江戸時代から受け継がれる熊野筆の「SHAQUDA(シャクダ)」。その魅力は、確かな技術による極上の肌触りと、現代のライフスタイルにフィットした美しいデザインの融合にあります。日常の何気ない時間を贅沢なひとときに変える熊野筆は、使っているうちに所作までも丁寧にしてくれるようです。毎日肌に触れるものだからこそ、良いものを選びたい。一本の筆に込められた想いをご紹介します。
広島県の西部、四方を山々に囲まれた盆地の熊野町。江戸時代の後期、熊野の人々は農閑期の出稼ぎとして、奈良や有馬で筆を作る技術を磨いていったといいます。浅野藩の振興事業として御用筆司が生まれ、筆の産地として栄えました。180余年を経た現在でもそのシェアは全国でトップ。もともとは書道に使う「書筆」や絵画に用いる「画筆」などが中心でしたが、化粧用の筆を作り始めたのは1980年頃のこと。世界中のメイクアップアーティストに愛用され、いまでは世界にその名が知られています。
ところで、普通の筆と熊野筆はどこが違うのでしょうか。SHAQUDAを展開する有限会社瑞穂の代表取締役社長を務める丸山 長宏さんが「厳選した天然の毛先を活かす製法が熊野筆の命」だと教えてくれました。「熊野筆の毛先は肌に触れても、一瞬気付かないほど繊細で柔らかいのが特徴です。それでいてしっかりとコシがあり、使いやすい。この使い心地の秘訣は、毛そのものの品質に加えて、さまざまな特性を持った天然毛(動物毛)、人工毛を用途に合わせてセレクトし、ブレンドさせながら丹念に整えていくレシピにあります」と話します。天然の毛を選別する「選毛」、熟練の手技で仕上げる「整毛」、そしてコマと呼ばれる独自の木筒で多彩な穂先を形づくる「山出し」など、さまざまな工程を積み重ねることで一本の熊野筆が完成します。書や絵画の繊細な筆の運びに応えるために培われた熊野筆の技術は、美しさのための道具として生まれ変わりました。
シャクダのブランディングを統括する丸山 紗和子さんは、家業の熊野筆に職人技や機能のみならず、情緒的な感性を取り入れたいと思いながら、ブランドの世界観を模索していました。試行錯誤を重ねながら、クリエイティブディレクター・デザイナーである寺内 ユミさんと出会い、リブランディングチームを結成しました。ともに目指したのは、熊野筆の新しい価値を届けるブランドを生み出すこと。当初「ミズホブラッシュ」として展開していたオリジナルブランドは、2015年に寺内さんが加わったことで生まれ変わります。
「けしきを みたす」をコンセプトに掲げ、ブランド名も刷新。その道のりは「まさに想いを形にしていくプロセスだった」と、寺内さんは話します。
「まずはブランドの目指す世界観を共有するところから始めました。世界に通用する熊野筆のブランドを目指すにあたり、どんな場所に置かれ、どんな人に使って欲しいのか、それぞれの想いを語りあいながらブランドの在るべき姿を定めていったのです。デザインを実現する高い技術力はあったのですが、細部へのこだわりとコスト、プロダクト単体の品質と世界観の構築など、バランスをとりながら“ブランドの顔を作る”ことが私の使命でした。そこで、ブランド名も創業一族としての威信をかけ、丸山 紗和子さんと妹のマックニール 裕子さんの旧姓である“尺田”を由来に「SHAQUDA」としてはどうかと提案しました」
自身でも数々のブランドを立ち上げてきた経験を活かし、それぞれの想いを少しずつ実らせていきます。
SHAQUDAは2016年にイタリアのボローニャで開催された国際美容見本市「コスモプロフ」で世界デビューを果たします。同年、最初に手掛けた木軸一体型のメイクアップブラッシュ「UBU(ウヴ)」が国際的なデザイン賞「レッド・ドット・アワード」を受賞。「製造するうえで難しいデザインも多かったのですが、丹念に形にしていくことを大事に進めました」と話すのは、製造を統括するマックニール 裕子さん。モダンでありながら、どこか禅や粋など和の美意識に通じる世界観は、少しずつ、しかし確実に評価されていきました。2018年には世界最高峰のインテリアとデザインのトレードショー「メゾン・エ・オブジェ」に出展。現在ではヨーロッパをはじめアメリカや中国など、世界17カ国で展開されています。
発表から6年かけ、SHAQUDAのラインナップは少しずつ増えていきました。
それぞれの特徴をご紹介します。
すべすべの肌を実現するブラッシング・スキン・ケア「SUVÉ(スーヴェ)」
ブランドが認知されるきっかけとなったのが、“ブラッシング・スキン・ケア”をコンセプトにした「SUVÉ(スーヴェ)」。化粧だけでなくスキンケアとボディケアという時代のニーズに対応したもので、熊野筆のボディブラシなど20アイテムをラインナップ。ナチュラル素材のウォルナットと柔らかな穂先のコントラストが、筆とは思えないモダンな印象を与えます。肌本来の力を取り戻すための設えと所作。そんな、新しいスキンケア習慣をスーヴェは提案しています。
伝統とエシカルが融合した「UBU(ウヴ)」
「UBU(ウヴ)」は筆づくりの初心に立ち返り、金具を一切使わずに仕上げたエシカルな化粧筆のライン。17種類の穂先は、用途に合わせて山羊毛や灰リス、ポニー、ウィーゼル(いたち)などの天然毛が使われています。クルミオイルで仕上げたウォルナットの軸は心地よく、使うほどにしっとりと手に馴染みます。ブラシとして使いやすい形状を追求しつつも環境に優しいラインナップは、海外でも高い注目を集めました。
外出先でも美しく「MISUMI(ミスミ)」
コンパクトメイクアップブラッシュ「MISUMI(ミスミ)」は、その名の通り三角形のフォルムで統一されたフォルムが印象的。トライアングルのデザインモチーフを穂先に活かし、3Dの立体的な化粧筆が誕生しました。この穂先の開発は何度も試作と試行錯誤によって実現したもの。コンパクトでありながら使いやすく、顔の凹凸にフィットする独特の使い心地の穂先はメイクアップの場を大きく広げました。
多様化するメイクのニーズに応える「OWN(オウン)」
豊富な毛先のバリエーションを揃えた「OWN(オウン)」は、進化し続けるメイクシーンのニーズに応えるために開発されました。握り支点がカットされ、軽く設計された持ち手のフォルム。そして天然毛と最新の人工毛を織り交ぜた28種類もの穂先は、リキッドやエマルジョン、パウダーなどの化粧材に対応。塗る、描く、混ぜるなど、メイキャップの新しい可能性を切り拓くラインとして、クリエイティブなアーティストからも注目されています。
プレシャスな身繕い「JIVA(ジーヴァ)」
2021年に発表された「JIVA(ジーヴァ)」は、プレシャス・グルーミングがコンセプト。第一弾のボディブラシは、毛量のボリュームやサイズ感がよりゴージャスになり、プレシャスな世界観を提案しています。穂先を横方向に動かすと優しく、縦方向に動かすとしっかり洗いあげるシャクダ独自の毛束構造は驚きです。長短を組み合わせた穂先が生み出す泡立ちも豊かで、バスタイムがよりいっそう心地よい時間に変わります。
SHAQUDAのプロダクトは、熊野筆の伝統を守りながら多様化するライフスタイルに新しい世界観を提案しています。実際に「SUVÉ(スーヴェ)」のボディブラシで身体を洗ってみると、一日の疲れをいたわっている気分になります。柔らかな毛先から生まれる優しい泡に包まれて、明日への英気を養う時間。それは、“本当の豊かさとは、何気ない暮らしの瞬間を大切にすること”だと教えてくれました。丁寧に作られた一本の筆が、忙しい毎日を見つめ直すきっかけになりそうです。
有限会社瑞穂 アトリエショップ
〒731-4213
広島県安芸郡熊野町萩原2-7-35
Tel. 082−854ー1137
公式サイトから商品をお買い求めいただけます。
セゾン・アメリカン・エキスプレス®・カードがご利用いただけます。
https://shaquda.jp/