車社会から脱却するために作られた
VanMoof の自転車
車社会から脱却するために作られた
VanMoof の自転車

健康的なライフスタイルの浸透や環境汚染に対する意識の変化によって、自転車での移動に関心が集まっています。移動に負担の少ないE-bikeもさまざまなモデルが登場し、都市部での移動は世界的にも自転車がトレンドのようです。一方で、自転車の盗難は最も多い犯罪であり、高額な自転車を選ぶうえでの障壁となっています。シンプルなデザインに最先端のセキュリティ技術と走行性能を融合したシティバイクブランド「VanMoof(バンムーフ)」をご紹介しましょう。

都市の新しい移動手段を目指して

「VanMoof」は、余計なものを省いたミニマルなデザインを纏いつつ、高度な防犯システムを備えた自転車として、2009年にオランダで誕生しました。「完璧なシティバイクを目指して立ち上げられました」と話すのは、ブランド・コンテンツ・マネジャーのロバート・デビッドさん。日本のクリエイティブエージェンシーでVanMoofのプロモーションを担当していましたが、東京・原宿にフラッグシップショップが立ち上がるのをきっかけに転職したといいます。「仕事を通して、創業者のカーリエ兄弟が掲げる“都市の移動方法を再定義する”というビジョンに共感しました。このプロダクトによって、都市での移動や環境、ライフスタイルまで変わる可能性を感じたのです」と、当時の衝撃を語ります。

自転車先進国オランダ生まれ

筆者が初めてVanMoofをみたのは2018年のオランダでのこと。当時はまだE-bikeはラインアップされておらず、高度で合理的なセキュリティとシンプルなデザインが印象的な自転車ブランドでした。都市部の多くが埋め立て地のアムステルダムはどこまでも平坦な道が続き、移動には自転車がとにかく便利。公共のレンタル自転車も含めて、街中には数え切れないサイクリストが走っていました。走行車線がきちんと整備されているので整然とした印象でしたが、唯一の課題は自転車やライト類などのパーツも含めた盗難でした。

旅行先での体験がきっかけ

創業者のタコ・カーリエとティーズ・カーリエは、もともとフィンテックのベンチャー企業を創業した実業家です。旅行が趣味だったティーズは、ニューヨークを訪れた際に自転車を借りて街中をクルーズしました。道路も電車も混み合う都市部にあって、自転車での移動は快適そのものでした。気の向くままにハンドルをきって、ルートや速さを自在にコントロールできる自転車は街中を巡るのに最高のツール。みんなが自転車に乗れば渋滞も交通事故も少なくなり、環境にも良いのになぜ乗らないのか。そんな疑問が、完璧な自転車を目指すきっかけになったといいます。そのためには、手軽で高度なセキュリティシステム、快適なアシスト機能、そして都市に馴染むシンプルで合理的なデザインが必要でした。

完璧な防犯機能

まず盗難予防の第一弾として、フロントライトをフレームに埋め込みました。VanMoofのアイコンともなっているデザインです。太くなったトップチューブ内にはコンピューターとディスプレイ、スピーカーを搭載し、基本的な操作はすべてスマートフォンで完結します。ロック中に動かそうとするとイモビライザーが作動し、ドクロのイラストと警告音で威嚇します。GSM(世界基準の通信規格)も搭載し、万が一盗難に遭った場合は「バイクハンター」と呼ばれるセキュリティチームが出動。パリで盗まれた自転車をモロッコで発見し、持ち主に返したと言うから驚きます。「完璧なシティバイクはどうしても値段が高くなってしまいます。ユーザーが安心して投資できるのは、この高度なセキュリティシステムがあるからです」と、デビッドさんは目を輝かせます。

スムーズな乗り心地

無骨なバッテリーが見当たらないシンプルなデザインに、電動アシスト機能はどのように組み込まれているのでしょうか。「バッテリーはフレーム内に格納し、モーターは前輪に設置されています。4段階の電動アシストと坂道でのブースト機能を有しています」とデビッドさん。走行距離はもっともアシストが強い「4」の状態でおよそ60km、「1」の状態なら150kmの走行が可能です。デビットさんが「東京の渋谷のように道路が平坦ではない都市でも、これだけアシストが効けばどこまでも楽に移動することができます」と話すように、実際に走った印象は極めてスムーズ。アシストによるギクシャクした違和感はほとんど感じません。

体格に合わせた二つのモデル

現在ラインアップされている「S3」と「X3」は、身長に合わせて選ぶだけ。機能や性能に違いはありません。開発当初からのデザインを継承している「S3」は、身長170cm以上のユーザー向けで、小柄な日本人向けにトップチューブを下げてフレームを交差させた小型モデルが「X3」です。アプリでカスタマイズできるオートマチックのシフトギアや油圧ブレーキもすべて同じものが取り付けられています。そして、ロゴがどこにもないにもかかわらず、一目見てVanMoof だと分かるデザイン・アイデンティティも同じです。2021年4月には“Apple Find My”に対応し、モバイルバッテリー「PowerBank」も登場しました。その勢いは、シティモビリティの新しいスタイルを確立しようとしています。

次の10億人が乗るために

さらにこの自転車が画期的なのは、スマートフォンの専用アプリから性能がアップデートされていくという点です。米国の電気自動車ブランド「TESLA(テスラ)」と同じアプローチで、乗り心地や使い勝手が進化していきます。これを「自転車の再発明」だとデビッドさんは話します。

「VanMoofは企画からパーツの製造、組み立てだけでなく、アプリやサービスまでサプライチェーンのすべてを統合する唯一の自転車ブランドです。なぜそこまでするのか。それは“次の10億人が乗るモビリティを作る”というミッションを掲げているからです。都市の移動方法を再定義し、車社会から脱却するための使い捨てにならないツールを提供する。カーリエ兄弟を含めて5人から始まった小さなプロジェクトは、いまでは世界で700人のチームになり、ユーザーは世界で20万人にのぼります。2020年の第二四半期は、世界の売上げが前年に比べて379%に成長しました。そろそろ、都市の空気が少し綺麗になっているかもしれませんね(笑)」

現実となる“Ride the Feature”

スマートな機能でありながら、どこかノスタルジックなデザインを発表してから12年。今後はサービス拠点を現在の8都市から50都市に広げ、ブランドストアだけでなくVanMoof認定の「バイクドクター」が常駐する認定リペアショップも拡張していくとのこと。2021年10月13日にはファットタイヤ、ダブルサスペンション、強化フレームを採用したハイスピードE-バイク「VanMoof V」も発表されました。日本への発送開始予定は2023年とのことで、続報に期待が膨らみます。「Ride the Feature」のメッセージを体現するVanMoofは、もっとスムーズに、よりヘルシーに都市空間を移動する新しいスタンダードとして、今後も目が離せない存在になりそうです。

VanMoof

〒150-0001 東京都渋谷区神宮前3-26-3
Tel.03-6812-9650
営業時間:11:00〜19:00
定休日:月曜日
セゾン・アメリカン・エキスプレス®・カードがご利用いただけます。
https://www.vanmoof.com/ja-JP