「downbeat RUNNING」は、2023年9月に新宿にオープンしたランニングギアの専門店。国内外から集められた個性的なブランドと、ランニングを自己表現ととらえたファッション性の高いラインアップが特徴です。場所柄、訪日外国人も多く訪れ、日本からグローバルスタンダードなランカルチャーを発信する基地として注目を集めています。
東京マラソンのコースでもおなじみの新宿・靖国通り。繁華街の中心エリアに新しいスタイルのランニングギア専門店がオープンしました。鮮やかなグリーンの看板が印象的な「downbeat RUNNING」の店内は、コンパクトながらもランニングシューズやアパレルがずらり。長らく大手企業の独壇場だったランニングシューズ業界のゲームチェンジャーともいえるスイス発の「On」や、フランス発の「HOKA」などを中心にユニークなブランドが並びます。一方、ナイキやアディダス、ニューバランスのようなグローバルブランドのシューズは見当たりません。「せっかく新しいお店を立ちあげるのに、ほかでも買える同じものを並べても意味がない。まだ日本では馴染みのないブランドも多いですが、自分の目で見て、話を聞いてきた、おすすめする理由のあるアイテムばかりです」と、ディレクターの今井 崇(いまい たかし)さんは自信をのぞかせます。
今井さんは父親が市民ランナーだったこともあり、こどもの頃から本格的なランニングシューズに憧れていたといいます。当時は純粋に靴自体のデザインやカラーリングに興味があったそうで、「ランナー向けの雑誌に別冊で特集されているシューズカタログを飽きることなく眺めていた」と笑います。年頃になると海外のミュージックビデオで音楽やファッション、HIP HOPカルチャーにどっぷりと浸り、十代で自らアーティストとしてもメジャーデビュー。バンド活動と並行して、アメ横のスニーカーショップで働き出します。その後も都内のさまざまな靴の専門店で働きながら、ストリートカルチャーやスニーカーブームの浮き沈みを目の当たりにしてきました。その後、大手スニーカーショップなどでバイヤーを務めながら、ブランドの販売促進としてランイベントなども企画します。自らもシューズブランドを立ちあげるなど、今井さんの人生は靴とともにあったと言っても過言ではなさそうです。
downbeat RUNNINGではシューズだけでなく、ランニングを軸としたさまざまなアイテムを扱っています。新しくお店を立ちあげた理由についてうかがいました。
「ランニングシューズ市場は、駅伝やオリンピックなどの競技向けパフォーマンスモデルを中心に、シーズンごとに素材や技術の進歩が如実に表れます。しかしエクササイズやフィットネス領域の中間層も含めて、マーケットは基本的には走行タイムを軸にカテゴリが分けられている。ですから、似通った商品群で構成されるのは当然なんです。楽しむことや気持ち良く走ることよりも、まるで部活の延長のように距離や時間を基準にアイテムを選ぶ傾向が根強いと感じていました。そんなとき、うちで扱っているnorda(ノルダ)が日本の代理店を探していて、価格やコンセプトの合うショップがないと相談されたのがきっかけです。世界では注目されているブランドなのに日本で相応しい受け入れ先がないというのは、違和感であると同時にチャンスでもあると感じました。そのタイミングでこの物件も出てきて、ファッションも含めたランニング専門のセレクトショップを立ちあげることにしたのです」
コンセプトである「ランニングカルチャーショップ」という考え方は、パリのランニングショップ「DISTANCE(ディスタンス)」のファウンダーと話した体験がヒントになったといいます。「世界のトレンドは仲間と走って、その後みんなでクラフトビールを飲んだり、旅行やキャンプのようにトレイルランニングを楽しんだり、ライフスタイルとして楽しみながら走っている」と、今井さんはそのとき文化的な魅力を感じたそう。シューズやアパレルを選ぶ基準も性能や価格だけではなく、もっとポジティブで楽しいものだったようです。ブランドの担当者と会えばそれぞれの考え方や姿勢もさまざまで、「品質の高さを担保するバックグラウンドに加えて、どのブランドも語るべきストーリーを持っている」と、そのマーケットが成熟している印象を受けたといいます。そのユニークなブランドをいくつかご紹介しましょう。
カナダのモントリオールで2021年に誕生した「norda(ノルダ)」。トレイルランニングなどの過酷な環境下において、信頼できる最高の一足を求めて開発されました。アッパーには合成繊維としてはトップクラスの強さと軽さを持つバイオベース「Dyneema®」を採用。アウトソールだけでなくミッドソールにも「Vibram®」製の素材を採用することで、軽量ながらも高いクッション性とホールド感を獲得しています。使い捨てて新しいモデルに買い換えることを勧めるよりも、コストを掛けても徹底的に品質と耐久性にこだわることをパフォーマンスと考える姿勢には、多くのランナーが共感しています。4万円以上と高額のモデルでありながら、独自のアプローチとライフタイムバリューの高さが人気を集めています。
ヨーロッパ発の新興ブランド「4T2(フォーティーツー)」は、パフォーマンスの高さをライフスタイルに落とし込んだデザイン性の高さが特徴です。走るときにだけ身につけるアイテムではなく、ランニングそのものをライフスタイルの中心に据えた考え方は、仲間が集い、お互いを鼓舞しながら高め合う新しいコミュニティを形成しています。ブランドのチームメンバーは創業者のジュリアンがオランダのアムステルダム在住、そのほかのメンバーはヨーロッパ各地に点在しているというのも実にユニーク。高性能でありながら、テクノロジーの進化について多くを語らないという姿勢も、過剰生産による無責任なサプライチェーンに抵抗する現代のトレンドに合致しています。ブランド名には、フルマラソンの距離である「42」と、「For Triathlon & Trail(T2)」という二つの意味が掛け合わされています。
アパレルも興味深いブランドがそろいます。イギリスのデザイナー、ティム・ソアーが2015年に立ち上げたランニングアパレルブランド「SOAR(ソアー)」は、パフォーマンスを最大限に発揮できるアクティビティウェアを提案しています。身体の動きに合わせて作られたテーラリングによるシルエットは、パフォーマンスだけでなく、アスレジャーなどが浸透してきたファッション業界に一石を投じるデザイン性を備えています。エクササイズを邪魔しないフィット感は、伸縮性や防水性、通気性などを備えた最新の素材を求めるアスリートにも人気です。ユニークなのは、ストイックな性能に加え、ショーツの内側にアロエ由来の成分を配合したライナーを重ねることで日焼けによる肌への負担を緩和するなど、快適性も大切にしているところ。男女を問わず、美しく走りたいランナーから注目されるブランドです。
筆者も国内外を問わず出張することが多いため、滞在先でのジョギングを楽しみにしています。自分の足で気の向くままに走っていると、その場所をとても身近に感じることができて印象が強く残るのです。今井さんも出張先で走ることも多いようで、「ランが目的というよりは、ちょっとした旅や冒険のエッセンスを求めて走ってみる。そうすると出張も楽しくなりますよね」と、盛り上がりました。
downbeat RUNNINGでは、毎週水曜日に「downbeat RUNNING SOCIAL RUN」などのランニングイベントを通じて、新宿の神社を巡るなど新しいランコミュニティやランカルチャーを創出しています。2024年2月には韓国にフランチャイズの1号店をオープンさせ、今後もアジアを中心に展開していくとのこと。“東京発”のランニングカルチャーが世界に羽ばたいていくのが楽しみです。
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