川市錦町1-19-18 ヴィレージュ森田1F
Tel. 080-4333-7005

セゾン・アメリカン・エキスプレス®・カードが
ご利用いただけます。
https://oak-petrifiedwood.com

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