食の新しいエンターテインメント
CRAZY KITCHEN
食の新しいエンターテインメント
CRAZY KITCHEN

企業やブランドによるイベントなどもすっかり減り、華やかな料理からも遠ざかって久しいこの頃。しかし、パーティを彩っていたケータリング料理はいま、サステナブルな取り組みと融合して着実に進化しています。「CRAZY KITCEHN」は美味しくて美しいだけでなく、社会課題を解決できる新しいケータリングサービスを提供。これからのパーティ会場では、偶然出合った一皿をきっかけに新しい食の世界を知ることができるかもしれません。

その日、その場所にしか存在しないレストラン

「食事だけを提供するデリバリーに対して、ケータリングサービスとはレストランをまるごと現地へ運ぶサービスです。その語源が “要求に応じること”を意味する“cater”から来ている通り、食材の手配から現地でのシェフによる調理はもちろん、テーブルウェアなども含めた会場の雰囲気作りやスタッフのキャスティングまで行います」と話すのは、オーダーメイドのケータリングサービスを提供する「株式会社CRAZY KITCHEN」の代表取締役社長である土屋 杏理(つちや あんり)さん。企業やブランドのレセプションパーティやローンチイベントなどを年間100件以上も手掛けてきました。

素敵なパーティを続けていくために

土屋さんはもともと、オーダーメイドウェディングを得意とするCRAZY WEDDINGの出身ということもあり、華やかな演出には自信がありました。しかし、美味しいと言ってもらうたびに捨てられるカトラリーや、演出のために食べきれないほど食事を並べることに違和感を感じていたそうです。それは、自分たちの持続可能性に対する問いでもありました。

「パーティシーンでは残った料理やカトラリーは廃棄されるのが当たり前でした。せっかく素晴らしいイベントなのだから、大量に発生するゴミや食べ残しを減らすことができたらもっと素敵なのに。見た目や雰囲気だけでなく、もう一歩踏み込んだ提案ができないだろうか。それがわたしたち“CRAZY KITCHEN”らしさだと考えて、最適なボリュームを美味しく丁寧に作り、それでも残ってしまった料理はお持ち帰りいただけるようなスタイルを提案してきました。使い捨てのカトラリーもできるだけ再生可能な素材のものに代え、パーティの数だけ発生する無駄な負荷を少しでも減らしていきたいと思っています。そして、そうした演出がみんなにとって気持ちの良いことだと感じてもらえたら嬉しいですね」

サステナブルなケータリング

近年、企業もSDGsやESG投資が当たり前になり、華やかさとサステナビリティを両立させるニーズが高まりました。そこで2019年、廃棄される食材やフェアトレードで輸入される素材をメイン食材に使った「サステナブルコレクション」を発表しました。フレンチ出身のシェフ、武本 南(たけもと みなみ)さんにお話を伺いました。

「もともとわたしたちは調理の過程で発生した生ゴミをコンポストで肥料にし、提携農家さんで次の野菜に活かしていただいていました。そうしたやりとりのなかで魅力的な生産者さんと繋がってきたのですが、このコレクションに相応しい素材を集めるにあたっては、生産される背景や作り手のストーリーをより大切にしています。いずれの食材もまだあまり市場に出回っていないものすが、フレンチのジビエを調理する知識などを見直すことで新しい料理の可能性がひろがりました。美味しそうに見えて、食べたら実際に美味しい。そのときに“これは何という食材だろう”と興味を持ってもらえたら、食の新しい可能性を知ってもらえるかもしれない。サステナブルな素材でありながら料理としても満足感のある体験をして欲しいと考え、前菜2種、お魚料理1種、お肉料理1種、ご飯1種、デザート1種の6品で1名様分のコースを構成しています」

ソーシャルグッドを味わう

それぞれの料理はどのようなストーリーを持ち、どのような味に仕上げているのかご紹介しましょう。

ヒオウギ貝と八幡平マッシュルームのサラダ
愛媛県産のヒオウギ貝は、真珠を養殖する際に副産物として生産され、廃棄されていた貝です。デリケートな食材のためスーパーなどでは見かけませんが、ホタテのような味わいは繊細で美味。合わせるマッシュルームは岩手県の「ジオファーム八幡平」のもの。引退した競走馬の糞を活用した肥料で育ったもので、カリフラワーのムースとマッチします。

ダチョウのタルタル
色鮮やかなタルタルは鹿児島県のダチョウを使ったもの。ダチョウは牛や豚に比べて飼料や水などの環境負荷が少なく、病気にも強いため貴重な食材として注目されています。また、低脂質で高タンパク、おまけに体内の菌も少ないため生食にも向いている食材です。臭みはまったく無く、牛肉の赤身のようなさっぱりとした味わいです。

シロチョウザメのカダイフ揚げ
宮崎産県のシロチョウザメは、キャビアを取り除いた後の個体を活用したもの。高級食材として知られるキャビアは塩味が特徴ですが、母体のチョウザメは白身魚のような優しい味わいです。サメと聞くとアンモニア臭が気になる方も多いかと思いますが、チョウザメは淡水魚。鯛とフグの中間のような品の良い食感と味が楽しめます。

イノシシのグリル
石川県能登地方で害獣となってしまったイノシシを使ったグリルは、さらりとした脂に黒ニンニクの味噌や赤ワインのソースがよく合います。能登地域にはもともと生息していなかったイノシシですが、餌を求めて泳いで移り、繁殖してしまいました。現在では農作物への被害なども甚大で、石川県ではイノシシ肉の魅力を積極的にPRしています。

棚田米と銀鮭の手まり寿司
東北の若手漁師集団「フィッシャーマン・ジャパン」によるASC認証を取得した銀鮭を使った手まり寿司。サステナブルシーフードを証明するASC認証には、生産者だけでなく提供する側も同じ認証を取得する義務があり、今後の認知拡大が期待されています。新潟県の「まつだい棚田バンク」のお米を使った酢飯と合わせた一品です。

アマゾンカカオのテリーヌ
デザートはアマゾンカカオのテリーヌ。料理人の太田哲雄さんから提供されるカカオは酸味が強く、大人な味わい。テリーヌにすることでフルーティな香りが際立ち、コクと酸味のほどよいバランスが食後の満足感を満たします。フェアトレードによって新しい食の可能性を見出したアマゾンカカオの味は新鮮で、強烈なインパクトを与えてくれます。

新しい価値に気付くこと

サステナブルコレクションでは、害獣や廃棄される素材が積極的に取り入れられていますが、食べてみるとなぜ捨てられてしまうのか不思議なほど美味しいのです。「わたしたち自身の持続可能性を追求するプロセスとして、こうした素材に新しい価値を与えていきたかったんです。パーティという不確定な要素の多い場所だからこそ、素敵な偶然として食材の背景に興味を持ってもらえるチャンスがあると思っています」と話すのは、プロデューサーの菊地 妙子(きくち たえこ)さん。つまりこれらは食材として価値がないわけではなく、流通のプロセスが確立されていないために活用されていなかった存在なのです。江戸時代にはマグロも赤身が重宝され、脂っこい大トロは捨てられていたと言いますが、そうした存在に新しい価値を見出すことは食文化の成熟において興味深いアプローチです。

贅沢の先にあるもの

新型コロナウイルスによる自粛期間に、すっかり遠ざかっていた華やかな社交の場。感度の高い人たちが集まり、最新のトレンドが行き来する場所だからこそ、こうした取り組みが広がる絶好の機会でもあると言えます。美味しいもの、楽しいことが地球に優しいアプローチであれば、みんなが積極的に選択したり興味を持てるはず。「正しさを主張しあうのでは無く、心地よい選択肢が世の中に増えると良いですね。それがこれからの贅沢だと思います」と、土屋さん。パーティの主催者にとっても、持続可能な料理を来場者に提供できるのは嬉しい限り。新しい食のエンターテインメントとして、食べることに新しい気付きを与えてくれそうです。

株式会社 CRAZY KITCHEN

〒142-0053 東京都品川区中延6-3-17
Tel. 03-6426-6280
受付時間:10:00〜20:00
https://crazykitchen.jp

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