The Power of Graphic Design
佐藤可士和展
ロゴを「作品」として鑑賞したくなるクリエイティブディレクター
The Power of Graphic Design
佐藤可士和展
ロゴを「作品」として鑑賞したくなるクリエイティブディレクター
サーバーメンテナンスのため、2021年10月27日(水)AM5:00〜8:00の間
PT MAGAZINEはご覧いただけません。ご了承ください。

ユニクロ、セブン-イレブン、T-POINT、楽天、国立新美術館、Honda N、ヤンマー、今治タオル、くら寿司、明治学院大学……挙げていくときりがないほど、身近に存在する印象的なロゴマークの多くは、クリエイティブディレクター・佐藤可士和(かしわ)によるものだ。まさに「時代の寵児」といってよいほどの売れっ子である。その活動領域は、単なるグラフィックデザインの枠を超えて、私たちの暮らしに大きな影響を与えている。今回の展覧会は、全体の空間構成を佐藤可士和自らが手がけており、「展覧会がまるごと作品」という刺激的な展覧会でもある。

著名デザイナー

グラフィックデザイナーの名が一般的に強く印象づけられるようになったのは、1964年「東京オリンピック」の公式ポスターをデザインした亀倉雄策あたりからではないだろうか。それまで「図案」などと呼ばれていたデザインの仕事は、印刷業務の一部として扱われており、作家性を伴うことはほとんどなかったそうだ。現在では田中一光、浅葉克己、原 研哉、永井一正、松永 真、佐藤 卓などの名が著名デザイナーとして広く知られており、女性では長嶋りかこ、吉田ユニなどが活躍している。しかし、誰がどのデザインをしたか、たちどころに思い浮かべることは難しい。コマーシャルの世界は、基本的に匿名性といったところがあるからだ。ところが、佐藤可士和の場合、手がけたビジネスのサクセスストーリーとともに、その名も一緒に語られることが多い。

グローバル旗艦店「ユニクロ ソーホー ニューヨーク店」 屋外広告(工事中店舗の板囲い)2006年
「国立新美術館のシンボルマークとサイン計画」 2007年
佐藤可士和

「本質」を突くビジュアルデザイン

1965年東京生まれの佐藤可士和は、多摩美術大学グラフィックデザイン科を卒業後、株式会社博報堂に入社。社内をスケートボードで走り回っていたという逸話を残すほどユニークな存在だった。35歳でクリエイティブスタジオ「SAMURAI」を設立して独立、今回の展覧会は、博報堂時代を含めた30年間の活動の集大成として企画されている。その魅力は、ひと言でいえば、物事の「本質」を捉える情報の整理能力にあるのではないだろうか。私たちは、持てるもののすべてを見てもらおうと、ついあれこれ欲張ってしまう。その結果、何を見せたかったかがぼやけてしまい、こちらの意図はなかなか相手に伝わらないことになる。多弁は、頭の中がよく整理されていない人に多いという。ところが佐藤可士和のロゴデザインは、居合のひと太刀のように、無駄のない一閃で鋭く本質を突く。

HONDA「ステップワゴン」ポスター(B0判 2連) 1998年
「今治タオル」ブランディングプロジェクト トータルプロデュース2016年―

ブランドは時間価値

ロゴは、ブランディングの基本となるものだ。「ブランド(Brand)」は焼印を意味しているそうだが、そこに押すのは自分の名前である。「これは俺がつくったチーズだ」とか、「このウイスキーは私の名にかけて品質を保証しよう」といった心意気とともに、木箱に自分の名前を焼きつけるのである。口に入れるものは特に、どこの誰がどのようにつくったのか、よく素性の知れたものでないと安心できない。ブランドは、わが国の「のれん」と言い換えてもよさそうだ。その「のれん」の名前を見たり聞いたりしただけで、たちどころにそれがどのようなものかわかるのが「のれんの持つ力」である。ポルシェやロレックス、エルメス、ソニー、ホンダといったグローバルブランドは、名前を聞いただけですぐにそれとわかる。ブランドの本当の価値は、多弁を弄しなくても瞬時にそれとわかる「時間価値」にこそあるのではないだろうか。そうした意味で、わかりやすくて力強い佐藤可士和のロゴデザインは、多くの企業に好まれるのだろう。

「日清食品関西工場」トータルプロデュース 2019年

越境するデザイン

もうひとつ、佐藤可士和の驚異的なところは「越境性」である。グラフィックデザイナーの域にとどまっていれば、ロゴやポスター、広告のデザインをして完結する。もう少し広げて、アートディレクターであれば、デザインの領域にかかわるさまざまな業務を手がけることになるが、そこまででおしまいである。ところが、佐藤可士和はクリエイティブディレクターとして、ブランディングに関わる一切のことを手がける。ユニクロなどでは、グローバルブランド戦略の一環として、海外店舗のデザインから流通、プロダクト、パッケージデザインまで、さまざまな領域をやすやすと乗り越えて、トータルにデザインしていく。モンテッソーリ教育を導入している東京・立川市の「ふじようちえん」リニューアル計画では、手塚建築研究所と組んで、建物のグランドデザインを手がけている(日本建築学会賞受賞)。

「宇宙」1974年 色紙のコラージュ
シャトー・ワイマラマ ワインエチケット「MINAGAWA Kashiwa Sato Limited Edition」ポスター 2020年
「八代目中村芝翫襲名披露公演 祝幕」クリエイティブディレクション 2016年 歌舞伎座

本当に大切なものだけが残る

佐藤可士和のさまざまな活動を見ていくと、デザインが時代の影響を受けつつも、時代を動かしていることがよくわかる。それも、デザインにとどまらず、クリエイティブディレクターとして企業のブランディング全体に関わるとき、 企業のミッションやビジョン、社会貢献への役割などがあらわになるので、それを可視化する佐藤可士和の役割はより重要になる。企業側にとっても、彼の手腕に企業の命運の多くの部分を委ねることになるので、よほどの信頼関係がないと実現に至ることはないだろう。時代が彼を必要とし、企業側も彼を必要とするのは、お互いに「本質を突き詰める力」を必要としているからではないか。本質を突き詰めていくと無駄が削がれ、シンプルでクリアなもの、本当に大切なものだけが残る。コロナ禍で、佐藤可士和の出番は、さらに増えていきそうだ。

「LINES」2020年 吹付塗装/ステンレススティール
「FLOW」2020年 岩絵具/和紙

トップビジュアル
「ふじようちえん」リニューアルプロジェクト トータルプロデュース 2007年

佐藤可士和展

会期:2021年2月3日(水)〜2021年5月10日(月)
会場:国立新美術館(東京・六本木)
開館時間:10:00〜18:00(入場は閉館の30分前まで)
※開館時間は変更になる場合がございます
休館日:毎週火曜日 ただし2月23日(火・祝日)、5月4日(火・祝日)は開館。2月24日(水)は休館
問合せ:Tel. 03-5777-8600(ハローダイヤル)

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