初摘み海苔の専門店
ぬま田海苔
初摘み海苔の専門店
ぬま田海苔

奈良時代から食べられていたという海苔。食のプロが集まるかっぱ橋道具街に本店を構える「ぬま田海苔」は、希少な初摘み海苔だけを扱う専門店。その品質の高さと海苔に対する知識の深さは、海外の一流シェフが訪れるほど。その年にしか味わうことのできない初摘み海苔の魅力は、世界の“WASHOKU”に新しい驚きを与えているようです。

海苔専門のセレクトショップ

その昔、東京湾は多くの海産物が採れる豊かな漁場でした。「ぬま田海苔(開業当時は沼田治雄商店)」創業の地である川崎の海でも「大師のり」という上質な海苔が養殖されていたと言います。「その歴史も幕を閉じたため事業を縮小し、少し前までは母がひとりで店の切り盛りをしていました」と、四代目当主の沼田 晶一朗(ぬまた しょういちろう)さんは当時を振り返ります。お店を続けたいという母親の想いに応えるため、当時アパレル店の店長だった沼田さんは兄弟と相談し、お店のリブランディングに乗り出します。「お客さまに良さを伝えるという意味では同じ仕事だと思ったんです。母が好きだったお店を続けられることに意義を感じました」と話します。

海苔の美味しさは山でつくられる

ぬま田海苔で扱っている海苔は、すべて有明海で育てられたもの。佐賀県、福岡県、熊本県にまたがる九州最大の湾ですが、なぜ有明海で美味しい海苔が育つのでしょうか。

「有明海の干潟は栄養が豊富なんです。この栄養は最初から海にあるわけではなく、山から川を伝って運ばれてきます。森や山の樹は冬になると葉を落とし、その葉は微生物に分解されて腐葉土になりますよね。その時、フルボ酸鉄という栄養素が発生し、川を伝って海に注ぎ込まれます。これが海の生物にとって大切な栄養源になります。有明海は筑後川をはじめとするさまざまな水系から豊富に水が流れ込むため、栄養が豊富なだけでなく、海の場所によって海産物の味に個性が出ます。それを“メロワール”というそうで、フランス人のお客さまに教えられました」

海の中に流れる川

流れ込んできた川の水は海水よりも比重が軽いため、海のなかでも川のまま沖合まで流れているそうです。なんとも幻想的な生育環境ですが、この“美味しいと感じる理由”には、もうひとつ興味深い話が続きます。

「有明海にはもうひとつ特徴があって、干潮と満潮時の差が大きいんです。干潮時には海苔を育てている網が海面に顔を出し、滅菌したり、うま味を熟成させます。そして満潮時には海の中にゆっくりと浸かり、海水の栄養をたっぷりと吸収する。これを繰り返すことで柔らかく、風味強い海苔が育ちます。良い海苔が育つ条件が揃っていることに加えて、実は東京湾と有明海は湾のかたちや流れ込む水系の複雑さが似ていることに気づきました。味覚は遺伝子で決まると言われているのですが、僕が美味しいと感じる海苔が育つ場所は、先祖が美味しいと感じたであろう川崎の海苔が育った地形に似ている。もしかしたら味わいとか風味が近くなるのかもしれません。まさか鹿島と川崎に類似点があるなんて思ってもいなかったのですが、不思議な縁を感じます」

初摘み海苔とは

海苔は毎年11月頃から3月にかけて大切に育てられます。この期間に10回ほど収穫されるのですが、ぬま田海苔では「秋芽(あきめ)の初摘み(はつづみ)」と呼ばれる最初の収穫で採れた海苔だけを厳選して取り扱っています。豊かな香りと柔らかな食感が特徴で、もっとも栄養価が高い初摘み海苔は、約60億枚と言われる年間生産量のわずか1%にも満たない貴重なもの。地元の漁師さんも「こんな贅沢な海苔、なかなか食べられない」と太鼓判を押すそうです。豊かな海の栄養をたっぷりと吸収し、ゆっくりと太陽の光を浴びて育った海苔は、採れた場所と等級で区分けされていきます。

海苔のフルネーム

ぬま田海苔に並ぶパッケージには「鹿島第一壱◯1」などの見慣れない商品名が並びます。これが海苔の正式名称で、いわばフルネーム。この場合は「鹿島第一」が名字にあたる漁場で、「壱◯1」が名前にあたる等級といった具合。初摘みであることも等級を決める要素のひとつなのです。ある年の入札では4万7千もの箱から目星を付けて、一日で300枚も味見をした沼田さん。

「初摘みしか扱わないわたしたちにとって、生産者が手塩にかけ最初に送り出す海苔の入札会場は一度きりの真剣勝負。目利きとして適正価格を付けるというよりも、普通の人でも美味しいと感動できる一枚を探します。何百枚も試食を繰り返していると、心に残る味に出会うんですよ」

日本の食材はポテンシャルが高い

沼田さんが選び抜いた一枚は、海苔に馴染みのない海外でも好評で、世界中から一流のシェフが訪れるそうです。「スペインの三つ星シェフ“ダニ・ガルシア(Dani Garcia) ”さんが来店した際は、生ハムのハモン・セラーノに合う海苔を見つけて喜ばれていました」と、その評価は本物。筆者も子供の離乳食に買って帰りましたが、その食べっぷりは見事。大人はそうめんに振りかけていただきましたが、お出汁を追加したような旨味と豊かな磯の風味は衝撃で、なんとも贅沢な気分にさせてくれます。その上ヘルシーなのも嬉しいところ。「今後は海苔の美味しい食べ方もどんどん紹介していきたい」と、晶一朗さんの母、孝枝(たかえ)さんが嬉しそうに話していました。沼田さんにいろいろとお話を伺える店舗を訪ねるもよし、さっそくオンラインストアで購入するもよし、初摘み海苔の感動をお楽しみください。

ぬま田海苔 合羽橋本店

〒111-0035 東京都台東区西浅草3-7-2
Tel. 050-1745-9617
営業時間:11:00〜17:00
定休日:なし

公式サイトから商品をお買い求めいただけます。
セゾン・アメリカン・エキスプレス®・カードが
ご利用いただけます。

https://numatanori.com

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