丈夫で美しい近代漆器ブランド
tak.
株式会社竹中
丈夫で美しい近代漆器ブランド
tak.
株式会社竹中

株式会社竹中が手がける「tak.」はFUN + TOUGH + CREATIVE をコンセプトに、美しく丈夫なフードウェア(食器類)を提案するブランド。入れ子状に器が一つに収まる修行僧の「応量器」に着想を得た「FIT DISH」をリリースするなど、古くから大切にされてきた器の考え方を現代の暮らしにフィットさせたアイテムがユニークです。漆器産地から誕生した丈夫で美しい近代漆器の魅力を探しに、石川県の山中温泉地区を訪ねました。

石川県三大漆器産地、「木地の山中」

石川県加賀市山中温泉地区で作られる「山中塗」は、木目模様を生かした自然な風合いが特徴の漆器。古くから木地(きじ)挽きが盛んだったこの地域は、挽物木地全国一の生産量を誇り、「塗りの輪島」「蒔絵の金沢」に並ぶ「木地の山中」として県内の漆器三大産地に数えられます。山中塗が生まれたのはおよそ400年前の安土桃山時代。当初は温泉客の土産物として販売されていましたが、江戸時代以降、漆塗りや蒔絵の技術を取り入れ、贈答品や茶道具へと発展していきます。昭和33年頃からはプラスチック素材を用いた近代漆器の生産が始まりました。

老舗メーカー発の近代漆器ブランド

近代漆器とはプラスチックの素地にウレタン塗装を施したもので、山中塗の伝統技術で培われた高度な塗装や蒔絵の技術が生かされています。山中温泉地域に本社を構える「株式会社竹中」は、2025年で創業100年を迎える老舗漆器メーカーで、近代漆器の生産にいち早く取り組んだパイオニア的な存在。「創業者の祖父は元々手塗りの職人でしたが、私の父が生まれた頃から漆器の販売を始めました」と話すのは代表取締役の竹中 俊介(たけなか しゅんすけ)さんです。90年代後半に先代の後を継いで3代目に就任以来、山中漆器の可能性を広げる挑戦を続けています。「OEMを中心とする傍らで自社製品を企画、販売をしていましたが、景気や小売店の都合に左右され、メーカーが価格決定力を持つのは難しいと思い知らされました。そこで企画力を整え、自社ブランドの開発に力を入れてきました」と、既存のOEM事業の傍で3つのブランドを立ち上げました。最初にアメリカ、カナダ、ヨーロッパへ向けた「TAKENAKA」、2015年には国内向けブランド「TAKENAKA JAPAN」をローンチ、そして2017年に誕生したのが、FUN + TOUGH + CREATIVE をコンセプトにした「tak.」です。

塗りにこだわらない「tak.」

TAKENAKAやTAKENAKA JAPANは伝統技術の塗りにフィーチャーしたラインであるのに対し、tak.はあえて塗りにこだわらないブランド。東京・蔵前の「アッシュコンセプト株式会社」をパートナーに迎え、デザインやコンセプトに力を入れたラインアップが魅力です。「私たちは塗りを施すことで他の食器メーカーとの差別化を図ってきましたから、塗りにこだわらないという選択はいままでにない挑戦でした」と竹中さん。さらにバイオマスプラスチックやリサイクルPETを使用するなど、環境に配慮した原料を取り入れたことも新しい試みでした。
「アッシュコンセプトの名児耶 秀美(なごや ひでよし)さんとは同い年で、実はお酒を飲みながら意気投合したことをきっかけにご一緒させていただくことになったんです。すばらしい企画力で、例えばクマを象った『KIDS DISH』は、シンプルながらありそうでなかったアイテム。安全性や利便性に可愛さを備えていて、出産や誕生日のお祝いなどに選んでいただいています」

温故知新、FIT DISH

そのtak.から2023年に誕生した「FIT DISH」は、応量器に着想を得たアウトドア用フードウェア。応量器とは禅宗の修行僧が使用する入れ子式の器のことで、精度の高い木地挽きの技術を得意とする山中漆器の産地でも盛んに生産されていました。「古くから大切にされてきた器の考え方を現代の暮らしに応用したものです」と竹中さん。温故知新をテーマに掲げるFIT DISHの開発にあたり、改めて職人の木地挽きの技術には驚かされたと続けます。「何しろ数ミリ単位の緻密な削り出しを人間の手でやっていたわけですから。これを再現するにあたって何度も試作を繰り返し、完成までに実に1年半かかりました。もっとギリギリまで隙間を詰めたかったのですが、金型屋さんにさすがにこれ以上はやめておきましょうと止められました(笑)」と当時を振り返ります。

現代の暮らしにフィットする

ラインアップはプレート、ボウル、タンブラーの3種。それぞれ4サイズが緻密な設計で一つに美しく収まり、持ち運びの手軽さはもちろん、収納時も場所を取りません。塗りではなく、フィラーと呼ばれる素材を混ぜ込むことで表情のある色味と質感に仕上がっています。付属の蓋の裏面がカッティングボードになっているのも便利。蓋をすることで食器がずれた時にカタカタと音が鳴るのを軽減するというのもアウトドアシーンではうれしいポイントです。電子レンジや食洗機でも使用でき、マイナス20℃から140℃まで耐えられるというのもプラスチックを使った製品ならではの特徴で、装いから機能まで現代のライススタイルに寄り添ったアイテムです。

インドア用FIT DISHも発売予定

「環境汚染の観点で悪者にされることの多いプラスチックですが、それはある側面に過ぎず、私は20世紀の優秀な発明だと思っています。耐久性や安全性も高く、正しく使えば決して使い捨てではありません。竹中では長く楽しんでいただくための塗装であり、デザインであると考えています。食卓が楽しく豊かになる製品を作っていくとともに、プラスチックの良さを発信していきたいですね」

2024年初夏にはインドア向けのFIT DISHも発売予定。こちらは内側と外側を塗り分けてあり、プラスチックの質感を感じさせないリッチな仕上がりが印象的です。4サイズそれぞれ色が異なる予定で、食卓がより華やかになる予感。新生活や新しい季節の始まりに、食卓を楽しくしてくれる丈夫で美しい食器を選んでみてはいかがでしょうか。

tak.

オンラインショップ:https://takenaka.store
セゾン・アメリカン・エキスプレス®・カードが
ご利用いただけます。
https://tak-takenaka.jp/

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