心と身体を夢中に育む
KIDS DOME SORAI
心と身体を夢中に育む
KIDS DOME SORAI

近年、モンテッソーリ教育や国際バカロレアなど、日本でもさまざまな教育プログラムが注目されています。大量生産・大量廃棄の成長社会から、持続可能性を模索する成熟社会への過渡期に、子供たちの教育にはどのような可能性があるのでしょうか。日本で200年前に生まれた教育思想に答えを求めた児童教育施設、「KIDS DOME SORAI (キッズドームソライ)」。子供の健やかな成長へのヒントが見つかるかもしれません。

全天候型の児童教育施設

田園風景の真ん中に誕生したバイオベンチャーの聖地「鶴岡サイエンスパーク」。以前紹介した「スイデンテラス」に隣接するドーム型の施設は、気候に左右されることなく子供たちが運動や遊びに夢中になれる児童教育施設です。建築はスイデンテラスと同じく坂 茂による設計で、「これからの時代に生きる子供たちに必要なチカラを“遊び”を通じて育んでいくこと」を目的に設立されました。「アソビバ」「ツクルバ」「ライブラリ」「ワークショップ」といったコンテンツを揃え、好きなことに夢中になりながら成長していける環境を目指しています。

ルーツとなった徂徠(そらい)学

江戸時代の日本では、古学や折衷学派など多くの学問が研究されていました。しかし、多様な教育によって社会秩序が保てなくなることを恐れた松平 定信らによって、朱子学以外の学問は排除されたという歴史があります。「SORAI」のルーツである荻生 徂徠(おぎゅう そらい)の唱えた徂徠学の理念は、「人が生まれ持っている才能を重視して個性を伸ばし、自学自習と対話によって学びを得る」というもの。また、幅広い年齢層の人々が混じり合って学び、習熟度に応じて進級する仕組みも取り入れられていました。多様性が重視され、これまでの教育システムや社会構造が見直されているいま、非常に興味深い教育思想です。

“夢中”が人を育てる

館長の渡邉 敦(わたなべ あつし)さんは、もともと海外で駐在員の子供たちに受験勉強を教えていました。STEAM教育やMaker教育など、教育現場の最前線で活躍していた彼にとって、現在の教育システムはどのように映るのでしょうか。

「2年前に帰国し、縁あってヤマガタデザインに入社しました。最初は総務部で働いていたのですが、地域の学童として活動をはじめた『SORAI』を発展させるという段階でプロジェクトに参画したんです。江戸時代のこの地域の学校であった『庄内藩校致道館(ちどうかん)』では『天性重視 個性伸長(生まれながらの個性に応じてその才能を伸ばす)』を教育理念とする徂徠学が採用されていました。このコンセプトは、受験勉強に疑問を感じていた身としては非常に共感できる内容でした。年齢に関係なく、人が成長するタイミングというのは、夢中になっているときです。そこで、大人が決めた教育プログラムではなく、子供が主体となった成長の場を作りたいと考えてさまざまなプログラムを開発しています」

屋内型遊戯施設「アソビバ」

ドーム型の骨組みが特徴的な「アソビバ」は、雪深い冬でも子供たちが存分に遊べる場所です。内部の巨大なアスレチックは富山の遊具メーカー「株式会社 岡部 公園施設部」によるもの。ボルダリングのような「チャレンジングマウンテン」、巨大な滑り台のような「バンク」、6メートルもある「ネットジャングル」など、子供でなくともワクワクする設備です。「できない動作があっても、遊びながら自然と繰り返すことで必要な筋肉やバランス感覚が身につきます」というように、アソビバの地面には平らな床がなく、夢中で走り回ったりよじ登ったりしているだけで身体を自然と使うように設計されています。ライブラリーも併設され、グループはもちろん一人でも楽しめることで、さまざまな発想や挑戦をサポートします。

ものづくりに夢中になれる「ツクルバ」

約1000種類の素材と200種類以上のツール、さらに3Dプリンターなどの本格的なアイテムも揃うアトリエ空間「ツクルバ」。アートやサイエンスに精通したスタッフが「せっけいず」を用意し、子供たちはサンプルを参考に好きなモノを好きなように作ることができます。マニュアル通りに作るだけでなく、改造したり色彩や素材にこだわったりと、試行錯誤を通して創造性を育みます。多様なバックグラウンドを持つスタッフによる「ワークショップ」も人気で、家と学校の往復だけでは出会うことのできない新しい機会を提供する場となっています。

「『アソビバ』と『ツクルバ』を行ったり来たりしながら、思考と身体が柔軟に成長していく。シンボルマークには、読書やものづくりの静と遊び回る動を陰陽ととらえ、夢を集めるバクと組み合わせて表現しました」

未来への種まき

こうした活動は独自の事業収益に加えて、さまざまな企業や団体からのサポートからも成り立っています。例えば「ツクルバ」で使われる素材や道具は、地域の企業がものづくりを応援する「発明のモト」という取り組みで支えられています。さらに、「SORAIサポーター」に参加している企業とともに、地方都市の教育環境の向上に取り組んでいるといいます。地域の放課後をサポートする学童「SORAI放課後児童クラブ」、フリースクール「SORAI SCHOOL」に加え、年齢を問わずオンラインでプログラミングを学び、収入に繋げる「SORAI Tech Academy」もスタート。生き方に多様な可能性を与えてくれる教育プログラムは、「消滅可能性都市」の未来を支えるプロジェクトではないでしょうか。

これからの時代に必要な力

インタビューを通して、渡邉さんが「夢中になることが大事」と何度も話していたのが印象的でした。夢中というのは、いわば自分の世界に没頭している状態です。10年後でさえ予測することが難しい現代では、自分の価値観を大切にすることがとても重要。変化や失敗を恐れずに試行錯誤を繰り返していく力こそ、これからの時代に必要な能力だと思います。学ぶことが辛くなってしまう前に、夢中になれるモノを見つけて欲しい。SORAIにはそのための多様な選択肢がありました。豊かな自然や美味しい料理などと一緒に、健やかな成長の機会を求めて旅に出掛けるというのも良い経験になりそうです。

KIDS DOME SORAI

〒997-0053 山形県鶴岡市北京田字下鳥ノ巣6-1
Tel. 0235-26-8801
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セゾン・アメリカン・エキスプレス®・カードが
ご利用いただけます。
https://www.sorai.yamagata-design.com

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