大人のための、泊まれるブルワリーへ
98BEERs/STAY366
大人のための、泊まれるブルワリーへ
98BEERs/STAY366

その土地で作られたビールをいただき、その土地で作られたワインと料理のペアリングを楽しみ、お腹も心も満たされたまま心地よい眠りにつく───。そんな贅沢な体験を叶えてくれるのが、2022年に甲州市塩山に誕生した「98BEERs」と併設ホテル「STAY366」。お酒を愛するオーナーが作った、大人のための泊まれるブルワリーをご紹介します。

森の中に誕生したブルワリー

山梨県甲州市塩山(えんざん)。甲州八珍果と呼ばれるブドウや桃といった果物の栽培が盛んな地域です。日本ワインの発祥の地とされている勝沼とともに、日本屈指のワイナリーエリアとして発展してきました。そんな塩山にブルワリー「98BEERs」と併設ホテル「STAY366」がオープンしたのは2022年10月のこと。富士山と甲府盆地を望む静かな森に囲まれた、大人のための泊まれるブルワリーです。

元保養所施設をリノベーション

醸造所とタップルーム(バースペース)、ラウンジ、そして3つの客室を備える建物は、もともと東京の幼稚園が保有していた保養所をリノベーションしたもの。黒を基調にした外観がシックな印象を与え、大きな窓越しに並ぶ醸造タンクが並ぶ壮観な景色に胸が高鳴ります。「ガラス張りの天井の高い空間を見た時、ビールの醸造所にぴったりだと思いました。すぐそこで作られたおいしいお酒を飲んで、せっかくならそのまま泊まっていけたら最高じゃないですか。それでホテルも作ってしまいました」と話すのは、オーナーの平山 繁之(ひらやま しげゆき)さんです。

ワイナリーから始まった場所

実は「98BEERs/STAY366」から少し山道を下ったところにあるワイナリー「98WINEs」のオーナーで醸造家でもある平山さん。2017年にワイナリーを設立し、2019年から販売を始めました。販売開始からわずか5年ながら、ワインツーリズムに取り組む世界最高のワイナリーを選出する「ワールズ・ベスト・ヴィンヤード2023」に入賞。大手ワインメーカーで醸造責任者を務め、長年に渡って品質管理や商品開発に携わってきた平山さんのワイナリーとあって、順調な滑り出しです。「とはいえワイン造りは自然の果実が相手ですから、不作の年もあればこの先ブドウが獲れないこともあるかもしれない。ここに出合ったタイミングは、そういったことに左右されない事業を模索している時でもありました」と、ブルワリー兼ホテルの開業を決めた当時を振り返ります。一方で「ワインのことしかわからないので、ブルワリーもホテル経営も初めて尽くし。とくにホテルに関しては、良い意味で、常識はずれでめちゃくちゃだと思いますよ」と笑います。

遊び心あふれる3つの客室

アグリツーリズムなどのトレンドも手伝い、ホテルを併設するブルワリーが続々登場する昨今。同じ建物のなかに醸造所と宿泊施設があるのはここ「98BEERs/STAY366」だけです。運が良ければ月に何度か行われる仕込みの日に当たることもあるそうで、「麦芽が糖化する際の甘い香りが客室まで漂います。ビール好きにはたまらないですよね。苦手な方もいるでしょうが、泊まれるブルワリーの醍醐味と感じていただけたら」と施設内を案内していただきます。

3つある客室は、それぞれ北欧風、ヨーロッパ風、ニューヨークSOHO風とスタイルが異なります。「色々悩んだ末にどれかひとつに選べなかったというのが正直なところ。結果的に全室に泊まってみたいと言っていただくことも多く、うれしい限りです」。なかでもSOHOをイメージした客室「-朱- AKE -」は24時間醸造所を望むことができるというユニークなつくりで、泊まれるブルワリーならではの遊び心にあふれています。

最高な気持ちで眠れる場所

室内着や枕カバー、ハンガーカバーなどのリネン類は、山梨に工房を構えるリネンブランド「wafu」によるSTAY366オリジナルのもの。繊細なリネンのために、わざわざ洗濯室を設えたというほどのこだわりです。ベッドカバーやカーテン、布団まで、できる限り山梨県産をセレクトしています。タオルやアメニティ、家具などの調度品も一つひとつ丁寧に選ばれたものばかり。「私たちの本業はお酒造りです。ですから、ホテルはビジネスライクには考えず、とにかく良質で贅沢に、最高な気持ちで眠れる場所にしようと考えました。そんな想いから、365日の先にある特別な一日をイメージして『STAY366』と名付けています」。“常識はずれでめちゃくちゃ”に心地良いホテルは、こうして誕生したのです。

作り手との会話を楽しみながら

ここでの滞在は兎にも角にもお酒三昧。「20歳以下は宿泊不可」という思い切った規約も“大人のためのとっておき”を象徴しています。チェックインを済ませたら、希望者はまずはワイナリーでテイスティング。続いて宿泊者のためだけに開放されたタップルームへ移動し、夕食までたっぷりとクラフトビールを頂きます。「ビールやワインを飲みながら、ぜひ作り手やスタッフとの会話も楽しんでいただきたいですね」と平山さん。98BEERsと98WINEsに共有する「98」という数字には、自分たちだけでは100にはなれない、さまざまな人とのコラボレーションによって100になり、200や300をめざしていく、という想いが込められています。だからこそ、ゲストとのコミュニケーションはとくに大事にしているといいます。1日2組限定ならではのアットホームな雰囲気も、もうひとつの魅力です。

土地に根付いたクラフトビールを

タップルームでは、セゾン、ベルジャンビター、レッドエールの3種の定番ビール「九八(きゅうはち)」シリーズをはじめ、山梨の果樹を使った季節限定の「叙景(じょけい)」やアルコール度数8%以上の長期熟成向けビール「四方(よほう)」の3つのシリーズのほかに、このタップルームでしか飲めない限定ビールも頂くことができます。この土地が蓄えた柔らかな水を生かした口当たりの良さと、瓶内で二次発酵させたきめ細やかで優しい泡が魅力です。近年急激な勢いでクラフトビールの醸造所が誕生する中で、98BEERsのめざすところをうかがいました。

「ワイン作りはその土地で獲れるブドウに依るもので、神様に与えられた特別な場所だからこそ作ることができるお酒だと思っています。一方でビールは場所を選びません。だからあえて98BEERsではこの場所に根付いたクラフトビールを作りたいと思っています。福生里(ふくおり)の清らかな水を生かしたビアスタイルに特化し、地元の果樹を使い、瓶内で発酵させる製法を選ぶ。ここならではの味わいに挑戦し、ワインのようにテロワールを感じる文化として根付かせていきたいと思っています」

蕎麦懐石とワインのペアリング

クラフトビールをたっぷり楽しんだあとは、お待ちかねのディナータイムです。頂くのは施設内で毎日石臼で挽き、手打ちした蕎麦を使った蕎麦懐石。全10品のうち8品に対して一品ごとにペアリングされるのは、ワイナリーのバックヴィンテージワインを中心としたラインアップ。蕎麦懐石とワインとは少し意外な提案ですが、98WINEsのワインは甲州とマスカット・ベーリーAという日本固有の品種のみで作られており、日常の食卓にも寄り添う味わいが特徴。「出汁のような繊細な味わいにもフィットする98WINEsの味わいを実感いただけます」と平山さん。またこのペアリングでは、ワイナリーで購入できない熟成ワインを頂けるというというのも見どころのひとつです。

お酒を楽しむオーベルジュ

2024年春には、敷地内にペットと泊まれる山小屋タイプの客室もオープン予定。さらに今後は地域の活性につながる取り組みにも力を入れていきたいと話してくれました。すでに平山さんの誘致によって近隣にいくつか宿泊施設が開業しているそうで、輪の広がる塩山エリアに期待が高まります。
その土地で作られたビールに会いにいき、最高な気持ちのままそのまま眠るという大人の楽しみ方。お店や自宅で気軽に飲むのもおいしいものですが、森の香りや空気に包まれて頂く一杯には、わざわざ出向いてこそ出合えるその土地ならではの味わいがあると感じました。お酒好きのためのお酒を楽しむオーベルジュ、贅沢な休日の選択肢がまたひとつ増えたような気がします。

98BEERs/STAY366

〒404-0056山梨県甲州市塩山福生里462-1

セゾン・アメリカン・エキスプレス®・カードが
ご利用いただけます。
https://www.stay366.jp

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